同じ「たのむ」という読み方の「恃む」と「頼む」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「恃む」と「頼む」という言葉は同義語で、どちらも「他人にお願いすること」という同じ意味を持ちますが、それぞれの言葉の使い方には少し違いがあります。
「恃む」と「頼む」の違い
「恃む」と「頼む」の意味の違い
「恃む」と「頼む」の違いを分かりやすく言うと、「恃む」は常用漢字表に載っていない、「頼む」は常用漢字表に載っているという違いです。
「恃む」は常用外漢字
「恃む」の「恃」が常用外漢字であるため、代用字として、常用漢字の「頼」を用いた「頼む」が使われるようになりました。
「頼む」は公用文で使用可能
「頼む」は文化庁が定める常用漢字表に記載されているため法令や新聞などで使用できますが、「恃む」は常用漢字表に記載されていないため法令や新聞などで使用できません。そのため、公的な書類などに記載する際には「頼む」を使う方が良いでしょう。
また、「恃む」は「頼む」と全く同じ意味の言葉であり、どちらの漢字を使っても間違いではないことを覚えておきましょう。使いやすい方の漢字を使って良いものなので、好みに合わせて使い分けることが可能になります。
しかし、現代では、希望通りのことをしてくれるように他人に願い求める場合は「頼む」を使うことが多く、誰かに期待したり、あてにする場合は「恃む」が良く使われています。
「恃む」と「頼む」の英語表記の違い
「恃む」も「頼む」も英語にすると「ask」「order」「call」「request」となり、例えば「来週までに終わらせてもらうように頼んだ」を英語にすると「I requested they finish by next week」となります。
「恃む」の意味
「恃む」とは
「恃む」とは、助けとして期待することを意味しています。
「恃む」の使い方
「恃む」を使った分かりやすい例としては、「僥倖を恃むしかない」「自ら恃むところ」「友人に用事を恃んだ」「あとは恃みました」「数に恃んでばかりいると反感を買う」「案内を恃みます」「彼に恃んでばかりでは成長しない」などがあります。
「恃む」は「頼む」と同じ意味を持つ言葉ですが、助けとして期待する場合や、あてにする場合によく使われています。
「恃むところにある者は、恃むもののために滅びる」の意味
「恃む」を使った有名な言葉に、「恃むところにある者は、恃むもののために滅びる」があります。これは、戦国時代の武将「織田信長」が言った言葉で、何かに頼る者は、その頼ったものの為にかえって身を滅ぼすことになるという意味になります。
「人を恃むは自ら恃むに如かず」の意味
その他にも、「人を恃むは自ら恃むに如かず」(読み方:ひとをたのむはみずからたのむにしかず)があります。この言葉は、他人は当てにならないから、人に頼るよりも自分自身を頼りにするのが確実という意味になっています。
「恃む」の類語
「恃む」の類語・類義語としては、他人に物を与えてくれるように求めることを意味する「請う」(読み方:こう)、他に頼って存在することを意味する「依存」などがあります。
「恃む」の恃の字を使った別の言葉としては、依頼することを意味する「恃み」、自分の能力を優れたものとして誇る気持ちのことを意味する「矜恃」(読み方:きょうじ)、自分自身を頼みとすることを意味する「自恃」(読み方:じじ)などがあります。
「頼む」の意味
「頼む」とは
「頼む」とは、希望通りのことをしてくれるように他人に願い求めることを意味しています。
「頼む」の使い方
「頼む」を使った分かりやすい例としては、「他人に頼み事することができない」「頼むぞ山田ここでホームランを打ってくれ」「頼むから私のことはほっといて」「お腹が空いたので出前を頼んだ」「今日話したことは口外しないように頼みます」「至急応援を頼む」などがあります。
「頼む」は「恃む」と同じ意味を持つ言葉ですが、希望通りのことをしてくれるように他人に願い求めたり、依頼する場合によく使われています。また、「頼む」は様々な場面で使えるので、ビジネスシーンでも日常生活でも頻繁に登場する言葉です。
「〇〇を頼む」「〇〇を頼みます」「〇〇を頼んだ」などが、「頼む」を使った一般的な表現方法になります。
「恃む」の「恃」という字が常用漢字ではないため、代用字として常用漢字である「頼」が使われたことで「頼む」という言葉が生まれました。「恃む」と「頼む」は意味が同じなため、どちらの漢字で表記しても間違いではありません。
この代用字というのは、他の単語でも使用されるものです。例えば、本来は「下剋上」であるところを「下克上」と表記するのが代用字です。本来の字が難しい字面であったり、常用漢字ではない場合に代用字が使われます。
前述したように、どちらの漢字で表記をしても同じ意味になるので、どちらでも好きな表記で書き記して良いものであると覚えておきましょう。
しかし、公的な書類などに記載する際には、常用漢字である「頼」を使って「頼む」とする方が良いでしょう。「恃む」という漢字の方が、最初からあった表記であるというだけで、どちらの字でも意味は全く同じです。
「頼む」の類語
「頼む」の類語・類義語としては、人に用件を頼むことを意味する「依頼」、人に依頼する時につける条件のことを意味する「注文」、必要なこととして相手に強く求めることを意味する「要求」、必要だとして強く願い求めることを意味する「要請」などがあります。
「頼む」の頼の字を使った別の言葉としては、信頼できることを意味する「頼もしい」、信じて頼りにすることを意味する「信頼」、頼みにするところがないことを意味する「無頼」、頼みにすることを意味する「聊頼」(読み方:りょうらい)などがあります。
「恃む」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、助けとして期待することを表現したい時などが挙げられます。
「恃む」の「恃」という字は常用漢字ではないので、日常生活でもあまり使用されません。そのため、「恃」という漢字に馴染みがない人がほとんどなはずです。「恃」は難しい漢字ですが、力にして頼りとする意味を持ち、音読みで「ジ」と読むと覚えておきましょう。
「頼む」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、希望通りのことをしてくれるように他人に願い求めることを表現したい時などが挙げられます。
「恃む」の「恃」という字が常用漢字ではないため、代用字の「頼」が使われるようになって出来たのが「頼む」という言葉です。意味合いとしては全く同じものであり、どちらの漢字を使っても問題ありません。
「恃む」と「頼む」どちらを使うか迷った際は、公的な書類などに記載する場合は常用漢字である「頼」を使った「頼む」とする方が良いでしょう。その他の場合には、個人の好みによって好きな方の表記を使うことができます。