似た意味を持つ「むしろ」と「逆に」(読み方:ぎゃくに)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「むしろ」と「逆に」という言葉は、どちらも二つ以上の事柄を比較してどちらかを選ぶことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「むしろ」と「逆に」の違い
「むしろ」と「逆に」の意味の違い
「むしろ」と「逆に」の違いを分かりやすく言うと、「むしろ」とは比較するものが反対の意味でなくても使える、「逆に」とは比較するものが反対の意味でないと使えないという違いです。
「むしろ」と「逆に」の使い方の違い
一つ目の「むしろ」を使った分かりやすい例としては、「休日はでかけるよりむしろ家でゆっくりしたい」「ぶどうよりむしろいちごの方が好きです」「謝らなければならないのはむしろ私の方です」「私は紅茶よりもむしろオレンジジュースが飲みたい」などがあります。
二つ目の「逆に」を使った分かりやすい例としては、「説明を聞いたら逆に分からなくなってしまいました」「昨日は寝てないけど逆に元気です」「彼女が怒っているが逆にそれが愛おしい」「迷惑どころか逆に助かりました」などがあります。
「むしろ」と「逆に」の使い分け方
「むしろ」と「逆に」はどちらも二つ以上の事柄を比較してどちらかを選ぶことを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「むしろ」は「私は桃よりむしろメロンの方が好きです」「この内容ならむしろ自分でやった方がいいだろう」などのように、ただ単純にこれの方がより良いという気持ちを表すことで、比較するものが反対の意味でなくても使うことができます。
一方、「逆に」は「私は桃より逆にメロンの方が好きです」のように比較するものが反対の意味でない時は置き換えることができません。
したがって、「むしろ」は比較するものが反対の意味でなくても使えるのに対して、「逆に」は比較するものが反対の意味でないと使えないというのが違いになります。
「むしろ」と「逆に」の英語表記の違い
「むしろ」を英語にすると「rather」となり、例えば上記の「私は紅茶よりもむしろオレンジジュースが飲みたい」を英語にすると「I would rather have a cup of orange juice than a cup of tea」となります。
一方、「逆に」を英語にすると「the other way around」「the wrong way」「instead」「opposite」となり、例えば上記の「迷惑どころか逆に助かりました」を英語にすると「It’s not a trouble, but rather a help」となります。
「むしろ」の意味
「むしろ」とは
「むしろ」とは、これの方がより良いという気持ちを表すことを意味しています。
「むしろ」を漢字にすると、「寧ろ」と表記することができますがあまり一般的ではありません。余程の理由がない限り、ひらがなの「むしろ」を使うようにしましょう。
「むしろ」の使い方
「むしろ」を使った分かりやすい例としては、「今日は暖かいというよりむしろ暑い気がします」「明るい人よりむしろ静かな人の方が私には合ってるかもしれない」「私はうどんよりむしろそば派です」「彼の容態は良くなるよりむしろ悪くなっている」などがあります。
「むしろ」は、二つ以上の事柄を比較して、これの方がより良いという気持ちを表す場合に使う副詞です。A「むしろ」Bとした場合は、一般的にBの方を選びます。
「むしろ」は「朝はごはんよりむしろパン派です」「私はお寿司よりむしろ焼肉派です」「試合に大敗してしまったが、チームを立て直すためにはむしろ良かったのかもしれない」などように、比較するものが反対の意味でなくても使えるというのが特徴です。
また、「むしろ」自体は敬語表現ではありませんが、前後の文章を敬語表現にすることによって、ビジネスシーンなどでも使うことができます。分かりやすい例を挙げると、「むしろこのような遠くまでお越しいただきまして大変感謝しております」などがあります。
「むしろ」の類語
「むしろ」の類語・類義語としては、それに相当する分のことを意味する「その分」、比較の基準を示すことを意味する「よりも」、前述の表現を言い換えることを意味する「というか」などがあります。
「逆に」の意味
「逆に」とは
「逆に」とは、通常の関係とは反対になることを意味しています。その他にも、予想や期待とは反対になることの意味も持っています。
「逆に」の読み方
「逆に」の読み方は「ぎゃくに」です。誤って「さかに」などと読まないようにしましょう。
「逆に」の使い方
「面接官に対して逆に質問してみました」「駅の方向とは逆に歩いている」などの文中で使われている「逆に」は、「通常の関係とは反対になること」の意味で使われています。
一方、「丁寧に言ったつもりが逆に失礼になってしまった」「見るなと言われると逆に見たくなってしまう」などの文中で使われている「逆に」は、「予想や期待とは反対になること」の意味で使われています。
「逆に」は物理的に反対になる場合と、概念的に反対になる二通りの意味を持っている副詞です。
物理的に反対になる場合は、「目的地の方向とは逆に歩いている」「洋服の裏と表が逆になっている」などのように使います。一方、概念的に反対になる場合は、「うちの犬はブスだけど逆に可愛い」「大方の予想とは逆に初出場チームが勝ちました」などのように使います。
また、「逆に」は比較するものが反対の意味でないと使えないというのが特徴です。
「逆に」の類語
「逆に」の類語・類義語としては、予想とは反対になることを意味する「却って」、 予想に反した事を述べることを意味する「いっそ」、ある意見などに対して逆らい同意しないことを意味する「反対に」などがあります。
「むしろ」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、これの方がより良いという気持ちを表すことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「むしろ」は比較するものが反対の意味でなくても使える言葉です。
「逆に」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、通常の関係とは反対になることを表現したい時などが挙げられます。その他にも、予想や期待とは反対になることを表現したい時にも使います。
例文1の「逆に」は通常の関係とは反対になること、例文2から例文5の「逆に」は予想や期待とは反対になることの意味で使っています。
「むしろ」と「逆に」はどちらも二つ以上の事柄を比較してどちらかを選ぶ気持ちを表わすことです。どちらの言葉を使うか迷った場合、比較するものが反対の意味でなくても使えるのが「むしろ」、比較するものが反対の意味でないと使えないのが「逆に」と覚えておきましょう。