似た意味を持つ「覆す」(読み方:くつがえす)と「翻す」(読み方:ひるがえす)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「覆す」と「翻す」という言葉は、どちらも裏返すことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「覆す」と「翻す」の違い
「覆す」と「翻す」の意味の違い
「覆す」と「翻す」の違いを分かりやすく言うと、「覆す」とは他人の意見を変えること、「翻す」とは自分の意見を自分で変えることという違いです。
「覆す」と「翻す」の使い方の違い
一つ目の「覆す」を使った分かりやすい例としては、「今回の結果は予想を覆すものとなった」「このプロジェクトは業界の常識を覆すだろう」「大嵐が船体を覆した」「不当な判決を覆す」「私たちは政権を覆す」「被疑者は自白を翻した」などがあります。
二つ目の「翻す」を使った分かりやすい例としては、「彼は反旗を翻した」「発言を翻すことはあまり良くない」「優勝パレードの最中に優勝旗を翻しながら街中を行進した」「彼女は今までの発言を翻して無罪を主張している」などがあります。
「覆す」と「翻す」の使い分け方
「覆す」と「翻す」は裏返すという共通の意味を持っているのですが、使い方に違いがあります。「覆す」は他人の意見や他のものを変えること意味しているのに対して、「翻す」は自分の意見を自分で変えるというのが違いになります。
そのため、「覆す」と「翻す」は置き換えることはできません。
「自分で言ったことを翻す」と「自分で言ったことを覆す」の違い
例と挙げてみると、「自分で言ったことを翻す」は、自分の意見を自分で変えたので正しい使い方ですが、「覆す」は他人の意見に対して使うため、「自分で言ったことを覆す」は間違った使い方になります。
「覆す」と「翻す」の英語表記の違い
「覆す」を英語にすると「overturn」「overthrow」「capsize」となり、例えば上記の「私たちは政権を覆す」を英語にすると「We are overthrow a government」となります。
一方、「翻す」を英語にすると「change」「turn back」「retract」となり、例えば上記の「被疑者は自白を翻した」を英語にすると「The suspect retracted his confession」となります。
「覆す」の意味
「覆す」とは
「覆す」とは、それまで正しいものとされてきた考え方を根本から変えることを意味しています。その他にも、引っ繰り返すことや倒して滅ぼすことという意味も持っています。
「覆す」の使い方
「彼女の常識を覆す発想に脱帽です」「控訴したたものの判決を覆すことはできなかった」などの文中で使われている「覆す」は、「それまで正しいものとされてきた考え方を根本から変えること」の意味で使われています。
一方、「現政権を覆すのは容易ではない」「大型の竜巻によって車や建物が覆されてしまった」などの文中で使われている「覆す」は、「引っ繰り返すことや倒して滅ぼすこと」の意味で使われています。
「覆す」は複数の意味を持つ言葉ですが、一般的に使われているのは、それまで正しいものとされてきた考え方を根本から変えることや、倒して滅ぼすことの意味です。
表現方法は「常識を覆す」「予想を覆す」「イメージを覆す」
「常識を覆す」「予想を覆す」「イメージを覆す」「判決を覆す」「概念を覆す」などは、それまで正しいものとされてきた考え方を根本から変えることの意味で使われる、「覆す」の一般的な表現方法になります。
もう一方の、倒して滅ぼすことの意味は、組織や団体を倒す場合に使います。そのため、「現政権を覆す」「今までの体制を覆す」などのような表現をします。
「覆す」は他人の意見や、他のものを変える場合に使う言葉と覚えておきましょう。
「覆す」の類語
「覆す」の類語・類義語としては、上下表裏などを反対にすることを意味する「引っ繰り返す」、表と裏とを逆にすることを意味する「裏返す」、引っ繰り返ることを意味する「反転」、打ち倒すことを意味する「打倒」などがあります。
「覆す」の覆の字を使った別の言葉としては、外から見えないように上から別の物を被せることを意味する「覆い隠す」、完全い滅びることを意味する「覆滅」、船が転覆して沈むことを意味する「覆没」、車が転覆することを「覆車」などがあります。
「翻す」の意味
「翻す」とは
「翻す」とは、態度などを急に変えることを意味しています。その他にも、さっと裏返しにすること、身体を踊らせること、風になびかせることの意味を持っています。
表現方法は「反旗を翻す」「発言を翻す」「前言を翻す」
「反旗を翻す」「発言を翻す」「前言を翻す」などが、翻すを使った一般的な表現方法です。
「翻す」の使い方
「部下に反旗を翻されると思ってもいなかった」「彼は約束を翻して別の場所へ出かけた」などの文中で使われている「翻す」は、「態度などを急に変えることや風になびかせること」の意味で使われています。
一方、「負けた途端に手のひらを翻す人はあまり好きでない」「身を翻してその場から離れたため事件に巻き込まれることはなかった」などの文中で使われている「翻す」は、「さっと裏返しにすることや身体を踊らせること」の意味で使われています。
「翻す」は、今まで言ってた自分の行動や言動を急に変える場合によく使われる言葉です。あくまでも、自分の意見を自分自身で変える時に使うと覚えておきましょう。また、旗を風になびかせる場合にも使ったりします。
「反旗を翻す」の意味
「翻す」を使った有名な言葉しては、「反旗を翻す」があります。「反旗を翻す」とは、謀反を起こすたり、主君に背いて兵を起こすという意味になります。反旗を翻した有名な武将と言えば、織田信長に対して本能寺の変を起こした明智光秀でしょう。
「翻す」の類語
「翻す」の類語・類義語としては、事の成り行きがそれまでと反対になること意味する「逆転」、心変わりして約束などを破ることを意味する「反覆」、入ってるものを取り出し替わりのもの入れることを意味する「入れ替える」などがあります。
「翻す」の翻の字を使った別の言葉としては、既存の事柄の趣旨を生かして作りかえることを意味する「翻案」(読み方:ほんあん)、決意を翻すことを意味する「翻意」、身を翻すことを意味する「翻身」、思うままに弄ぶことを意味する「翻弄」などがあります。
「覆す」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、それまで正しいものとされてきた考え方を根本から変えることを表現したい時などが挙げられます。その他にも、引っ繰り返すことや倒して滅ぼすことを表現したい時にも使います。
例文1から例文3はそれまで正しいものとされてきた考え方を根本から変えることの意味で使われています。また、例文4は倒して滅ぼすことの意味で使っています。
「翻す」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、態度などを急に変えることを表現したい時などが挙げられます。その他にも、さっと裏返しにすること、身体を踊らせること、風になびかせることを表現したい時に使います。
例文1や例文2は、態度などを急に変えることの意味で使われています。また、例文4は風になびかせることで、例文5は、身体を踊らせることの意味で使っています。
「覆す」と「翻す」どちらを使うか迷った場合は、他人の意見や他のものを変えた場合は「覆す」を、自分の意見を自分自身で変えた場合は「翻す」を使うと覚えておけば間違いないでしょう。