似た意味を持つ「協議」(読み方:きょうぎ)と「審議」(読み方:しんぎ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「協議」と「審議」という言葉は、どちらも「議論すること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
協議と審議の違い
協議と審議の意味の違い
協議と審議の違いを分かりやすく言うと、協議とは議論のうえで方向性を決めること、審議とは議論のうえで結論を出すことという違いです。
協議と審議の使い方の違い
一つ目の協議を使った分かりやすい例としては、「検討委員会における協議事項を整理する」「協議会において検討していく事項を確認した」「協議離婚の進め方を弁護士にたずねる」「財産分与協議書の様式をダウンロードする」などがあります。
二つ目の審議を使った分かりやすい例としては、「これまでの審議の経緯をまとめます」「小学校の英語教育について審議する」「法律案は審議の過程で修正されることがあります」「十分に審議されたうえで議決します」などがあります。
協議と審議の使い分け方
協議と審議という言葉は、どちらも複数の人々が互いの意見を述べて論じ合うことを表し、ビジネスシーンで使われていますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
協議とは、ある物事について互いに意見を出し合ったり、問題解決のために話し合うことを意味します。話し合った上で、何かしらの方向性を決めるという意味合いを持つ言葉です。「協議事項」とは、必ずしも結論を出す必要はありませんが、話し合って一定の方向性を出すべき事柄を表します。
審議とは、ある物事について詳しく検討して、その可否や良し悪しなどを決めることを意味します。何らかの結論を出すというニュアンスを持つ言葉であり、必ずしも結論が出ない「協議」と違いは、この点にあります。
また、似た言葉に「討議」という言葉がありますが、討議は自由に意見を出し合うことを意味します。そのため、話し合って結論を出すまでの一連の流れとしては、「討議」「協議」「審議」の順序で行われることが一般的です。
協議と審議の英語表記の違い
協議を英語にすると「consultation」「negotiation」となり、例えば上記の「協議事項」を英語にすると「a subject of consultation」となります。
一方、審議を英語にすると「discussion」「review」「deliberation」となり、例えば上記の「審議の経緯」を英語にすると「history of discussions」となります。
協議の意味
協議とは
協議とは、集まって相談することを意味しています。
表現方法は「協議する」「協議を重ねる」「協議を行う」
「協議する」「協議を重ねる」「協議を行う」などが、協議を使った一般的な言い回しです。
協議の使い方
協議を使った分かりやすい例としては、「協議会を設置し是正に向けた議論を始める」「教職員の間でパソコンの使い方を協議しました」「DVなどの支援措置について協議する」「あとで問題が起こらないよう遺産分割協議書を作成する」などがあります。
その他にも、「離婚の約9割が協議離婚とは知らなかった」「友人から協議離婚の証人を頼まれました」「社会福祉協議会に家族の介護について相談する」「英語教育を推進する協議会を発足する」などがあります。
協議の「協」は、力を合わせることや、話し合って物事をまとめることを表します。意見を出して話し合うことを表す「議」と組み合わさり、協議とは、複数の人々が一緒に集まって相談することを意味する言葉です。「協議する」「協議中」「六か国協議」のような使い方をします。
「協議離婚」の意味
協議を用いた日本語には「協議離婚」があります。協議離婚とは、夫婦の合意によって婚姻を解消することです。離婚する理由や動機に何ら制限はなく、市区町村役場に離婚届を出すことで成立します。対する言葉には「裁判離婚」があり、他方を裁判所に訴えて離婚を成立させる手続きを意味します。
協議の対義語
協議の対義語・反対語としては、議案の採否を会議構成員の賛否をとって決定することを意味する「採決」、物事の正や不正を判定することを意味する「裁判」などがあります。
協議の類語
協議の類語・類義語としては、ある事柄について意見を述べ合うことを意味する「討議」、意見を出し合って相談することを意味する「評議」、会って話し合うことを意味する「会談」などがあります。
審議の意味
審議とは
審議とは、ある物事について詳しく調査・検討し、そのものの良し悪しなどを決めることを意味しています。
表現方法は「審議にかける」「審議する」「審議会に諮る」
「審議にかける」「審議する」「審議会に諮る」などが、審議を使った一般的な言い回しです。
審議の使い方
審議を使った分かりやすい例としては、「賃上げについては継続的に審議します」「都市計画に関する審議事項をまとめる」「不信任決議案を審議する予定です」「議案の審議状況が知りたいです」「議事では3議案を審議し、承認しました」などがあります。
その他にも、「その法案は審議中ですが、可決される見込みです」「官房審議官の年収はどれぐらいだろう」「叔父は中央教育審議会のメンバーです」「審議会等の整理合理化に関する基本的計画を定める」などがあります。
審議の「審」は、物事を詳しく調べて明らかにすることや、物事の良し悪しをはっきりと見分けることを表す漢字です。話し合いを表す「議」と結び付き、審議とは、詳しく調べて検討し、その可否を討議すること、また、意見を出し合って審査することを意味します。
「審議官」の意味
審議を用いた日本語には「審議官」があります。審議官とは、官僚の役職の一つであり、省庁や部局の事務に関する重要事項の企画立案に参画し、関係事務を総括整理する国家公務員です。総務審議官や大臣官房審議官などの職があります。
審議の対義語
審議の対義語・反対語としては、自分ひとりで物事を決断することを意味する「独断」、上に立つ人が思うままに事を処理することを意味する「専制」などがあります。
審議の類語
審議の類語・類義語としては、二人以上の者が集まって相談することを意味する「合議」、計画し相談することを意味する「謀議」、会議である事柄を決定することを意味する「決議」などがあります。
協議の例文
この言葉がよく使われる場面としては、寄り合って相談することを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「遺産分割協議」とは、相続が発生した際に、故人の財産について法定相続人全員でどう分割するか話し合うことです。遺言の内容や、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることも可能です。
審議の例文
この言葉がよく使われる場面としては、詳しく調べて検討し、その可否を討議することを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「審議会」とは、国や地方自治体に付属し、特定の事項につき審査し評議する合議制の機関のことです。
協議と審議という言葉は、どちらも「議論すること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、議論のうえで方向性を決めることを表現したい時は「協議」を、議論のうえで結論を出すことを表現したい時は「審議」を使うようにしましょう。