似た意味を持つ「イデオロギー」と「アイデンティティー」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「イデオロギー」と「アイデンティティー」という言葉は、どちらも考え方を表現するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
イデオロギーとアイデンティティーの違い
イデオロギーとアイデンティティーの意味の違いをわかりやすく
イデオロギーとアイデンティティーの違いを分かりやすく言うと、社会などに広く発信する考え方のことか、自分自身に対する個人的な考え方のことかという違いです。
イデオロギーとアイデンティティーの使い分け方
イデオロギーというのは、政治や社会に対する思想のことを指します。政治社会だけでなく、宗教や芸術、道徳に関する考え方のことを指す場合もあります。イデオロギーというのは、個人的なものではなく、広く発信される考え方のことです。
イデオロギーという言葉は、元々は仏教用語である「イデア」という言葉からきているものです。イデアとは観念や思想を意味する言葉であり、イデオロギーとは日本語で「観念形態」や「思想形態」という言葉で訳されます。
イデオロギーとは、その人の持っている思想、世界観のようなもののことです。この言葉が使われる時は、政治的な意味合いを含む場合が多く、前後の文脈にもよりますが、マイナスの意味で使われることの多い言葉です。
近年、イデオロギーという言葉が使われる場合には、ある集団や組織が社会的な利害について隠しつつ、自分たちの考え方や立場を正当化しようとして掲げる信条や信念などのことを指しています。
政治の現場などで、自分と対立する組織について「イデオロギー的である」と表現したりするもので、批判的な意味で使われているものです。政治色の強い言葉なので、ビジネスシーンなどでは、あまり使わないように心がけるのが良いでしょう。
対するアイデンティティーというのは、自分自身に対する個人的な考え方のことを指します。イデオロギーと違って、世間に広く発信されるものではありません。個人の問題であり、とても繊細な思考です。
アイデンティティーとは、日本語で表現するところの「自己同一性」「主体性」というものです。自分が自分であることに間違いがないことを示す言葉でもあるので「身分証明」という意味合いも持ちます。
主に思春期などに、自分で自分に対する問いかけをすることで形成されていくのがアイデンティティーです。アイデンティティーというのは、一般的には変化をしないものであり、環境や時間の変化に関わらず同一のものである必要があります。
人間は「自分が一体何者であるのか」「自分はどのような思想を持っているのか」などを自問自答することで、自我が形成されていきます。これをアイデンティティーの確立と呼びます。
近年では、自分自身が自分自身らしく生きられる性別という意味の「ジェンダーアイデンティティー」などという言葉がよく聞かれます。性別や人種などの問題は、思想や性格以上に普遍的なものです。
アイデンティティーという言葉は、とても個人的なものであり、どのような意味合いで使われる場合においても、繊細な思想を含んでいるものです。不用意に口に出して他者を傷つけないよう、配慮をする必要があります。
イデオロギーの意味
イデオロギーとは簡単に
イデオロギーとは、政治や社会における考え方の傾向のことを意味しています。
イデオロギーの日本語訳
イデオロギーを日本語に訳すと「観念形態」「思想形態」という言葉で表すことが出来ます。日本では、ドイツ語のスペルで「Ideologie」と記されます。
イデオロギーの語源
イデオロギーという言葉は、前後の文脈にもよりますが、あまり良い意味で使われることのない言葉です。政治や社会、道徳、芸術などの分野でよく使われています。イデオロギーの語源は、仏教用語である「イデア」という言葉です。
この「イデア」というのは、何かある特定のものに関するひとつの意識のことを意味しています。例えば、政治に対する意識であったり、芸術に対する意識であったり、文脈によってその言葉の意味するところは違ってきます。
日常生活ではイデオロギー的と使われる
イデオロギーという言葉を使う際、その言葉によって表現される範囲は広く、世界観であったり、その人にとっての一般論であったりします。主義主張という風に言い換えることも出来るものです。
個人的な思想や意識ではなく、社会に広く認めさせようという意識を持っている時に「イデオロギー」と表現します。日常生活などでは「イデオロギー的である」などと表現され、それはマイナスの意味を持つ言葉です。
イデオロギーは政治の場面で使われる
イデオロギーという思想は、社会的な利害関係によって成り立っていることの多いものです。表面的には信念があるように見えながらも、その裏側になんらかの金銭的な利害があったり、嘘や偽りがあったりすることがあります。
政治的な場面で、このイデオロギーという言葉が多く使用されるのは、そういった理由からです。例えば「国民のことを考えているフリをしているが、その考え方はイデオロギー的であるとしか思えない!」というような表現を持って批判されたりします。
イデオロギーは、集団や組織などの中で、自らの組織を正当化するために定められた信条や考え方のことを指す場合もあります。こういった思想は、社会的に不利益になることについては隠しながら、良い部分だけを世間一般に見せている場合もあるものです。
イデオロギーというのは、宗教に例えられることもあるものです。イデオロギーは、個々人によって成り立つものではなく、多くの人に影響を与え、その行動が社会になんらかの影響を与えるような思想のことを言うのだと覚えておくようにしましょう。
イデオロギーの使い方
イデオロギーを使った分かりやすい例としては、「イデオロギーの時代は終わったという人がいるがそんなことはない」「国と国とのイデオロギーの対立が各国の経済状況に影響を及ぼしている」などがあります。
アイデンティティーの意味
アイデンティティーとは簡単に
アイデンティティーとは、自分自身が何者であるかということについての考え方のことを意味しています。
アイデンティティーの日本語訳
アイデンティティーを日本語に訳すと「自己同一性」「主体性」または「身分証明」という言葉で表すことが出来ます。
アイデンティティーの英語表記
アイデンティティーという言葉は、英語で「Identity」というスペルで表現されます。自分自身が環境や時間の変化に関係せず、ずっと同じ自分であるということを考える思考回路のことをアイデンティティーと呼びます。
そのことから、自分自身が自分自身であることに間違いがないことを意味する場合もあり、本人に間違いないこと、身分証明の意味でもアイデンティティーという言葉が使われることがあります。
アイデンティティーの確立とは
アイデンティティーというのは、一般的には思春期などに悩みながら確立されるものです。「自分は何者であるのか」「自分はどうして生きているのか」などを自問自答することにより、その答えを見つけながら自己という存在を形成していくものです。
アイデンティティーが確立すると「自分はこういう人間である」という軸が作り上げられ、それが自信に繋がったり、自分自身の思想や流儀に繋がったりします。逆にアイデンティティーが上手く形成されないと、長い間、人生に迷う場合もあります。
アイデンティティーの形成の問題については、思春期だけに限らず、様々な環境の変化によって、人生の中で何度も直面する問題でもあります。環境の変化により自分の立ち位置が変わることで、アイデンティティー喪失の危機に陥ることもあります。
自分がどこの誰であるのか、自分の中にある普遍的な価値はなんなのか、それを見つけることが、アイデンティティーを強く確立するのに必要なことであると言えます。近年では、性別に関する繊細な問題をジェンダーアイデンティティーと表現したりします。
アイデンティティーに関する問題は、個人的な問題であり、他者が口を出すようなものではありません。不用意に相手のアイデンティティーを否定したり、批判したりすることのないように注意をする必要があります。
表現方法は「アイデンティティーを持つ」「アイデンティティーがない」「アイデンティティーを感じる」
「アイデンティティーを持つ」「アイデンティティーがない」「アイデンティティーを感じる」「アイデンティティーの喪失」などが、アイデンティティを使った一般的な言い回しです。
アイデンティティーの使い方
アイデンティティーを使った分かりやすい例としては、「アイデンティティーを持つことで生きる目標が見つかる」「アイデンティティーがないといつまでも人生の中で迷いが生じてしまう」「彼の生き様にアイデンティティーを感じる」などがあります。
イデオロギーの例文
この言葉がよく使われる場面としては、政治や社会に対する思想と利益に対する思想が混ざり合っていることを表現したい時などが挙げられます。イデオロギーとは、文脈にもよりますが、あまり良い意味で使われる言葉ではありません。
何か政治的な思想を語る際に、自分とは対立する立場にある人の考え方について「彼はイデオロギー的な政治思想を持っている」というように表現したりします。これは批判的な言葉であり、決して良い意味ではありません。
ビジネスシーンでは、不用意にイデオロギーという言葉を使わないように注意する必要があります。政治色の強い発言は、ビジネスの場では好まれないことが多いからです。
アイデンティティーの例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分が何者であり、自分自身の生きる意味などについて深く考える時などが挙げられます。アイデンティティーは日本語では「自己同一性」という言葉で表現されるものです。
自分自身が一体どこの誰なのか、自分の生きる意味はなんなのか、どういう人間でありたいのか、そういった繊細な自問自答を繰り返しながら、形成されていくのがアイデンティティーというものです。主に思春期に形成されることが多いものとされています。
アイデンティティーというのは、普遍的なものであり、自分自身の身分証明のようなものだと考えられています。一度形成されたアイデンティティーは、簡単には変化しないものです。
しかし、環境の変化などにより自分の中の価値観が覆され、アイデンティティーを喪失することもあります。そういった意味では、思春期だけでなく、人生を通して人間が考えていかなくてはいけないものがアイデンティティーであると言うことが出来ます。