似た意味を持つ「補填」(読み方:ほてん)と「補充」(読み方:ほじゅう)と「補完」(読み方:ほかん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「補填」と「補充」と「補完」という言葉は、補うという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
補填と補充と補完の違い
補填と補充と補完の意味の違い
補填と補充と補完の違いを分かりやすく言うと、補填は不足分とは違うもので補う時に使い、補充は不足分と同じもので補う時に使い、補完は不足分と違うものでも同じものでも補う時に使うという違いです。
補填と補充と補完の使い方の違い
補填という言葉は、「出張分の補填を行う」「天災が起きた際の試合会場の補填制度について説明される」などの使い方で、欠けていたり空いている部分を補うことを意味します。他のもので穴埋めをする場合に使う言葉です。
補充という言葉は、「飲み物の補充をしておく」「インク補充用のキットを購入する」などの使い方で、定められた量よりも少ない場合にその不足分を補うことを意味します。
補完という言葉は、「見えない部分は脳内で補完する」「補完的な関係にあるものは多い」などの使い方で、不十分な部分を補って完全な状態にすることを意味します。
補填と補充と補完の使い分け方
「補充」は、不足した分を他のもので補う「補填」と違い、不足しているものと同じもので補う場合に使います。また、「補完」は、不足しているものを他のもので補う場合にも同じもので補う場合にも使います。
例えば、1ダースあるはずの鉛筆が10本しかない場合、2つのシャーペンを加えて補う場合は「補填」、全く同じ鉛筆を2本加えて補う場合は「補充」、色や形状は違うものの鉛筆を加えて鉛筆を1ダース揃える場合は「補完」を使います。
これが補填、補充、補完の明確な違いです。
補填の意味
補填とは
補填とは、不足部分や欠損部分を補って埋めることを意味しています。
補填の読み方
補填は「ほてん」という読み方をしますが、「ほちん」という読み方はしません。また、補填の填は異字体で、本来は「塡」と書かれます。しかし、2010年に常用漢字として追加されることとなったため、それ以前の公用文書などでは「補てん」と記載されています。
表現方法は「補填する」「補填あり」「補填として」
「補填する」「補填あり」「補填として」などが、補填を使った一般的な言い回しです。
補填の使い方
補填を使った分かりやすい例としては、「このお店では赤字を補填するために従業員が自腹で購入している」「万が一の事態が起きた場合は補填ありとなっております」「損失の補填として国から給付金が支払われることになった」などがあります。
「損失補填」の意味
補填を使った言葉として、「損失補填」があります。これは、発生した損失について穴埋めをすることを指す言葉で、証券会社などの取引に損失が生じた場合に財産上の利益を提供することを言います。
基本的には「損失補填の禁止」が定められ、あらゆる取引によって発生した損失も補填できないようになっていて、取引業者だけでなく顧客が補填を要求することも禁止されています。
補填の対義語
補填の対義語・反対語としては、物の一部が欠けてなくなることを意味する「欠損」、邪魔なものを除きとることを意味する「除去」があります。
補填の類語
補填の類語・類義語としては、漏れたりした事柄をあとから補い加えることを意味する「補遺」(読み方:ほい)、不足や欠損を補うことを意味する「填補」(読み方:てんぽ)、不十分なところを付け足して補うことを意味する「補足」などがあります。
補填の填の字を使った別の言葉としては、「填塞」欠けているところに物を詰めて塞ぐことを意味する「充填」、弾丸などを中に詰め込むことを意味する「装填」があります。
補充の意味
補充とは
補充とは、不足しているものを補うことを意味しています。
表現方法は「補充する」「補充しない」「補充要因」
「補充する」「補充しない」「補充要員」などが、補充を使った一般的な言い回しです。
補充の使い方
補充を使った分かりやすい例としては、「このお店はいつまで経っても物を補充しない」「プリンターのインクを補充するのは新人がやることになっている」「補充要員として派遣社員がきたが逆に仕事が増えてしまった」などがあります。
上記以外の補充を使った言葉として、「補充選挙」「補充裁判員」があります。
「補充選挙」の意味
一つ目の「補充選挙」とは、定員が不足した場合補充をするために行われる選挙を指す言葉です。補欠選挙や再選挙がこれに当てはまります。国の政治に関する選挙だけではなく、各企業や団体の役員決め、学校の生徒会役員決めなどにも使われる言葉です。
「補充裁判員」の意味
二つ目の「補充裁判員」とは、裁判員裁判において裁判員が病気や事故などで途中から審理に参加できなくなった場合に備えて選ばれる裁判員を指す言葉です。
万が一に備えて職務を引き継げるように、審理には最初から参加し、証拠の閲覧などもすることができますが、正式な裁判員ではないため評議や評決の際に意見を述べることはできません。
補充の対義語
補充の対義語・反対語としては、使ってなくすことを意味する「消費」があります。
補充の類語
補充の類語・類義語としては、足りなくなった分を補うことを意味する「補給」、書物の内容に新しいものを加えて不足を補うことを意味する「増補」、互いに不足を補うことを意味する「相補」、新しく改めることを意味する「更新」などがあります。
補充の充の字を使った別の言葉としては、人員や金品をある目的や用途にあてることを意味する「充当」、十分に補い満たすことを意味する「充足」、組織や施設を広げて充実させることを意味する「拡充」などがあります。
補完の意味
補完とは
補完とは、不十分な部分を補って完全なものにすることを意味しています。
表現方法は「補完する」「補完しあう」「相互補完関係」
「補完する」「補完しあう」「相互補完関係」などが、補完を使った一般的な言い回しです。
補完の使い方
補完を使った分かりやすい例としては、「弱点を補完することさえ出来れば何も怖いものはない」「このチームの上司部下はお互いの不足点を補完しあう相互補完関係といえよう」などがあります。
上記以外の補完を使った言葉として、「補完財」「補完性原理」があります。
「補完財」の意味
一つ目の「補完財」とは、商品などが互いに補い合うことで単独で使うよりも価値が増す財を指す言葉です。例えば、ジャムとパン、ガソリンと自動車など、一方だけでの摂取はしない、一方がなければ使えないといった場合に補完財の関係が成り立ちます。
「補完性原理」の意味
二つ目の「補完性原理」とは、決定や自治などを出来る限り小さい単位で行い、出来ないことだけを大きな単位の団体で補完していくという考え方です。政治や文化において使われる言葉で、基本的な自治は地方で行い、出来ないことは政府が行うことを表しています。
補完の類語
補完の類語・類義語としては、あるものにさらに付け加えることを意味する「付加」、すでに書かれているものにあとから書き加えることを意味する「追録」、出版物などで不足や脱落の箇所を後から補うことを意味する「追補」などがあります。
補完の完の字を使った別の言葉としては、欠けたところや足りないところが全くないことを意味する「完全」、必要なものが完全に備わっていることを意味する「完備」、完全に出来上がることを意味する「完成」などがあります。
補填の例文
この言葉がよく使われる場面としては、空いていたり欠落した部分を他のもので補うことを意味する時などが挙げられます。
例文1や例文2のような企業などからのサポートに関しては、消費者が全員満足するかどうかわからないため、補完ではなく補填を使うのが好ましいです。
補充の例文
この言葉がよく使われる場面としては、定められた量と比べて不足している時に補うことを意味する時などが挙げられます。
例文2の「補充学習」とは補充的な学習とも言われ、学習内容をしっかりと理解できるようになるために、できる状態にまで高める学習を指します。
補完の例文
この言葉がよく使われる場面としては、不足している部分を補うことを意味する時などが挙げられます。
補填や補充とは違って、完璧な状態にすることを重視した言葉であるため、例文2のようなものに、補填や補充を使うことはできません。
補填と補充と補完どれを使うか迷った場合は、不足分を他のもので補う場合は「補填」を、定量にするため不足分を補う場合は「補充」を、補うことで完璧な状態にする場合は「補完」を使うと覚えておけば間違いありません。