同じ「ごじせい」という読み方の「ご時世」と「ご時勢」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「ご時世」と「ご時勢」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
ご時世とご時勢の違い
ご時世とご時勢の意味の違い
ご時世とご時勢の違いを分かりやすく言うと、ご時世とは世の中を意味し、ご時勢とは世の中の動きを意味するという違いです。
ご時世とご時勢の使い方の違い
一つ目のご時世を使った分かりやすい例としては、「ご時世に伴ってファッションの流行は変化する」「ご時世柄、手洗い消毒は必須だ」「体罰が問題視されているご時世だ」「どんなご時世でも人権は尊重されるべきだ」などがあります。
二つ目のご時勢を使った分かりやすい例としては、「ご時勢に逆らうような勇気はない」「ご時勢に乗って海外進出を果たす」「人種差別反対のご時勢を無視するコメントだ」「ダイバーシティのご時勢に反するジェンダーだ」などがあります。
ご時世とご時勢の使い分け方
ご時世とご時勢という言葉は、同音で似た表現をする言葉ですが、意味は異なるので注意が必要です。ご時世は世の中を意味し、ご時勢は世の中の成り行きや変化の様子を意味します。つまり、ご時世は世の中全般を静的にとらえ、ご時勢は世の中の変化の様子を動的にとらえた表現だと言えます。
上記の例の「人種差別反対のご時勢」とは、世の中で人種差別反対の動きがあることを表現しています。世の中や社会の動き、情勢を表現したい時には、ご時勢を使うようにしましょう。
ご時勢とご時勢という言葉は、それぞれ「時世」「時勢」という熟語に、丁寧な表現になる接頭語の「ご」を付けた言葉です。時世は「ご時世」と表現されることが多く、時勢は「ご」を付けずに「時勢」と表現されることがが多い言葉であることも、二つの言葉の違いになります。
ご時世とご時勢の英語表記の違い
ご時世もご時勢も英語にすると「times」となり、例えば上記の「時世に伴う」を英語にすると「move with the times」となり、「時勢に逆らう」を英語にすると「go against the times」になります。
ご時世の意味
ご時世とは
ご時世とは、時とともに移り変わる世の中、時代を意味しています。
ご時世の使い方
ご時世を使った分かりやすい例としては、「先の見えないご時世だ」「ご時世柄、不要な外出は控えている」「給料が上がらないご時世に増税は許せない」「民主化と平等化が急激に進んだ戦後のご時世」などがあります。
その他にも、「この世知辛いご時世に、良心的なお店をみつけた」「このご時世、恋愛は男女に限ったことではない」「商談もオンラインでするご時世だ」「今のご時世、ネット環境なしでは仕事にならない」などがあります。
ご時世の読み方
ご時世は「ごじせい」と読みます。時世は「ときよ」とも読み、同じく世の中や時代の意味を持ちますが、接頭語の「ご」を付けて「ごときよ」と読むことは誤りです。
表現方法は「先が見えないご時世」「世知辛いご時世」「こんなご時世ですが」
ご時世という言葉は、世の中や時代を意味し、「先が見えないご時世」「世知辛いご時世」「こんなご時世ですが」などネガティブなニュアンスを含んだ表現です。「景気がよいご時世だ」など明るい話題の場合に使われることは少ない言葉です。
「世知辛いご時世」の意味
ご時世を用いた言い回しに「世知辛いご時世」があり、暮らしにくい世の中であることを意味します。世知辛いは世渡りがむずかしいことを意味し、世の中や時代を意味するご時世と組み合わさり、世の中の意心地の悪さを表します。
ご時世の類語
ご時世の類語・類義語としては、時の流れをあるまとまりで区切った期間を意味する「年代」、時勢や世の成り行きを意味する「時」(読み方:とき)、何かの意味における一定の時の長さを意味する「時代」などがあります。
ご時世の世の字を使った別の言葉としては、世間と交わってうまく生活していくことを意味する「処世」、世に並ぶものがないほどすぐれていることを意味する「絶世」、世を治めることを意味する「経世」などがあります。
ご時勢の意味
ご時勢とは
ご時勢とは、移り変わる時代のようす、世の中の成り行きを意味しています。
ご時勢の使い方
ご時勢を使った分かりやすい例としては、「戦時下のご時勢に適さない歌は排除された」「ご時勢に遅れないようにSNSを毎日チェックする」「このご時勢に全席喫煙のお店は珍しい」「ご時勢柄、不要になる職種もある」などがあります。
その他にも、「教育観は時勢と共に変化している」「ご時勢に合わず、あの店は潰れてしまった」「このご時勢に逆らい電子決済はしない」「このご時勢に応じて、エコバックを持ち歩く」などがあります。
表現方法は「時勢に逆らう」「時勢に遅れる」「時勢に伴って」
ご時勢という言葉は、時代がある方向へ動く勢いや、世の中の変化の様子を意味します。ご時勢は接頭語をつけずに「時勢」で使われることが多い言葉です。時勢は、「時勢に逆らう」「時勢に遅れる」「時勢に伴って」「時勢に合う」など、動きがある言葉と一緒に使われることが多くあります。
ご時勢の類語
ご時勢の類語・類義語としては、その時代の社会一般の風潮や思想の傾向を意味する「時流」、その時の世の中やその時代の風潮を意味する「時世」(読み方:ときよ)、時勢の動きや時代の傾向を意味する「潮流」などがあります。
ご時勢の勢の字を使った別の言葉としては、ある方向へと動く勢いや全体の流れを意味する「趨勢」(読み方:すうせい)、変化していく物事の時々の様子を意味する「情勢」、他をおさえ支配下におく力を意味する「勢力」などがあります。
ご時世の例文
この言葉がよく使われる場面としては、時とともに移り変わる世の中や時代を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「ご時世柄」とは、世の中にあわせて、この時代にふさわしく、を表す言葉です。例文1から例文4のように、ご時世はマイナスなイメージの世の中として表現する時に使われる言葉です。例文5の「時世の句」は誤りです。正しくは「辞世の句」であり、死に臨んで残す詩歌を意味します。
ご時勢の例文
この言葉がよく使われる場面としては、移り変わる時代のようす、世の中の成り行きを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「ご時勢を反映させる」とは、その時代の動向をくみ取って作用させることを意味します。例文4のご時勢柄は、あおり運転が横行するという社会の傾向に相応するさまを表しています。
ご時世とご時勢という言葉は、どちらも「ごじせい」と読み、似たような使い方をする言葉なのですが、意味は異なります。どちらの言葉を使うか迷った場合は、世の中を表現したい時は「ご時世」を、世の中の動きを表現したい時は「ご時勢」を使うようにしましょう。