似た意味を持つ「失墜」(読み方:しっつい)と「失脚」(読み方:しっきゃく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「失墜」と「失脚」という言葉は、どちらも「権威や地位などを失うこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
失墜と失脚の違い
失墜と失脚の意味の違い
失墜と失脚の違いを分かりやすく言うと、失墜とは権威や信用を失うことを表し、失脚とは地位や立場を失うことを表すという違いです。
失墜と失脚の使い方の違い
一つ目の失墜を使った分かりやすい例としては、「過度の前例主義は法の権威の失墜を招くだろう」「中古車業界の信用を失墜させる事件が発覚した」「教師としての社会的信頼を失墜する」などがあります。
二つ目の失脚を使った分かりやすい例としては、「彼の失脚の経緯については様々な異説がある」「独裁者はいずれ失脚するだろう」「収賄の疑いをかけられた政治家が失脚した」「専務の退任は事実上の失脚であった」などがあります。
失墜と失脚の使い分け方
失墜と失脚という言葉は、どちらも今まで備えていた権威や地位などを失うことを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
失墜とは、権威や名誉あるいは信用などを失うことを意味します。主にビジネスシーンで使用される言葉であり、企業の信用問題に関するニュースなどで使用されています。また、個人の信用や名誉を失うことも表現することもあります。
失脚とは、地位や立場を失うことを意味し、ある程度高い地位や立場にある人に使用される言葉です。権力者が自分自身の失敗であったり、他人やライバルに陥れられたりして、社会的立場を失う場合に用いられます。
つまり、失墜とは権威や信用を失うことであり、失脚とは地位や立場を失うことを意味します。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使い分けるようにしましょう。
失墜と失脚の英語表記の違い
失墜を英語にすると「abasement」「fall」「lose」となり、例えば上記の「法の権威の失墜」を英語にすると「abasement of the law」となります。
一方、失脚を英語にすると「downfall」「slip」「losing one’s position」となり、例えば上記の「彼の失脚の経緯」を英語にすると「the story of his downfall」となります。
失墜の意味
失墜とは
失墜とは、名誉や権威などを失うことを意味しています。
その他にも、「無駄な出費や浪費」「不足すること、間違いのあること」の意味も持っています。
失墜の読み方
失墜の読み方は「しっつい」です。誤って「しつつい」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「信用を失墜させる」「信頼を失墜させる」
「信用を失墜させる」「信頼を失墜させる」などが、失墜を使った一般的な言い回しです。
失墜の使い方
「不祥事は企業の信用を失墜させる」「社会的信用を失墜する行為は禁じられています」「信用失墜行為で英語教師は免職となった」「不倫騒動を起こした映画俳優の人気は失墜した」などの文中で使われている失墜は、「権威などを失うこと」の意味で使われています。
一方、「つまらないものに金を失墜する」「これまで遊びのために失墜してきた」などの文中で使われている失墜は「無駄な出費や浪費」の意味で、「書類に失墜がありましたのでお知らせします」などの文中で使われている失墜は「不足や間違いのあること」の意味で使われています。
失墜とは、上記の例文にあるように複数の意味がありますが、多くは「名誉や権威などを失うこと」の意味で使用されている言葉です。失墜の「失」は訓読みで「うしなう」と読み、今まで備わっていた大事なものをなくすこと、「墜」は「おちる」と読み、上から下へ急に移動することを表します。
「信用失墜行為」の意味
失墜を用いた日本語には「信用失墜行為」があります。信用失墜行為とは、会社の就業規則や公務員法で用いられる言葉であり、組織の信用を傷つけ全体の不名誉となるような行為を意味します。国家公務員法では、「信用失墜行為の禁止」がうたわれています。
失墜の対義語
失墜の対義語・反対語としては、失ったものを取り戻して元の状態にすることを意味する「挽回」などがあります。
失墜の類語
失墜の類語・類義語としては、既得の権利や権力を失うことを意味する「失権」、評価や評判などが下がって悪くなることを意味する「低落」、落ちぶれることを意味する「凋落」、盛んであった評判や権威などが全く衰え廃れることを意味する「地に落ちる」などがあります。
失脚の意味
失脚とは
失脚とは、失敗したり陥れられたりして、地位や立場を失うことを意味しています。
その他にも、「かかった費用、失費」の意味も持っています。
失脚の読み方
失脚の読み方は「しっきゃく」です。誤って「しつきゃく」「しつあし」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「失脚した人」「失脚させる」
「失脚した人」「失脚させる」などが、失脚を使った一般的な言い回しです。
失脚の使い方
「かつてロボットを開発した研究者は失脚した」「議会に現れた彼は失脚しに来たのでしょうか」「英語教師は自身の失脚を想定していた」などの文中で使われている失脚は、「地位や立場を失うこと」の意味で使われています。
一方、「知らない間に失脚負けを起こしていた」「失脚負けとなる金額の目安を教えてください」「多額の失脚を重ねて財政は破綻しました」などの文中で使われている失脚は、「かかった費用や失費」の意味で使われています。
失脚の「失」は今まで持っていたものをなくすこと、「脚」は支えとなったり土台となるものを表す漢字です。失脚とは、物事に失敗したり他人に陥れられたりして、地位を失うことを意味します。また、「失脚負け」のような使い方で、かかった費用の意味も持つ言葉です。
「失脚負け」の意味
失脚を用いた日本語には「失脚負け」があります。「失脚負け」とは、利益を得るために掛けた費用が利益の額を超えてしまい、結果として損失の状態になることを意味します。「費用倒れ」とも言います。
失脚の対義語
失脚の対義語・反対語としては、下の者が上の者に打ち勝って権力を手中にすることを意味する「下剋上」などがあります。
失脚の類語
失脚の類語・類義語としては、社会的地位などが悪くなって惨めな状態になることを意味する「落ちぶれる」、急激に落ちぶれることを意味する「転落」、栄えていたものが衰えることを意味する「没落」、今まで就いていた重要な地位から身をひくことを意味する「退陣」などがあります。
失墜の例文
この言葉がよく使われる場面としては、権威や名誉などを失うこと、無用の出費、不足することを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、失墜の慣用的な言い回しには「失墜させる」「信用失墜」「失墜する」などがあります。「信用失墜」とは、信用や信頼を失うことを意味します。
失脚の例文
この言葉がよく使われる場面としては、それまでの地位や立場を失うこと、費用のかかることを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4にある失脚は、「それまでの地位や立場を失うこと」の意味で用いられています。例文5の失脚は、「費用のかかること」を表しています。
失墜と失脚という言葉は、どちらも「権威や地位などを失うこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、権威や信用を失うことを表現したい時は「失墜」を、地位や立場を失うことを表現したい時は「失脚」を使うようにしましょう。