似た意味を持つ「奉公」(読み方:ほうこう)と「奉仕」(読み方:ほうし)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「奉公」と「奉仕」という言葉は、どちらも「他人のために力を尽くすこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
奉公と奉仕の違い
奉公と奉仕の意味の違い
奉公と奉仕の違いを分かりやすく言うと、奉公とは報酬や見返りを求めることを表し、奉仕とは報酬や見返りを求めないことを表すという違いです。
奉公と奉仕の使い方の違い
一つ目の奉公を使った分かりやすい例としては、「家族のために奉公に出る」「丁稚奉公することになりました」「奉公人の多くは住み込みで働いていました」「奉公衆は将軍直属の軍事力でした」などがあります。
二つ目の奉仕を使った分かりやすい例としては、「寺院の清掃奉仕に参加する」「奉仕料は10パーセントです」「奉仕の精神で英語を無償で教えています」「奉仕作業に給料はでません」「国民全体の奉仕者として職務を遂行する」「大奉仕プライス」などがあります。
奉公と奉仕の使い分け方
奉公と奉仕という言葉は、どちらも国家や他人のために力を尽くすことを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
奉公とは、国家のために一身をささげて尽くすことや、特定の主人のために尽くすことを意味します。上記の「丁稚奉公」とは、江戸時代に多い働き方で、商人や職人の家で丁稚として働くことです。丁稚奉公は無給に近い雇用形態でしたが、衣食住が保障されていました。
奉仕とは、国家や社会あるいは目上の者などのために、私心を捨てて力を尽くすことを意味します。報酬や見返りを求めずに自発的に働くことを表す言葉です。また、「奉仕品」のような使い方で、商品を特に安く提供し、客の得になるように計らうことも意味します。
つまり、奉公とは報酬や見返りを求める働きであり、奉仕とは報酬や見返りを求めない働きです。この点が、二つの言葉の明確な違いになります。
奉公と奉仕の英語表記の違い
奉公も奉仕も英語にすると「service」となり、例えば上記の「奉公に出る」を英語にすると「go into service」となります。
奉公の意味
奉公とは
奉公とは、他人の家に雇われて、その家事や家業に従事することを意味しています。
その他にも「国家や朝廷のために一身を捧げて働くこと」「封建社会で、主家に対する従者の奉仕義務」「主家に対して功績があること、忠義であること」の意味も持っています。
表現方法は「奉公に出す」「奉公に行く」「奉公に出る」
「奉公に出す」「奉公に行く」「奉公に出る」などが、奉公を使った一般的な言い回しです。
奉公の使い方
「商家の奉公人は年に二度だけ親元に帰る」「武家奉公構が科せられた」の文中で使われている奉公は「他人の家に雇われて従事すること」の意味で、「家庭を犠牲にして会社に滅私奉公する」の文中で使われている奉公は「一身を捧げて働くこと」の意味で使われています。
一方、「鎌倉幕府のために命がけで奉公する」「幕府と御家人は御恩と奉公の関係で結びついていた」の文中で使われている奉公は「主家に対する従者の奉仕義務」の意味で、「あれほど奉公者はいない」の文中で使われている奉公は「功績があること、忠義であること」の意味で使われています。
奉公の「奉」は目上に仕えること、「公」は国家や政府に関すること、人に対して社会的なことを表す感じです。奉公とは、国家や社会に一身をささげて仕えることを表す言葉であり、上記にあるように複数の意味を持ちます。
「年季奉公」の意味
奉公を用いた日本語には、「年季奉公」(読み方:ねんきぼうこう)があります。年季奉公とは、一定期間、雇主との契約によって奉公することを意味します。年切奉公ともいい、江戸時代における最も一般的な奉公の形態です。
奉公の対義語
奉公の対義語・反対語としては、封建社会で主君が臣下に対して与える恩恵を意味する「御恩」などがあります。
奉公の類語
奉公の類語・類義語としては、もっぱらその仕事に携わることを意味する「従事」、主のそばに仕えることを意味する「侍従」、浪人していた武士が大名などに召し抱えられて仕えることを意味する「仕官」、物事や社会のために役立つように尽力することを意味する「貢献」などがあります。
奉仕の意味
奉仕とは
奉仕とは、神仏・主君・師などに、つつしんで仕えることを意味しています。
その他にも、「利害を離れて国家や社会などのために尽くすこと」「商人が品物を安く売ること」の意味も持っています。
奉仕の読み方
奉仕の読み方は「ほうし」です。古くは「ほうじ」とも読みましたが、現在では「ほうし」という読みに統一されています。
表現方法は「奉仕の心」「奉仕する」「奉仕活動」
「奉仕の心」「奉仕する」「奉仕活動」などが、奉仕を使った一般的な言い回しです。
奉仕の使い方
「神主は神様のために奉仕する立場です」「信徒がお念仏や清掃奉仕に励む」「毎年恒例の奉仕作業と檀家総会を行いました」「天皇制支配に奉仕する政治体制」などの文中で使われている奉仕は、「神仏や師などにつつしんで仕えること」の意味で使われています。
一方、「奉仕の心を忘れてはいけません」「地域の奉仕活動に参加する」「公務員は国民全体の奉仕者です」の文中で使われている奉仕は「社会などのために尽くすこと」の意味で、「月間奉仕品をチェックする」の文中で使われている奉仕は「商人が品物を安く売ること」の意味で使われています。
奉仕の「奉」は訓読みで「たてまつる」と読み、目上や貴人に仕えることを表し、「仕」は「つかえる」と読み、目上の人につき従って働くことを表します。奉仕とは、利益を目的とせずに人のために尽くすことを意味する言葉です。
「奉仕料」の意味
奉仕を用いた日本語には「奉仕料」があります。奉仕料とは、主に飲食店や宿泊施設などで提供されるサービスに対して支払う金額を意味します。一般に、請求金額の数パーセントである場合が多くあります。
奉仕の対義語
奉仕の対義語・反対語としては、自分の利益だけを考え他人のことは顧みないことを意味する「利己」などがあります。
奉仕の類語
奉仕の類語・類義語としては、自主的に社会事業などに参加し無償の奉仕活動をする人を意味する「ボランティア」、人のために力を尽くすことを意味する「サービス」、他人やある物事のために身を犠牲にして尽くすことを意味する「献身」などがあります。
奉公の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他人の家に召し使われて勤めること、おおやけに一身をささげて仕えること、武家社会で家臣が主君のために働くこと、忠義であることを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「滅私奉公」とは、私利私欲を捨て去って、主人や公のために忠誠を尽くすことを意味する四字熟語です。「滅私」は、私利私欲を捨てることを表します。
奉仕の例文
この言葉がよく使われる場面としては、神仏や師などにつつしんで仕えること、私心をすてて国家や他人のために献身的に働くこと、商品を特に安く提供することを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「奉仕の心」とは、人に役に立ち、社会の役に立ちたいと自発的に思う心を意味します。仏教では、「奉仕の心」「素直な心」「反省の心」「謙虚な心」「感謝の心」をあわせて「日常五心」と言います。
奉公と奉仕という言葉は、どちらも「他人のために力を尽くすこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、報酬や見返りを求めることを表現したい時は「奉公」を、報酬や見返りを求めないことを表現したい時は「奉仕」を使うようにしましょう。