似た意味を持つ「善処」(読み方:ぜんしょ)と「対処」(読み方:たいしょ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「善処」と「対処」という言葉は、どちらも適切な処置をすることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
善処と対処の違い
善処と対処の意味の違い
善処と対処の違いを分かりやすく言うと、善処とは問題やミスが生じた時に使われ、対処とは問題やミスに限らず使われるという違いです。
善処と対処の使い方の違い
一つ目の善処を使った分かりやすい例としては、「状況に応じて善処します」「可能な限り善処いたします」「改善できるよう善処します」「官公庁に実情を述べ善処を要請する」「担当者に確認して善処いたします」などがあります。
二つ目の対処を使った分かりやすい例としては、「想定外の危機に対処する」「しかるべき対処を取るよう徹底いたします」「ミスを犯して対処に慌ててしまった」「停電時の対処法について説明を受ける」などがあります。
善処と対処の使い分け方
善処と対処という言葉は、どちらも状況や目的などに応じてふさわしい処置をすることを表す言葉です。二つの言葉は似た表現をする言葉ですが、ニュアンスや使い方は異なります。
善処は最良の方法で処理することを意味し、何か問題や間違いが生じたときに使われる傾向があります。一方、対処は出来事や変化などに応じてふさわしい処理をすることを意味し、何か問題や間違いが生じたときだけでなく、予期しない事柄あるいは人や物の管理などにも使われる言葉です。
善処はミスをしたり、対応が迫られたりした時に使われるため、その場のごまかしや、「努力します」の意味合いに受け取られる場合があります。善処という言葉を使う時には注意しましょう。
善処と対処の英語表記の違い
善処を英語にすると「proper measures」「making the best of」「dealing appropriately」となり、例えば上記の「善処します」を英語にすると「take proper measures」となります。
一方、対処を英語にすると「countermeasure」「handling」「dealing with」となり、例えば上記の「危機に対処する」を英語にすると「deal with the crisis」となります。
善処の意味
善処とは
善処とは、適切に処置することを意味しています。
その他にも、仏教に関する言葉で、来世に生まれるべきよい場所、人界・天上・諸仏の浄土などの意味も持っています。
善処の語源
「善」はよいこと、道理にかなっていること、「処」は物事をとりさばくことを表し、善処は物事にうまく対処することを意味します。
表現方法は「善処を求める」「善処します」「善処いただき」
「善処を求める」「善処します」「善処いただき」「善処願う」などが、善処を使った一般的な言い回しです。
善処の使い方
「品質改善に向けて善処してまいります」「お客様には善処すると伝えた」「早急に解決できるよう善処します」「上の者と相談して善処いたします」「著作権問題の善処を求める」「ご要望には善処を尽くします」などの文中で使われている善処は、「適切に処置すること」の意味で使われています。
一方、「現世安穏後生善処を信じて心穏やかに生きる」「善処に生まれ変わることを願う」「信ずる者の後生は善処である」などの文中で使われている善処は、「来世に生まれるべきよい場所、浄土」の意味で使われています。
善処という言葉は上記のように二つ意味を持ちますが、一般的には「適切に処置するところ」の意味で使われ、仏教用語として使われることはほとんどありません。
善処という言葉は、ビジネスでの商談や政治家の答弁などで使われることが多い言葉です。本来は、「適切に処置する」というプラスの意味なのですが、明確に対処すると言えずに「できるだけ頑張ります」の意味合いで使われることがあり、使い方によってはマイナスイメージにもなる言葉です。
善処の類語
善処の類語・類義語としては、ある目的のために力を尽くして励むことを意味する「努力」、悪いところを改めてよくすることを意味する「改善」、事態に応じて必要な手続きをとることを意味する「措置」などがあります。
善処の善の字を使った別の言葉としては、道徳にかなった行為を意味する「善行」、よい報いを招くもとになる行為を意味する「善根」、うわべをいかにも善人らしく見せかけることを意味する「偽善」などがあります。
対処の意味
対処とは
対処とは、ある事柄・状況に合わせて適当な処置をとることを意味しています。
表現方法は「対処する」「対処いたします」「対処した」
「対処する」「対処いたします」「対処した」などが、対処を使った一般的な言い回しです。
対処の使い方
対処を使った分かりやすい例としては、「ご近所トラブルの対処について相談する」「感染症への対処方針が決まった」「専門家の意見を参考に対処案を作成した」「環境の変化に対処できずストレスを感じる」などがあります。
その他にも、「対処すべき課題が山積している」「有事の際に対処できるよう訓練する」「その案件はこちらで対処します」「代替品により対処いたします」「ストレス対処力を身につける」などがあります。
対処の語源
対処という言葉の「対」は、向き合うことや、相手になることを意味し、物事を取りさばく意味の「処」と組み合わさり、ある事柄や状況に応じて適切な処置をとることを意味します。出来事や変化に応じてふさわしい処理をすることを表し、臨機応変に取り組もうとするプラスイメージの言葉です。
「対処方針」の意味
対処という言葉を用いた日本語には「対処方針」があります。ある事柄に対して適切な処置をとるための基本となる行ない方を示すもので、政府や行政が感染症対策や災害対策に関して使う言葉です。「対応方針」よりも、「変化に応じてふさわしい処理をすること」を強調する言葉です。
対処の類語
対処の類語・類義語としては、周囲の状況などに合わせて事をすることを意味する「対応」、混乱をおさめ状態を整えることを意味する「収拾」、物事を取りさばいて始末をつけることを意味する「処理」などがあります。
対処の対の字を使った別の言葉としては、行為の目標となるものを意味する「対象」、二つのものの違いやそれぞれの特性を比べることを意味する「対比」、相手になって受け答えすることを意味する「応対」などがあります。
善処の例文
この言葉がよく使われる場面としては、事に応じて適切に処置すること、来世に生まれるべきよい場所を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4にある善処は、事態に応じて適切な処置をとることの意味で使われれいます。例文5にある善処は、仏教の言葉で、来世に生まれるべきよい場所の意味です。「現世安穏後生善処」は、法華経を信じる人は、現世では安穏に生活でき、 後生ではよい世界に生まれることを意味します。
対処の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある事柄や情勢変化に応じて適切な処置をとることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある対応という言葉は、対処と似た意味を持つ類語ですが、対応は相手側とのバランスをとった上で行動することの意味合いがあり、対処にはその意味合いはありません。例文4にある「対処方法」とは、発生した問題などに対し適切に処理するための方法です。
善処と対処という言葉は、どちらも適切な処置をすることを意味する言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、問題やミスが生じた時にうまく処置をすることを表現したい時は「善処」を、事柄や状況に合わせて適切に処置することを表現したい時は「対処」を使うようにしましょう。