似た意味を持つ「有事」(読み方:ゆうじ)と「平時」(読み方:へいじ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「有事」と「平時」という言葉は、どちらも「世の中の状況」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
有事と平時の違い
有事と平時の意味の違い
有事と平時の違いを分かりやすく言うと、有事とは戦争など非常事態が起こること、平時とは戦争のない平和な時という違いです。
有事と平時の使い方の違い
一つ目の有事を使った分かりやすい例としては、「台湾有事は日本への影響が大きい」「日本の有事法制をご存知でしょうか」「有事に強いビジネスモデルを検討しています」「有事の際に備えて防災訓練を実施します」などがあります。
二つ目の平時を使った分かりやすい例としては、「平時には日常の有難みがわからないものです」「平時からのコミュニケーションが大事です」「有事に備えて平時にできることは何だろう」「軍事演習は平時編成で行います」などがあります。
有事と平時の使い分け方
有事と平時という言葉は、どちらも世の中の状況や世間のありさまを表す時に用いられていますが、意味や使い方には大きな違いがあります。
有事とは、戦争や事変などが起こり、非常の事態になること意味します。主に戦争などの軍事的な危機を表しますが、甚大な自然災害や感染症のパンデミック、経済の危機的状況などにも使用できる言葉です。
平時とは、日頃の状態であることや、戦争のない平和な時を意味します。上記の例文にある「平時編成」とは平時における軍隊の編制であり、「戦時編制」と対になる言葉です。軍隊を平時編制から戦時編制に切り替えることを「動員」と言います。
つまり、有事は戦争などの非常事態が起こることであり、平時は戦争のない平和な時期を表します。二つの言葉は世の中の状況において、相反する関係にある言葉だと言えるでしょう。
有事と平時の英語表記の違い
有事を英語にすると「emergency situation」「emergency circumstances」となり、例えば上記の「有事の際」を英語にすると「in times of emergency situation」となります。
一方、平時を英語にすると「peacetime」「ordinary times」「normal times」となり、例えば上記の「平時には」を英語にすると「n peacetime」となります。
有事の意味
有事とは
有事とは、戦争や事変など、非常の事態が起こることを意味しています。
表現方法は「有事の際に」「有事に備える」「有事が起こる」
「有事の際に」「有事に備える」「有事が起こる」などが、有事を使った一般的な言い回しです。
有事の使い方
有事を使った分かりやすい例としては、「政府は有事の際に自衛隊部隊を輸送する」「国民保護法は有事法制関連法の一環として制定されました」「有事立法が国民の権利を制限する」「有事関連三法案の成立に反対です」などがあります。
その他にも、「少し前までは有事の円買いがトレンドでした」「リスク管理や有事対応の在り方を定める」「有事の際に備えて救命講習を受講しました」「有事の事態対処は万全ですか」「大規模地震などの有事に備えるべきです」などがあります。
有事とは、国家あるいは企業の危機管理において、戦争や事変また大規模な自然災害などの非常事態を指す言葉です。さまざまな危機的状況を表すため、軍事的な危機だけでなく、経済的な危機や感染症の大流行などにも使用できます。
「有事法制」の意味
有事を用いた日本語には「有事法制」があります。有事法制とは、外国から武力攻撃を受けた場合の有事に対応するための法制のことです。有事法制は戦争時の法律であるため、憲法第9条をめぐる個別的自衛権の是非などから反対意見も出ています。
有事の対義語
有事の対義語・反対語としては、普段と変わりないことを意味する「無事」、いつものことで特に取り上げるまでもないものを意味する「日常茶飯事」などがあります。
有事の類語
有事の類語・類義語としては、大規模災害や騒乱など治安上差し迫った危険が存在する状態を意味する「緊急事態」、普段とは異なる差し迫った危険のある状態を意味する「非常事態」などがあります。
平時の意味
平時とは
平時とは、変わったことのない時を意味しています。
その他にも、「戦争や事変のない時、平和な時」の意味も持っています。
表現方法は「平時であれば」「平時に増して」「平時に戻る」
「平時であれば」「平時に増して」「平時に戻る」などが、平時を使った一般的な言い回しです。
平時の使い方
「ふつう平時の体温は低めです」「平時からハザードマップを確認しておこう」「平時に英語を話す機会はほとんどありません」「金融政策はようやく平時に戻るようだ」などの文中で使われている平時は、「変わったことのない時」の意味で使われています。
一方、「戦時と平時を問わず軍事は社会に遍在しています」「父は戦時から平時への過渡期に生まれました」「祖父は有事と平時を経験しました」「大切なのは平時の備えです」などの文中で使われている平時は、「戦争や事変のない時」の意味で使われています。
平時という言葉の「平」は、特に変わった様子がなく穏やかであるさまを表します。過ぎゆく時の中のある時期を表す「時」と結び付き、平時とは、特に変わったことのない平常時や、戦争や事変のない平和な時を意味します。
「平時封鎖」の意味
平時を用いた日本語には「平時封鎖」があります。平時封鎖とは、 戦争や事変のないときに行なわれる封鎖のことです。多く干渉や報復の手段として行われましたが、不戦条約や国際連合憲章の成立により禁止されました。
平時の対義語
平時の対義語・反対語としては、国家的あるいは国際的に重大な危機に直面した時を意味する「非常」、戦争をしている時期を意味する「戦時」などがあります。
平時の類語
平時の類語・類義語としては、いつもと同じであることを意味する「平常」、日常のことを意味する「普段」、いつもや常日頃を意味する「平生」、特別でなく普通の状態であることを意味する「通常」などがあります。
有事の例文
この言葉がよく使われる場面としては、戦争や事変、武力衝突や自然災害などにより非常事態が起きることを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある「有事」は戦争や武力衝突による非常事態を表しています。例文4や例文5の「有事」は自然災害による非常事態を指しています。
平時の例文
この言葉がよく使われる場面としては、変わった事のない平常な時、戦争のない平和な時を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある平時と常時の違いは、平時は何もない平和なある一定の時期を意味することに対し、常時はどんな時でもその状態を保っていることを表します。
有事と平時という言葉は、どちらも「世の中の状況」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、非常事態が起こることを表現したい時は「有事」を、平和な時を表現したい時は「平時」を使うようにしましょう。