似た意味を持つ「疎遠」(読み方:そえん)と「絶縁」(読み方:ぜつえん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「疎遠」と「絶縁」という言葉は、どちらも人間関係が途絶えるさまを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
疎遠と絶縁の違い
疎遠と絶縁の意味の違い
疎遠と絶縁の違いを分かりやすく言うと、疎遠とは意図せずに交流がなくなること、絶縁とは意図的に交流しないことという違いです。
疎遠と絶縁の使い方の違い
一つ目の疎遠を使った分かりやすい例としては、「いつの間にか実の姉と疎遠になる」「このまま疎遠になるのは寂しい」「疎遠になった女性に勇気を出して連絡する」「疎遠になった友達の夢を見た」などがあります。
二つ目の絶縁を使った分かりやすい例としては、「怒り心頭の私は絶縁状を書くことにした」「実の親と絶縁状態だ」「絶縁抵抗計の使い方が分からない」「絶縁測定の正しい測定方法を習った」「絶縁シートを購入する」などがあります。
疎遠と絶縁の使い分け方
疎遠と絶縁という言葉は、どちらも人と人の関係が途絶えている状態を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
疎遠とは音信や訪問が途絶えていることを意味し、故意に避けているわけではなく環境の変化などで交流が途絶えることを表します。一方、絶縁とは縁を絶ち切ることを意味し、価値観の相違や嫌悪感から意識的に関係を断ち切ることを表します。
つまり、疎遠は意図せずに交流がなくなること、絶縁とは意図的に交流しないことなのです。
さらに絶縁には電気工学の用語として、電気や熱の伝導を絶つことの意味も持っています。上記の例文の「絶縁抵抗計」「絶縁測定」「絶縁シート」はこの意味で使われています。
これらが、疎遠と絶縁という言葉の明確な違いになります。
疎遠と絶縁の英語表記の違い
疎遠を英語にすると「alienation」「estrangement」となり、例えば上記の「疎遠になる」を英語にすると「to become estranged」となります。
一方、絶縁を英語にすると「 break off relations」「insulation」「isolation」となり、例えば上記の「絶縁状」を英語にすると「a letter breaking off one’s relationship」となります。
疎遠の意味
疎遠とは
疎遠とは、遠ざかって関係が薄いこと、音信や訪問が久しく途絶えていることを意味しています。
表現方法は「疎遠になる」「疎遠になった」「疎遠な関係」
「疎遠になる」「疎遠になった」「疎遠な関係」などが、疎遠を使った一般的な言い回しです。
疎遠の使い方
疎遠を使った分かりやすい例としては、「疎遠になる友人が増えてきた」「迷惑な彼とは疎遠にしたいのにしつこい」「お友達と何故か疎遠になった」「疎遠になった友達のスピリチュアルな意味を考える」などがあります。
その他にも、「疎遠になった友達に連絡してみよう」「疎遠になる友人には共通する特徴がある」「好きな人と疎遠になってしまった」「疎遠であった親戚の訃報が届く」「疎遠の孫にも相続権はあるのだろうか」などがあります。
疎遠という言葉の「疎」は人と人との関係にすきまがあることや、親しくしないことを表し、「遠」とは空間的や時間的に隔たりがあることや、遠ざけることを表します。疎遠とは遠ざかって関係が薄いことや、行き来や文通が絶えて親密さに欠けることを意味する言葉です。
ライフステージが変わって繋がりが無くなったり、価値観が変わって自然と連絡を取らなくなったりした場合に、疎遠という言葉が用いられています。
「疎遠感」は「疎外感」の誤り
疎遠の誤った言い回しには「疎遠感」があります。正しくは「疎外感」であり、自分が仲間外れにされているような感覚や、周囲から遠ざけられているように思うことを意味します。
疎遠の対義語
疎遠の対義語・反対語としては、互いの交際の深いことや極めて仲のよいことを意味する「親密」、親しく交際していることや仲よく付き合うことを意味する「懇意」、親密な関係にあることを意味する「蜜月」、自分と深い関係にあることを意味する「身近」などがあります。
疎遠の類語
疎遠の類語・類義語としては、きわめて関係が薄いことを意味する「縁遠い」、電話や手紙などによる連絡が何もないことを意味する「音信不通」、長らく訪ねなかったり便りをしないままでいたりすることを意味する「ご無沙汰」などがあります。
絶縁の意味
絶縁とは
絶縁とは、関係を絶つこと、縁を絶ち切ることを意味しています。
その他にも、導体の間に絶縁体を入れて、電気や熱の伝導を絶つことの意味も持っています。
表現方法は「絶縁関係」「絶縁する」「絶縁された」
「絶縁関係」「絶縁する」「絶縁された」などが、絶縁を使った一般的な言い回しです。
絶縁の使い方
「家族と絶縁したい」「長い間、兄弟とは絶縁状態にある」「法律的に親と絶縁する方法はないのか」「絶縁された親のその後を知りたい」「絶縁された理由がわからない」などの文中で使われている絶縁は、「関係を絶つこと、縁を絶ち切ること」の意味で使われています。
一方、「絶縁テープを使用する」「絶縁破壊の現象が起きる」「絶縁抵抗測定方法を確認する」「新しい絶縁抵抗計です」「絶縁抵抗が基準値を上回る」「絶縁耐力試験を実施する」などの文中で使われている絶縁は、「絶縁体を入れて電気や熱の伝導を絶つこと」の意味で使われています。
絶縁という言葉は、上記の例文にあるように、縁を断ち切るという人間関係の意味と、電気や熱の伝導を絶つことという電気関連の意味があります。絶縁の「絶」とは途中でたち切ること、連続しているものや関係が切れることを表し、「縁」とは物事のつながりや関わりを表します。
「絶縁破壊」の意味
絶縁という言葉を用いた日本語には「絶縁破壊」があります。電気絶縁体に加わる電場の強さがある値を超えると、その物質がほとんど不連続的に絶縁性を失って、大きい電流を通すようになる現象のことです。また、この電圧を絶縁破壊電圧と言います。
絶縁の対義語
絶縁の対義語・反対語としては、関係ができることや特に親類になることを意味する「結縁」、友人として交際することを意味する「交友」、熱や電気が物体内を移動する現象を意味する「伝導」などがあります。
絶縁の類語
絶縁の類語・類義語としては、夫婦や養親子の関係を絶つことを意味する「離縁」、親子や兄弟など肉親との関係を絶つことを意味する「義絶」、親が子との縁を切ることを意味する「勘当」、交際を絶つことを意味する「絶交」、交際をやめることを意味する「断交」などがあります。
疎遠の例文
この言葉がよく使われる場面としては、行き来や文通が絶えて、親密さに欠けることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にあるように、疎遠とはネガティブな理由はないのに自然に縁遠くなることを表すことが多く、何かのきっかけで交友が再開することがあります。例文5の「疎遠の家族」とは、はっきりとした意識や理由がないけれども、なんとなく行き来や連絡が途絶えている家族を意味します。
絶縁の例文
この言葉がよく使われる場面としては、関係を断ち切ること、電流や熱などが流れないようにすることを表現したい時などが挙げられます。
例文1から3にある絶縁は、関係を断ち切ることの意味で用いられています。例文4や例文5にある絶縁は、電流や熱などが流れないようにすることを意味します。
例文4にある「絶縁体」は電気をきわめて伝えにくい物質のことです。例文5の「絶縁抵抗」とは、絶縁された導体が示す電気抵抗を意味します。絶縁状態の良否を示すものです。
疎遠と絶縁という言葉は、どちらも人間関係が途絶える状態を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、意図せずに交流がなくなることを表現したい時は「疎遠」を、意図的に交流しないことを表現したい時は「絶縁」を使うようにしましょう。