【勘案】と【考慮】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「勘案」(読み方:かんあん)と「考慮」(読み方:こうりょ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「勘案」と「考慮」という言葉は、どちらもよく考えることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




勘案と考慮の違い

勘案と考慮の意味の違い

勘案と考慮の違いを分かりやすく言うと、勘案とは複数の事柄を考え合わせることを表し、考慮とは複数の事柄だけでなく一つの事柄を考えることも表す違いです。

勘案と考慮の使い方の違い

一つ目の勘案を使った分かりやすい例としては、「諸事情を勘案した上で処遇を決定します」「公的保障等をご勘案の上ご加入ください」「感染状況などを総合的に勘案して判断しました」「内外の状況を勘案し大会を中止します」などがあります。

二つ目の考慮を使った分かりやすい例としては、「個人的な事情を考慮してくれた」「状況を考慮に入れて判断します」「日程変更を考慮していただけると幸いです」「勤務時間を考慮していただきありがとうございます」などがあります。

勘案と考慮の使い分け方

勘案と考慮という言葉は、どちらも物事を明らかにするために考えをめぐらすことを表しますが、厳密な意味や使い方は異なります。

勘案とはあれこれと考え合わせることを意味し、複数の事柄を考え合わせる場合に用いる言葉です。一方、考慮とは物事をいろいろの要素を含めてよく考えることを意味し、複数の事柄を考え合わせる場合にも、一つの事柄を考える場合にも用いられる言葉です。

例えば、今日のことだけを考えることを、「今日のことだけを考慮する」と表現することは出来ます。しかし、「今日のことだけを勘案する」という表現は適切ではありません。ひとつの事柄を考えている場合には、勘案ではなく考慮という言葉を使うようにしましょう。

勘案と考慮の英語表記の違い

勘案も考慮も英語にすると「consideration」となり、例えば上記の「事情を勘案する」を英語にすると「take into consideration the things」となります。

勘案の意味

勘案とは

勘案とは、あれこれと考え合わせることを意味しています。

表現方法は「勘案される」「勘案する」「リスクを勘案」

「勘案される」「勘案する」「リスクを勘案」などが、勘案を使った一般的な言い回しです。

勘案の使い方

勘案を使った分かりやすい例としては、「もろもろ勘案して良い方法を探ろう」「各家庭の事情が勘案されるべきでしょう」「株式市場の動向と株価の推移等を総合的に勘案する」「郵便事情などを勘案して郵送してください」などがあります。

その他にも、「諸事情ご勘案くださいますようお願い申し上げます」「支出状況等を勘案して支払い計画を承認する」「世界各国の情勢を勘案する」「政府の方針や当社の状況等を勘案し対応していきます」などがあります。

勘案という言葉の「勘」は考え合わせることや、つき合わせて調べることを表し、「案」は考えることをを表します。勘案とは、種々の事情や物事を考え合わせることや、考えをめぐらすことを意味する言葉です。

勘案という言葉は、日常会話ではあまり使われず、ビジネスシーンや改まった場面で使われる表現です。複数の事柄を踏まえたうえでよく考え、判断したり結論を導く時に用いられています。

勘案の尊敬語はご勘案

相手に勘案することを求める時に、接頭語の「ご」を付けて「ご勘案」と尊敬語で用いられることが多くあります。

勘案の対義語

勘案の対義語・反対語としては、考えの浅いことを意味する「浅慮」、 考えがあさはかなことを意味する「短慮」、その場ですぐに判断や決断することを意味する「即断」、早まった判断をすることを意味する「速断」などがあります。

勘案の類語

勘案の類語・類義語としては、よく考えることや思案を意味する「勘考」、物事を明らかにするためによく調べて考えをめぐらすことを意味する「考察」、いろいろなことを考えに入れて念入りに検討することを意味する「熟慮」、よくよく思案することを意味する「塾案」などがあります。

考慮の意味

考慮とは

考慮とは、物事をいろいろの要素を含めてよく考えることを意味しています。

表現方法は「考慮する」「考慮に入れる」「考慮していただき」

「考慮する」「考慮に入れる」「考慮していただき」などが、考慮を使った一般的な言い回しです。

考慮の使い方

考慮を使った分かりやすい例としては、「移動時間を考慮してスケジュールをたてる」「投資をする際は将来性を考慮に入れる」「成長可能性を考慮すれば今の水準は安い」「その件は考慮に入れてある」などがあります。

その他にも、「ご考慮していただきありがとうございます」「家庭の事情を考慮し配慮する必要があります」「社員の健康を考慮するべきです」「予算を考慮に入れていないのか」「深く考慮する人があまりにも少ない」などがあります。

考慮するという言葉の「考」は思いめぐらすことや、考えることを表し、「慮」はあれこれと思いめぐらすことを表します。考慮とは、物事を明らかにするために、いろいろの要素を含めてよく考えることを意味する言葉です。

「考慮集合」の意味

考慮という言葉を用いた日本語には「考慮集合」があります。考慮集合とはマーケティング用語であり、購買検討の対象となる製品の集合のことを意味します。買ってもいいと考慮する物の集まりであり、一般にブランド認知が高いほど、考慮集合に含まれる可能性が高くなります。

考慮の対義語

考慮の対義語・反対語としては、結果に対する深い考えのないことを意味する「無謀」、是非や結果を考えずにむやみに行動することを意味する「無鉄砲」、将来のことを考えずに行動することを意味する「向こう見ず」などがあります。

考慮の類語

考慮の類語・類義語としては、論理的に筋道を立てて考えることや思惟を意味する「思索」、念を入れてよく考えることを意味する「熟考」、いろいろと思いをめぐらし考えることを意味する「思量」、考えをめぐらすことを意味する「料簡」などがあります。

勘案の例文

1.会議では一方的な主張ではなく、諸般の事情を勘案して意見を言うべきです。
2.給与の算定について、職務内容や専門スキルなどがどのように勘案されるのか、具体的に説明して下さい。
3.経済環境や業界の動向の変化など、リスクを勘案した予算策定と資産管理が大切です。
4.取引先から、ライセンス契約の継続についてご勘案くださいとのメールが届いた。
5.自分の興味や将来やりたいことだけでなく、もちろん偏差値を勘案して受験校を決めなくてはいけません。
6.彼の業績や経歴を勘案するととっくに昇進していてもおかしくないのに、なぜ今でも平社員のままなのか、わたしは何かあるに違いないと思っていた。
7.様々な事情を勘案して処分を決定すると言っていたが、キャリア組はほとんど無傷なのに対しノンキャリア組は即刻クビなのだからアンフェアではないか。
8.例のプロジェクトについては経営状況を勘案してということになったが、ようするに今はそのプロジェクトを進めるのは無理だということを突きつけられた形だ。
9.経済学者たちは自分たちの研究の理論の整合性ばかりでなく、現状の経済状況を勘案してものを考えなければ、事態を見誤ることになるだろう。
10.新校舎の設計については建築史的意義のある旧校舎の特徴をしっかり残してほしいというまわりの意見も勘案して結論が下されるべきだろう。

この言葉がよく使われる場面としては、種々の事情や物事を考え合わせることを表現したい時などが挙げられます。

例文1にある「諸般の事情を勘案する」とは、いろいろの事柄の理由や状態などを考え合わせることを表します。例文5にある「勘案して~する」という表現は多用されており、勘案という行為に基づいて次の事態が起こることを表します。「勘案したうえで~する」とも言います。

考慮の例文

1.旅行のスケジュールを立てる時には、天気の変化を考慮に入れる必要があります。
2.幼い子どもの意見は考慮の余地がないほど滅茶苦茶なものが多いけど、時には一考に値するものもあるよ。
3.メリットとデメリットをよく調べたうえで、ワクチン接種を考慮する。
4.介護事業を考えるお役所の皆さんには、様々な家庭の事情があることを考慮していただきたいのです。
5.弊社の事情で申し訳ありませんが、何卒ご考慮くださいますようお願い申し上げます。
6.あの会社では社員の心身の健康を考慮しているとは到底思えず、ただ使い捨ての道具のような扱いを受けていると言っても過言ではなかった。
7.君らは一方的に旅行の日取りは土曜日がいいと主張しているが、わたしたちは平日休暇なのだから、こちらの事情も考慮してほしいのだと主張した。
8.ハイスペックのパソコンを自作するときはもちろん予算も考慮しなくてはならないから、それを両立させるのが難しいのだが、それをあれこれ考えるのが醍醐味なのだ。
9.最近のノートパソコンは、昔とは違って本格的な持ち運びも考慮されているので、とても薄くて軽くて、しかもバッテリーもよく持つので便利になったものだよ。
10.日本では何かと外国の研究が引用されることが多いのだが、外国と日本との差異を考慮にいれないと本当に有用なものにはならないと思う。

この言葉がよく使われる場面としては、物事の種々の要素をよく考え合わせること、考えをめぐらすことを表現したい時などが挙げられます。

例文1にある「考慮に入れる」とは、ある事柄や要素を含めて考える必要があるさまを表します。例文2の「考慮の余地がない」とは、考えられないさまや、考えても意味がないさまを表します。

勘案と考慮という言葉はどちらも物事をよく考えることを表します。複数の物事を考え合わせることを表現したい時は「勘案」と「考慮」のどちらを使っても構いませんが、一つのことを考えめぐらすことを表現したい時は「考慮」を使うようにしましょう。

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