似た意味を持つ「危惧」(読み方:きぐ)と「懸念」(読み方:けねん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「危惧」と「懸念」という言葉は、どちらも何かを心配しているような意味を表すという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
危惧と懸念の違い
危惧と懸念の意味の違い
危惧と懸念の違いを分かりやすく言うと、具体的に何かの危険を予感している状態か、ぼんやりと不安に思うことがある状態かの違いです。危惧の方が懸念よりも具体的かつ危機感のある状態を表現する言葉であると言えます。
危惧と懸念は、ほとんど同じ意味を持つ言葉です。どちらの言葉も、まだ起こっていない事柄について、不安に思ったり、心配したりしている状態を表現します。
危惧と懸念の使い分け方
しかし、漢字を見てもわかるように、危惧というのは危険という意味を持つ「危」という字が含まれています。そのことから、何か危機的な状況が起こってしまう具体的な予感がある場合に「危惧」という言葉を使います。
対する懸念という言葉は、思念という意味を持つ「念」という字が含まれています。また、懸念という言葉には、その両方の漢字に「心」という文字が入っています。これは人の心情を表しているものです。
つまり、懸念というのは、具体的ではないけれど、なんとなく心の中で不安に思っていることを表現する言葉であると言えます。ビジネスシーンなどでは「懸念材料」「懸念点」「懸念事項」などのように使われることが多くあります。
危惧と懸念は、どちらもマイナスの意味を持つ言葉であり、不安や心配事を表現する際に使用します。不安に思っている内容を具体的に表現できる時には「危惧」、具体的ではないけれど心配であることを表現する場合には「懸念」を使うようにしましょう。
危惧の意味
危惧とは
危惧とは、ある具体的な物事が上手くいかないのではないかと不安に思ったり、危ぶんだりすることを意味しています。実現してしまいそうな何かを恐れていたり、心配しているような様子を表現している言葉だと考えると分かりやすいでしょう。
「危惧する」の意味
このように、危惧というのは、まだ起こっていない物事に対して、不安な気持ちを抱くことを意味しています。危惧というのは、恐れている内容が具体的であることが多く、それらの不安事項が起こって欲しくないという強い願いが含まれています。
危惧している物事は、不安が的中して上手くいかない可能性も、もちろんあります。しかし、それと同じだけ上手くいく可能性もあるものです。どうなるか誰にも分からないことを、あれこれと悪い方向に想像して心配することを「危惧する」と表現します。
表現方法は「危惧に終わる」「危惧を抱く」「危惧の念を抱く」
「危惧する」の他に、「危惧に終わる」「危惧を抱く」「危惧の念を抱く」などが、危惧を使った一般的な言い回しです。
危惧の使い方
危惧を使った分かりやすい例としては、「結果的に上手くいったので心配は単なる危惧で終わった」「景気低迷に対して自分の給料に影響が出ないか危惧を抱いている」「ライバル企業の増加による競争力の激化に危惧の念を抱く」などがあります。
危惧の語源
危惧の「危」という字は、怖がること、あやぶむことを意味する漢字です。何かを害する恐れがあったり、何かを損なったりするのではないかと不安に思う気持ちを表現します。
そして、危惧の「惧」という字は、怖気づいたり、びくびくすることを意味しています。この「惧」という字は、常用漢字ですが、俗字と呼ばれる種類の漢字です。
俗字というのは、正しい字ではないけれど、世間一般的に広く使われている漢字であるという意味です。危惧の「惧」という字は、本来は「懼」という漢字で表記されるものでした。こちらが正しい元の漢字です。
しかし、この「懼」という漢字は常用漢字表外の漢字であり、世間一般的にはあまり使用されないものです。なので、「危惧」という言葉を漢字で書く場合には、「危懼」ではなく「危惧」と書いて問題ありません。
危惧の対義語
危惧の対義語・反対語としては、自信を持って信じていることを意味する「確信」、安心している状態を意味する「安堵」などがあります。
危惧の類語
危惧の類語・類義語としては「懸念」の他にも、思い煩うことを意味する「憂慮」(読み方:ゆうりょ)や、心配する必要のないことをあれこれ心配するという意味の「杞憂」(読み方:きゆう)などがあります。
危惧の「危」という漢字を使った単語としては、身体や生命、物品を損なうような危険なことを意味する「危害」、生命にかかわるような災難を意味する「危難」、災難がさし迫っていることを意味する「危急」などがあります。
懸念の意味
懸念とは
懸念とは、何かが気にかかって不安に思うことや、ある物事に対して、自分の意思に反して考えを集中させてしまっているような状態のことを意味しています。
「懸念事項」「懸念材料」「懸念点」の意味
懸念という言葉は「懸念事項」や「懸念材料」という表現でビジネスシーンでもよく使用されます。
懸念という言葉を使う場合、危惧などとは違い、物事や人に対する執着心があることを意味することもあります。一つの物事に良い意味でも悪い意味でも、心を捕らわれてしまっている状態を「懸念」と表現します。
危惧というのが、危険なことや危ういことを不安に思うのに対して、懸念というのは人の心に対して不安を持っているような状態であると言うことも出来ます。相手の気持ちがわからず、そのことが気がかりになっていることを懸念と表現するものです。
つまり、懸念事項は不安に思う事項、懸念材料は不安な材料、懸念点は不安とされる点を意味します。
「懸念する」の意味
一つの物事に執着してしまう様子を「懸念する」と表現する場合もあります。例えば「王座に懸念する」などのように使われます。これは王座という地位に執着している状態を意味しています。
表現方法は「懸念がある」「懸念を感じる」「懸念される」
「懸念する」の他に、「懸念がある」「懸念を感じる」「懸念される」「懸念が大きい」「懸念が残る」などが、懸念を使った一般的な言い回しです。
懸念の使い方
懸念を使った分かりやすい例としては、「息子の将来について懸念を感じる日々が続いている」「この案件に対して懸念される内容を次の会議までに共有をお願いします」「懸念が大きいが故に行動が慎重になってしまう」などがあります。
懸念の語源
懸念の「懸」という字は、心にかける、吊り下げるということを意味する漢字です。鉄棒などに垂直にぶら下がって行う運動のことを、懸念の「懸」を使って「懸垂」(読み方:けんすい)と呼ぶのだと思い起こすとその意味が分かりやすいでしょう。
そして、懸念の「念」という字は、心に思い詰めた考えや気持ちのこと、いつまでも心に思いとどめることなどを意味しています。思い詰めた気持ちを「怨念」などと表現することを思い出すと分かりやすいです。
つまり、懸念という言葉は、漢字の意味だけで考えると、心に思い詰めた気持ちをいつまでも心の中に引っ掛けている状態であるということが出来ます。
懸念の類語
懸念の類語としては、上記の「危惧」と同じように、憂慮や杞憂などがあります。これらの言葉はほとんど同じ意味合いで使用されるものです。
懸念の「懸」という漢字を使った単語としては、思いをかけて恋い慕うことを意味する「懸想」、力のかぎり全力を尽くすことを意味する「懸命」、前から問題になっていながらまだ解決されていない事柄を意味する「懸案」などがあります。
懸念の「念」という漢字を使った単語としては、ある一つのことを深く思いつめる心を意味する「執念」、自分の希望などをきっぱりと諦めることを意味する「断念」、ある物事についての根本の考えを意味する「理念」などがあります。
危惧の例文
この言葉がよく使われる場面としては、なにか具体的な危機感を覚えて不安に思っている様子を表す時などが挙げられます。よく耳にする言葉としては「絶滅危惧」「絶滅危惧種」などの言葉があります。
これは、具体的に個体数が減っている動植物などについて表現する言葉です。類語の「懸念」を使って「絶滅懸念種」というような表現はしません。
このように、危惧という言葉は危機が迫っている物事が具体的にわかっているような状態で使われることの多いものです。
例文2や3などで考えても、ライフラインについての不安であったり、安全性に対する不安であったりと、具体的な危機を予感しています。
懸念の例文
この言葉がよく使われる場面としては、何かが心に引っかかっていて、気がかりである様子を表現したい時などが挙げられます。なんとなく不安な状態であったり、ぼんやりと上手くいかないような予感がある時にも懸念という言葉を使うことが出来ます。
懸念というのは、危惧よりも具体性に欠ける言葉です。懸念という言葉を構成している漢字を見ても、両方の字に「心」という字が入っています。これは、自分の心の中であったり、誰かの気持ちであったりを気に掛けている状態を示しています。
ビジネスシーンでは「懸念事項」や「懸念材料」という言葉でよく使用されるものです。これは、自分の経験や勘から、なんとなく不安に思っている事柄という意味です。具体的に目の前に危機が迫っているのではなく、その可能性について表現しています。