似た意味を持つ「信憑性」(読み方:しんぴょうせい)と「信頼性」(読み方:しんらいせい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分けを参考にしてみてください。
「信憑性」と「信頼性」という言葉は、どちらもある物事が正しく信じられることを意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
信憑性と信頼性の違い
信憑性と信頼性の意味の違い
信憑性と信頼性の違いを分かりやすく言うと、信憑性というのは、客観的に正しさが信用できることを意味していて、信頼性というのは、主観的に安心できるような信用のことを意味しているという違いです。
信憑性と信頼性の両方についている「性」という字は、性質や傾向、度合を表す接尾語です。それぞれ「信憑/信頼できること、その度合い」というような意味になります。性を用いると、「社会性」「アルカリ性」「機能性」などの言葉を作ることが出来ます。
信憑性と信頼性の使い分け方
信憑性と信頼性の違いを考えるにあたって、2つと似た意味を持つ「信用性」という言葉から始めてみます。
信用という言葉は信じることですが、よく考えてみると、客観的な状況や証拠を元にして正しさを判断する場合と、根拠には乏しいが主観的に正しさを受け入れる場合の2つの意味があります。日常的にはあまり意識はされませんが、こうした区別があります。
信憑性という言葉は信用という言葉の客観的な場合に対応していて、信頼性という言葉は主観的な場合に対応しているというのが、2つの言葉の大きな違いです。
「彼の話には信憑性がある」という場合、それは話の内容と目下の状況を照らし合わせて客観的に正しいと認めることです。
それに対して「信頼性のもてる車」という場合、それは車が安全であること、そして安心できること、頼りに出来ることを意味しています。
このように、信憑性が客観的、信頼性が主観的と覚えておくことは、ひとつの目安となります。その他の注意点は、以下を参照してみてください。
信憑性の意味
信憑性とは
信憑性とは、情報などが客観的に信用できることを意味しています。
表現方法は「信憑性が低い」「信憑性を高める」「信憑性に欠ける」
マスメディアなどの情報の正確さや、科学的根拠について表現する場合に「信憑性が低い」「信憑性を高める」「信憑性に欠ける」「信憑性を疑う」「信憑性が疑われる」「信憑性がある」「信憑性をはかる」などと用いられます。
信憑性の使い方
信憑の憑の字は「とりつく」という意味で馴染み深いものですが、信憑の場合には「しるし、証拠」という意味です。単に信じられるというだけではなく、客観的な根拠があるから信じることができるという意味合いが、信憑という言葉にはあります。
信憑性という言葉は客観性を念頭に置いていますから、その正しさのためには何らかの証拠が必要です。証拠によって正しさを推し量るわけです。推し量ることを一般に「推論」(読み方:すいろん)と言いますが、推論は直接的ではなく間接的な知り方です。
どういうことかと言うと、補助手段なしに何かを知ることは直接的な知り方です。例えば「今日は空が青い」という場面を考えましょう。それに対して、証拠を積み重ねて事実を構築することは、間接的な知り方です。例えば犯罪の捜査は、すべて間接的な知り方です。
信憑性というのは、正しさに証拠があることです。証拠を通じて正しさを見ているわけなので、正しさそのものが見えるわけではありあません。正しさが「憑く」(読み方:つく)ことが信憑性だと考えると、分かりやすくなります。
信憑性の類語
信憑性の類語・類義語としては、真実であるという感じを意味する「真実味」、行為が法律的に問題がないことを意味する「合法性」、正しく道理にかなっていることを意味する「正当性」などがあります。
信憑性の憑の字を使った別の言葉としては、裁判における物件・証人を含んだすべての参考資料を意味する「証憑」(読み方:しょうひょう)、裁判における間接証拠を意味する「徴憑」(読み方:ちょうひょう)などがあります。
信頼性の意味
信頼性とは
信頼性とは、主観的に安心できるようこと、その度合いを意味しています。
信頼性の使い方
信頼の頼という字は「たよる」という意味です。「ある物事を信頼する」というのは、自分の側に立った主観的な表現です。信憑性が物事の客観的性質だとすると、信頼性は物事に対する主観的な評価です。この信頼という言葉を考える時に、思い浮かべてみたいのが「安心」という言葉です。
昨今、「安心」と「安全」は違うということが社会的に認知されるようになってきて、以前からの「安全性」に加えて、「安心性」という言葉も生まれてきています。簡単に言うと、「信頼性」とは「安心性」のことです。
安全性と安心性の違いを乗り物の事故の例で考えてみると、「安全性」とは、科学的データに基づく客観的なもので、「安心性」とは、この客観的な安全性を主観的に許容できることです。
例えば、飛行機は事故の確率が低いから自動車よりも危険ではないというのが安全性の観点で、いくら安全だと言われてもどうにも納得が出来ない、あるいは高所恐怖症だから乗れないというのが安心性の観点だと考えると、違いが分かりやすくなります。
ただし、工学や情報科学の分野における専門的用語としては、信頼性と安心性は異なります。その場合の信頼性とは、システムや機械の故障や劣化を稼働時間と頻度などによって客観的に示すものであり、ユーザー側の主観的な評価を意味する安心性とは異なります。
こうした例外があることを知ったうえで、信頼性とは通常の意味では安心できることだと考えることで、信頼性という言葉の意味が納得できるようになります。
表現方法は「信頼性がある」「信頼性が高い」「信頼性が低い」
「信頼性がある」「信頼性が高い」「信頼性が低い」などが、信頼性を使った一般的な言い回しです。
信頼性の類語
信頼性の類語・類義語としては、頼っただけの効果があることを意味する「頼り甲斐」があります。
信頼の頼の字を使った言葉としては、用事を頼むことを意味する「依頼」、少し古い言葉ですが、頼れるものがないことや、法や道義に背く行いをすることを意味する「無頼」(読み方:ぶらい)などがあります。
信憑性の例文
この言葉がよく使われる場面としては、客観的に正しいと考えられる物事を表現したい時などが挙げられます。客観的に正しいと思ってもらうためには、証拠が必要なので、文脈的にはそれとセットになって用いられる傾向があります。
例文3のように、信憑性がないことと信頼性がないことは現実では一続きになっていることが多いです。ただしその場合にも、事実に基づく信憑性と主観的評価を意味する信頼性とが区別されていることに注意してみましょう。
信頼性の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある物事に対して抱く主観的な安心感、信頼感を表現したい時などが挙げられます。客観的に安全性が保障されただけでは、それに対して信頼をよせることの出来ない人も多いと思います。
新技術の安全性に対して客観的なデータがあったり、企業が社会に対して利益をもたらすだけでは、真の信頼は得られません。そうしたデータや実績を広く一般に認めてもらうことが必要なのです。いわゆる「上手なプレゼン」というのが、ここでも信頼性の話と重なってきます。
信頼性は主観的なものではありますが、思い込みとは違います。
今日求められることが強く意識されるようになった「社会的信頼性」という言葉が示すように、信頼性を高める時には、単なる客観的事実を提示するだけではいけません。受け入れる側の立場に立って説明することが必要なのです。