似た意味を持つ「殿」(読み方:どの)と「様」(読み方:さま)と「御中」(読み方:おんちゅう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「殿」と「様」と「御中」という言葉は、宛名の敬称という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
殿と様と御中の違い
殿と様と御中の意味の違い
殿と様と御中の違いを分かりやすく言うと、殿は役職名に使い、様は個人名に使い、御中は会社や部署などの団体に使うという違いです。
殿と様と御中の使い方の違い
殿という言葉は、「A会社 人事部長殿」「表彰時、名前に殿をつけて呼ばれると身が引き締まる」などの使い方で、役職名につけて尊敬の意を表します。
様という言葉は、「株式会社C ご担当者様」「お客様各位には十分な対策をお願い致します」などの使い方で、個人名などにつけて尊敬の意を表します。
御中という言葉は、「D会社 人事部 御中」「E会社御中」などの使い方で、組織名や団体名につけて尊敬の意を表します。
殿と様と御中の使い分け方
様という言葉は、役職名でも組織名でも使うことができるとされていますが、組織名には御中を使うのが一般的とされています。
また、本来であれば御中と様など、敬称を一緒に使うことはできません。各位という言葉にも敬意が含まれているため「取引先各位 様」のように一緒に使うことはできませんが、「お客様各位」「お得意様各位」のようにこの二つの言葉は併用が可能です。
これが殿、様、御中の明確な違いです。
殿の意味
殿とは
殿とは、名前や役職名などに付ける敬称を意味しています。
殿の使い方
手紙の宛名を書く時に相手の役職につける言葉です。もとは地名などに付けて、そこに住む人のことを表していました。やがて今日のように手紙などで名前や役職名に付ける敬称として使われるようになりました。
当時は身分のかなり高い人に対して使われていましたが、後々一般的な敬称となりました。江戸時代には、室町時代に使われるようになった「様」という敬称が一番敬意が高く、次いで「公」、ようやく「殿」といった順で使われていました。
相手の性別問わず個人名にも使うことができますが、一般的には目上の人から目下の人に対して使うとされているため、ビジネス間で使う場合には相手に失礼と思われる可能性もあります。
そのため、今日手紙を書く際は、「殿」ではなく「様」を使って宛名が書かれることがほとんどです。
ただし、手紙を送る相手が会社や部署などである場合には、「広報部 殿」のように殿を使うことはできないため、「広報部 御中」や「広報部 ご担当者各位」など別の表記にする必要があるとされていますが、「様」が使われることもあります。
殿の類語
殿の類語・類義語としては、姓名に添えて敬意を表したり敬意を持って人物を指す言葉である「氏」(読み方:し)があります。
様の意味
様とは
様とは、人名、役職名、団体名などにつく敬称を意味しています。
様の使い方
様という言葉は、方向を指し示す「さ」に、その状態であるという意味の名詞を作る接尾語「ま」が組み合わさり作られた言葉で、漠然とそちらの方向の状態を示すことで相手への敬意を表すようになったのが由来の言葉です。
そのため、「御前様」(読み方:おまえさま)や「上様」(読み方:うえさま)などの使い方がなされ、今日でも個人名に様を付ける習慣が残っています。
また、「様」は様子や態度などを意味する言葉であることから、「お疲れ様」「ご苦労様」「お粗末様」「お待ち遠様」など名詞や形容動詞などの言葉の最後につけて、相手の状態を丁寧に言い表すことで、相手を労わるような使い方をすることもあります。
「様に様を付ける」の意味
様を使った言葉として、「様に様を付ける」があります。これは、敬う上にも敬うということから、最大限の敬意を払うことを意味する言葉です。
様の類語
様の類語・類義語としては、様の音変化したもので人名などについて尊敬の意を表す言葉である「さん」、同輩や目下の者を呼ぶ言葉である「くん」があります。
御中の意味
御中とは
御中とは、郵便物などで会社や団体などの宛名の下につける敬称を意味しています。
御中の使い方
御中の中という漢字は中の人を意味するもので、その中の人に丁寧語の「御」が付けられたのが御中という言葉です。
そのため、御中を付ける場合はその団体の中の人へ宛てた手紙となり、読む相手が複数人であったり、その団体に所属する人なら誰でも構わないといった意味合いとなり、読む人を特定しない使い方になります。
団体に対して使うとは言えど、敬称の重複はできません。「A会社御中 B様」のように、会社名に御中をつけ、その後相手の個人名に様を付けた書き方をすることはできません。
個人名ではなく「ご担当者様」とする場合も、「A会社 ご担当者様 御中」のように会社名が書かれていて、読み手をはっきり特定しるわけではありませんが、御中を使うことはできません。この場合は「A会社 ご担当者様」が正しい表記です。
また、口頭でその団体の紹介をする際など、手紙の宛名以外の改まった場で付けられる敬称は「御中」ではなく「様」となり、「A会社様」という表現になります。このため、手紙でも御中でなければいけないということはなく、様を使うことも稀にあります。
「人人御中」の意味
御中を使った言葉として、「人人御中」(読み方:ひとびとおんちゅう)があります。これは脇付けの一種で、手紙を出す相手の名前に書き添えて敬意を表す言葉です。直接相手に送るのを避けて謙譲の意を表現していました。
「参人人御中」の意味
他にも「参人人御中」(読み方:まいるひとびとおんなか)などの言葉が残っており、個人宛てではない手紙の敬称として今日の「御中」が使われることになります。
御中の類語
御中の類語・類義語としては、返信用の宛先で自分に使う敬称の一つである「行」、相手に対する敬意を表す脇付である「机下」(読み方:きか)、同じく脇付である「案下」(読み方:あんか)があります。
殿の例文
この言葉がよく使われる場面としては、役職名や個人名につけて敬意を表す時などが挙げられます。
今日では殿という敬称は使わずに様を使っています。ただし、例文1のように表彰状などでは殿が使われているなど、特別なものでの敬称としては使われることが多いです。
様の例文
この言葉がよく使われる場面としては、言葉の後ろに付いて敬意を表す時などが挙げられます。
例文2の「お天道様」とは、太陽を意味する言葉ですが、太陽は全てを見渡せるところから、すべてを見通す存在という意味を持ちます。
御中の例文
この言葉がよく使われる場面としては、手紙などで団体や組織の名前の後ろに付いて敬意を表す時などが挙げられます。
例文3の「御中と様を一緒に使う」のは間違いで、個人名がわかっている場合やご担当者様と宛名に書く場合には御中を使うことはできません。
殿と様と御中どれを使うか迷った場合は、役職名や目下の人に使う場合は「殿」を、個人名に使う場合は「様」を、組織名や団体名に使う場合は「御中」を使うと覚えておけば間違いありません。