似た意味を持つ「一時帰休」(読み方:いちじききゅう)と「自宅待機」(読み方:じたくたいき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「一時帰休」と「自宅待機」という言葉は、どちらも勤務しないことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
一時帰休と自宅待機の違い
一時帰休と自宅待機の意味の違い
一時帰休と自宅待機の違いを分かりやすく言うと、一時帰休とは労働者に対して用いる言葉、自宅待機とはあらゆる人々に対して用いる言葉という違いです。
一時帰休と自宅待機の使い方の違い
一つ目の一時帰休を使った分かりやすい例としては、「私たちの会社には一時帰休制があります」「一時帰休を実施した場合に助成金が申請できる」「まだ一時帰休の状況が解消していない」「一時帰休に伴う休業手当等が支払われた」などがあります。
二つ目の自宅待機を使った分かりやすい例としては、「私たちは自宅待機を命じられた」「自宅待機中に休業補償はありますか」「県は軽症者には自宅待機要請を出す方針だ」「濃厚接触者の同僚が自宅待機になった」などがあります。
一時帰休と自宅待機の使い分け方
一時帰休と自宅待機という言葉は、どちらも出勤しないことを表し、不況時の雇用調整方法として用いられる言葉です。二つの言葉は同じような表現をしますが、厳密には意味が異なります。
一時帰休とは、会社が業績悪化などの理由により、仕事量を減らすために従業員を一時的に休業させることを意味します。労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」が一時帰休にあたり、雇用主は従業員に対して平均賃金の6割以上の給料を支払う義務があります。
自宅待機とは、何らかの理由で自宅にいなければならないことを意味します。業務の減少のために従業員の出勤を停止させるだけでなく、感染症蔓延を防止するために従業員を家に留まらせたり、児童を登校させない、国民の外出制限させる時にも用いられる言葉です。
つまり、一時帰休とは労働に関して休業させることであり、労働者に対して用いる言葉です。対する自宅待機とは、自宅にいなければならないことであり、あらゆる人々に対して用いる言葉です。一時帰休と自宅待機を比べると、自宅待機の方が広い意味を持ち、汎用性のある言葉と言えるでしょう。
一時帰休と自宅待機の英語表記の違い
一時帰休を英語にすると「temporary layoff」「temporary release from work」となり、例えば上記の「一時帰休制」を英語にすると「temporary layoff system」となります。
一方、自宅待機を英語にすると「staying at home」「waiting at home」となり、例えば上記の「自宅待機を命じられる」を英語にすると「be ordered to stay at home」となります。
一時帰休の意味
一時帰休とは
一時帰休とは、業績悪化などの理由により、労働者を在籍のまま一時的に休業させることを意味しています。
一時帰休の使い方
一時帰休を使った分かりやすい例としては、「従業員の一時帰休に関して助成金があるだろうか」「一時帰休で給与が減って生活が苦しい」「一時帰休の過ごし方についてアンケートがあった」「一時帰休の期間が明示されていない」などがあります。
その他にも、「一時帰休中の外出制限はないはずだ」「業績が低迷する会社は一時帰休に踏み切った」「一時帰休中の定時決定と随時改定の取扱いを確認する」「一時帰休を延長するとの知らせがあった」「一時帰休は給与補償がある」などがあります。
一時帰休という言葉は、企業が景気変動や業績悪化などの理由で、工場等の操業を短縮する場合にを行うにあたり、労働者を在籍のまま一時的に休業させることを表します。「一時」とは短い時間、しばらくの間であり、「帰休」とは、勤労者が勤務を離れ、一定期間休暇をとることを意味します。
一時帰休は、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたるため、休業期間中、使用者は労働者に対して、平均賃金の60%以上の手当を保障しなければなりません。
一時帰休の対義語
一時帰休の対義語・反対語としては、使用者側から雇用契約を解除することを意味する「解雇」、企業などが経費を減らすために従業員を減らすことを意味する「人員整理」、免職や解雇することを意味する「首切り」などがあります。
一時帰休の類語
一時帰休の類語・類義語としては、不況による操業短縮などに際し余剰となった従業員を景気回復後に再雇用する条件で一時解雇することを意味する「レイオフ」、公務員や会社員などが身分を保証されたまま一定期間職務を休むことを意味する「休職」などがあります。
自宅待機の意味
自宅待機とは
自宅待機とは、何らかの理由で自宅にいなければならないことを意味しています。
自宅待機の使い方
自宅待機を使った分かりやすい例としては、「保健所から自宅待機を要請され買い物に困る」「自宅待機でも給与の6割は欲しい」「子供が自宅待機でストレスを抱えている」「軽症者や無症状者が自宅待機を言い渡される」などがあります。
その他にも、「自宅待機から在宅勤務に切り替わりました」「労働基準法では自宅待機は労働時間にあたらない」「自宅待機命令の場合に有給の日数を減らせるのか」「自宅待機命令中の賃金について説明します」などがあります。
自宅待機という言葉は、何らかの理由で自宅にいなければならないことを意味します。感染症の蔓延防止のために出勤や登校を停止させたり、規則に違反した従業員の出勤を停止させたり、業務の減少のために従業員の出勤を停止させる場合等に用いられる言葉です。
自宅待機の対義語
自宅待機の対義語・反対語としては、勤めにでることや勤務先へ出かけることを意味する「出勤」、授業を受けるためや勤務するために学校へ行くことを意味する「登校」、自宅や勤め先などからよそへ出かけることを意味する「外出」などがあります。
自宅待機の類語
自宅待機の類語・類義語としては、施設不足などの理由によって入所できないでいる児童を意味する「待機児童」、いつでも行動できるような態勢で待機することを意味する「スタンバイ」などがあります。
一時帰休の例文
この言葉がよく使われる場面としては、労働者を在籍のまま一時的に休業させることを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「算定基礎届」とは「被保険者報酬月額算定基礎届」のことであり、企業が毎年日本年金機構へ提出する書類の1つです。休業手当を支払った場合、算定基礎届の記載方法が通常と異なります。
自宅待機の例文
この言葉がよく使われる場面としては、何らかの理由で自宅にいなければならないことを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2は、感染症の蔓延を防止のために、出勤や登校を停止させて外出を控えて家にいることを自宅待機と表現しています。例文4や例文5にある自宅待機と賃金支給については、労働基準法や民法の観点では、雇用主の落ち度による休業の場合に休業補償が規定されます。
一時帰休と自宅待機という言葉は、どちらも出勤しないことを意味する言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、労働者を在籍のまま一時的に休業させることを表現したい時は「一時帰休」を、自宅にいなければならないことを表現したい時は「自宅待機」を使うようにしましょう。