【従前】と【従来】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「従前」(読み方:じゅうぜん)と「従来」(読み方:じゅうらい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「従前」と「従来」という言葉は、どちらも過去を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




従前と従来の違い

従前と従来の意味の違い

従前と従来の違いを分かりやすく言うと、従前とは過去の時期を表し、従来とは過去からの継続性を表すという違いです。

従前と従来の使い方の違い

一つ目の従前を使った分かりやすい例としては、「従前通り窓口での届出が必要です」「記載方法は従前と変更ありません」「従前地分筆確認願の申請を行う」「従前に比べると日本人の英語力は格段に上がっています」などがあります。

二つ目の従来を使った分かりやすい例としては、「経営陣は従来の方針を維持することに決めた」「従来型メディアの利用率が低下しています」「従来方式と比べて約50%のコスト低減を実現した」「従来通り直接窓口にお越しください」などがあります。

従前と従来の使い分け方

従前と従来という言葉は、どちらも現在より以前の時や過ぎ去った時を表しますが、意味や使い方には違いがあります。

従前とは、これまで、今より前を意味し、現在から前である過去の時期を表します。「従前通り」とは、状態や方法あるいは方式などが、過去のものと変わらないことを表現する言い回しです。

従来とは、以前から今までを意味し、これまでの経過や過去から続いている方法や状態を指す言葉です。「従来通り」とは、過去の方法や手順をそのまま続けることを表し、継続性を表現する言い回しです。

つまり、従前とは過去の時期を表し、従来とは過去から続いているという継続性を表す言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。

従前と従来の英語表記の違い

従前も従来も英語にすると「past」「past times」「previous」となり、例えば上記の「従前通り」を英語にすると「as in the past」となります。

従前の意味

従前とは、今より前、これまで、以前を意味しています。

従前の読み方

従前の読み方は「じゅうぜん」です。同じ読み方をする熟語に「十善」や「柔然」がありますが、意味が異なるため書き間違いに注意しましょう。

従前の使い方

従前を使った分かりやすい例としては、「従前のままで少しも進歩や発展がありません」「業務委託は従前から行っています」「従前戸籍の確認方法を教えてください」「従前よりビジネスモデルの転換を検討しておりました」などがあります。

その他にも、「学期末まで従前通りの学校に就学する」「従前と変更ございません」「定時決定画面で従前改定月を入力する」「従前地にある建物を換地上に移転する」「従前相当サービスのみ利用します」などがあります。

従前の「従」はある時を起点としてそれからを表し、「前」はある時点よりもまえを表す漢字です。従前とは、現在より前のこと、つまり過去を表す言葉です。今より前や以前を意味し、現在よりも前を表現します。

表現方法は「従前改定月」

従前を用いた日本語には「従前改定月」があります。「従前改定月」とは、社会保険において、現在の標準報酬月額に変更した年月を意味します。社会保険の随時改定や定時決定の際に記入するものです。

従前の対義語

従前の対義語・反対語としては、今からのちを意味する「今後」、これからのちを意味する「向後」(読み方:こうご)などがあります。

従前の類語

従前の類語・類義語としては、過ぎ去った日や以前を意味する「在りし日」、昔から行われていることを意味する「旧来」、過ぎ去った時や以前を意味する「往時」、過去の日々を意味する「昔日」などがあります。

従来の意味

従来とは

従来とは、以前から今まで、これまで、以前を意味しています。

従来の読み方

従来の読み方は「じゅうらい」です。誤って「しょうらい」「じゅうこ」などと読まないようにしましょう。

従来の使い方

従来を使った分かりやすい例としては、「従来のAIはデータ分析が得意でした」「従来のoutlookはいつまで使用できますか」「従来に比べてコストを抑えられます」「介護施設の従来型個室とユニット型個室を比較する」などがあります。

その他にも、「従来通りの施工方法を貫いています」「従来の英語学習は文法中心でした」「DX化によって従来よりも生産性がアップしています」「従来よりも幅を広げてワイドドアにしました」などがあります。

従来とは、これまで、以前よりを意味し、ずっと前から今まで変わりなく何かが続けて行われていることを表す言葉です。「田沼意次は従来悪者とされてきた」のように、副詞的に用いられることもあります。

「従来から」は誤用

従来を用いた誤った表現には「従来から」があります。「従来」という言葉自体に「以前から」という意味が含まれるため、「従来から」は「以前から」と「から」が重なった重言になります。「従来」とのみ表現するか、「以前から」と言い換えるようにしましょう。

従来の対義語

従来の対義語・反対語としては、これから先を意味する「以後」などがあります。

従来の類語

従来の類語・類義語としては、時間的にさかのぼった過去の一時期を意味する「昔」、現在より以前の時や過ぎ去った時を意味する「過去」、過去のある一時期を表す語を意味する「かつて」、以前からや前もってを意味する「かねて」などがあります。

従前の例文

1.従前のビジネスモデルに固執してしまうと、時代の変化に対応できなくなるだろう。
2.従前より日本の技術力には定評があり、国際的に高い競争力を維持しています。
3.従前資産から権利変換された従後資産は、都市再開発法に基づき原始取得されます。
4.令和7年3月以前に申請する場合は、従前の申請書類を提出いただいて差し支えありません。
5.従前より経営戦略について検討していますが、現時点でお話できることはありません。

この言葉がよく使われる場面としては、今よりも前、今まで、以前を表現したい時などが挙げられます。

例文3の「従前資産」とは、再開発地域内の土地や建物などの資産を意味します。

従来の例文

1.新たなシステムを導入することにより、従来よりも効率的に作業することができるようになりました。
2.英語教育に関する従来の大きな課題は、音声学習が足りないことです。
3.従来品は2025年3月の使用期限をもちまして廃番となっております。
4.インターネットの普及によって、従来は読書に充てられていた時間の使い方が変化しました。
5.従来ビジネスホテルは出張目の宿泊場所でしたが、昨今はレジャー目的の利用が増えています。

この言葉がよく使われる場面としては、前から今まで、これまで、以前より、もとよりを表現したい時などが挙げられます。

例文3にある「従来品」とは、以前からある商品や製品を意味し、すでに存在しているものを表しています。

従前と従来という言葉は、どちらも「過去の時点」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、過去の時点を単純に表現したい時は「従前」を、過去からの継続性を表現したい時は「従来」を使うようにしましょう。

言葉の使い方の例文
編集者
株式会社セラーバンク/例文買取センター運営
例文買取センター