同じ「ふしょう」という読み方の「不肖」と「不詳」と「不祥」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「不肖」と「不詳」と「不祥」という言葉は同音の言葉ですが、意味は大きく異なりますのでご注意下さい。
不肖と不詳と不祥の違い
不肖と不詳と不祥の使い分け方
不肖と不詳と不祥の違いを分かりやすく言うと、不肖は未熟なことを表現する時に使い、不詳は詳しくわからないことを表現する時に使い、不祥は不吉なことを表現する時に使うという違いです。
不肖と不詳と不祥の使い方の違い
不肖という言葉は、「不肖ながら精一杯務めさせていただきます」「不肖、私が仰せつかりました」などの使い方で、取るに足らない未熟さを持つことを意味します。今日では自身をへりくだって言う時に使う言葉です。
不詳という言葉は、「作者不詳の物語」「年齢不詳と思われるほど彼女は若々しい」などの使い方で、はっきりとはわからないことを意味します。
不祥という言葉は、「不祥の兆候を垣間見る」「どうか不祥がありませんように」などの使い方で、不吉なことや不運なことを意味します。今日よく使われる「不祥事」という表現は、不都合な事件といった意味で使われます。
そのため、同じ読み方をする三つの言葉のうち、不肖は取るにたらない未熟な様子を意味する時に使い、不詳ははっきりとわからないことを意味する時に使い、不祥は不吉で不運なことを意味する時に使います。これが明確な違いです。
不肖の意味
不肖とは
不肖とは、未熟で劣ることを意味しています。その他にも、父親や師匠に似ず愚かであることも意味します。
不肖の由来
不肖の肖という漢字には、似るという意味があり、不肖という言葉で父や師に似ていないことを表すようになりました。そこから転じて、未熟なことを表すようになったのが由来となっています。
今日では自分のことをへりくだって言う際によく使われますが、親や師に似るという意味はなく、自らが劣っているという意味が強調されています。
そのため、「不肖の息子」という表現を親が使ってしまうと、親は優れているが子は劣っていることを暗に意味することになります。このように、親が子のことを他に紹介する場合は、息子には「愚息」、娘には「不束者」を使います。
表現方法は「不肖ながら」「不肖ではございますが」「不肖儀」
不肖を使った表現として、「不肖ながら」「不肖ではございますが」「不肖儀」があります。どの使い方も、ビジネスシーンなどで自分をへりくだって言う時に使います。
また「不肖儀」は「ふしょうぎ」という読み方をし、「わたくしは」を意味する言葉です。文書において改まった言い方をする際に、取るに足らないという意味を込めて使います。
不肖の類語
不肖の類語・類義語としては、よく似ていることを意味する「肖似」(読み方:しょうじ)、人の姿や顔を写した絵や写真、彫刻などの像を意味する「肖像」があります。
不詳の意味
不詳とは
不詳とは、詳しくわからないことを意味しています。
不詳を使った言葉として、「不詳新築」「不詳の死」があります。
「不詳新築」の意味
一つ目の「不詳新築」とは、その建築物がいつ建てられたのか、もしくはいつ増築されたのかがわからない建築物の状態を意味する言葉です。
古くから存在する建物に対して税金が課せられないことから台帳に書かれなくなり、新築年月日を証明することができなくなるため、「新築年月日不詳」という記述で登載されます。
「不詳の死」の意味
二つ目の「不詳の死」とは、病死なのか、外傷、中毒や窒息などの外部で生じた原因による死なのか判断が下せない死を意味する言葉です。
不詳の類語
不詳の類語・類義語としては、明らかでないことを意味する「不明」、まだはっきりしないことを意味する「未詳」、将来的にどうなるのか今は予想がつかないことを意味する「未知数」があります。
不詳の詳の字を使った別の言葉としては、詳しく解釈し説明することを意味する「詳解」、細かい部分に至るまで詳しいことを意味する「詳細」、詳しい知らせを意味する「詳報」、よく行き届いており漏れがないことを意味する「詳密」などがあります。
不祥の意味
不祥とは
不祥とは、不吉であることを意味しています。その他にも、運の悪いことも意味します。
不祥を使った言葉として、「不祥事」「佳兵不祥」があります。
「不祥事」の意味
一つ目の「不祥事」とは、関係者にとって不都合な事件や事柄を意味する言葉です。「不祥事件」といった言い方もされます。英語で言うスキャンダルがこれに該当します。
本来は不祥の意味そのままで、めでたくないことを意味する言葉でした。しかし今日では、ニュース番組や雑誌などで、有名人や有名企業が社会的信頼を失うような何らかの事件や出来事を起こした際に使われ、今ではこちらの意味合いの方が強くなっています。
「佳兵不祥」の意味
二つ目の「佳兵不祥」(読み方:かへいふしょう)とは、優れた性能の武器は人を殺すためのものであって不吉なものであることを表す四字熟語です。この意味から、戦争を批判する時に使われます。佳兵とは優れた兵士を意味しますが、ここでは武器に例えています。
不祥の類語
不祥の類語・類義語としては、道徳に外れた不名誉な行いを意味する「汚行」、見苦しいことを意味する「無道」(読み方:ぶどう)、道理に外れていてけしからぬことを意味する「不埒」、危機や危険をはらんでいる不安定な状態を意味する「不穏」などがあります。
不祥の祥の字を使った別の言葉としては、幸の多いことを意味する「多祥」、幸運の兆候を意味する「嘉祥」、めでたいことが起こるという前兆を意味する「瑞祥」(読み方:ずいしょう)、物事が起こり現れることを意味する「発祥」などがあります。
不肖の例文
この言葉がよく使われる場面としては、未熟であることを意味する時などが挙げられます。
例文3の「不肖儀」とは、未熟な私といった意味になる使い方です。基本的に会話で使うことはなく、かしこまった文書で使われる言葉です。
不詳の例文
この言葉がよく使われる場面としては、はっきりとはわからないことを意味する時などが挙げられます。
上の例文のどの「不詳」も、類義語である「不明」に置き換えて使うことが可能です。
また、同じ類義語である「未詳」は、今はまだわからないものの自分で調べるうちに今後明確になる可能性があるという意味を含んでいます。そのため、例文3は、有名人でもない限り自分一人で相手の年齢を知ることはできないため置き換えて使うことはできません。
不祥の例文
この言葉がよく使われる場面としては、不吉なことを意味する時などが挙げられます。
例文2の「不祥事」とは、一定の社会的な地位を持つ個人もしくは団体などが起こした、社会的な信頼を失わせるような出来事を指します。本来は不運なことを意味する言葉でしたが、今日ではメディアなどによって社会的信頼に関わる事件という意味で定着しました。
不肖と不詳と不祥どれを使うか迷った場合は、未熟であることを表す場合は「不肖」を、はっきりとわからないことを表す場合は「不詳」を、不吉であることを表す場合は「不祥」を使うと覚えておけば間違いありません。