似た意味を持つ「占領」(読み方:せんりょう)と「占拠」(読み方:せんきょ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「占領」と「占拠」という言葉は、どちらも「ある場所を自分のものにすること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
占領と占拠の違い
占領と占拠の意味の違い
占領と占拠の違いを分かりやすく言うと、占拠よりも占領の方が、支配力があり規模が大きいことを表すという違いです。
占領と占拠の使い方の違い
一つ目の占領を使った分かりやすい例としては、「人々は占領軍兵士たちの暴力に耐えていた」「占領下の日本に関連する文献を集めています」「母はテレビがあるリビングを占領しています」などがあります。
二つ目の占拠を使った分かりやすい例としては、「在宅勤務で夫が寝室を占拠している」「過度なスペースの占拠はおやめください」「不法移民が大使館を一時占拠する事件が発生しました」「武装集団が首相官邸を占拠した」などがあります。
占領と占拠の使い分け方
占領と占拠という言葉は、どちらも特定の建物や場所を自分のものにすることを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
占領とは、「リビングを占領する」のような使い方で、ある場所を独り占めすることを意味します。また、「占領軍」「占領下の日本」のような使い方で、武力で他国を制圧して支配下に置くことを表す言葉です。国などの大きな規模で支配する場合に使用されることが多い言葉です。
占拠とは、「寝室を占拠している」のような使い方で、自分のものにして他人を寄せ付けないことを意味します。また、「武装集団が首相官邸を占拠した」のような使い方で、武力を用いて建物に立てこもることもします。比較的、規模の小さな場所について使用される言葉です。
二つの言葉を比べると、占拠よりも占領の方が、ある場所や建物を支配する力が強いことを表し、支配する対象の規模が大きいものに使用される言葉だと言えるでしょう。
占領と占拠の英語表記の違い
占領も占拠も英語にすると「occupation」「capture」となり、例えば上記の「占領軍」を英語にすると「an army of occupation」となります。
占領の意味
占領とは
占領とは、一定の場所を独り占めすることを意味しています。
その他にも、「他国の領土を武力によって自国の支配下に置くこと」の意味も持っています。
占領の読み方
占領の読み方は「せんりょう」です。誤って「しりょう」「せんよう」などと読まないようにしましょう。
占領の使い方
「子供部屋がおもちゃで占領される」「毎朝、娘が洗面所を占領しています」「有名デパートがニューヨークの一区画を占領する」などの文中で使われている占領は、「一定の場所を独り占めすること」の意味で使われています。
一方、「占領政策の基本方針は民主化でした」「占領期は日本で英語が流行した時代の一つです」などの文中で使われている占領は、「他国の領土を武力によって自国の支配下に置くこと」の意味で使われています。
占領とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を捉える必要があります。占領の「占」は場所や位置などを自分のものとすること、「領」は自分のものとして所有して支配する場所を表す漢字です。
表現方法は「対日占領政策」
占領を用いた日本語には「対日占領政策」があります。対日占領政策とは、第二次世界大戦で敗北した日本を占領管理するうえでGHQ(連合国最高司令官総司令部)が実施した政策のことです。対日占領政策の特徴は「非軍事化・民主化」政策と言われています。
占領の対義語
占領の対義語・反対語としては、軍隊などが陣地や拠点を引き払って退くことを意味する「撤退」などがあります。
占領の類語
占領の類語・類義語としては、武力で敵を負かし支配下におくことを意味する「征服」、攻撃して奪い取ることや攻め落とすことを意味する「攻略」、軍艦などが他国の船舶などをその支配下におくことを意味する「拿捕」、領地として所有することを意味する「領する」などがあります。
占拠の意味
占拠とは
占拠とは、ある場所を占有して他人を寄せつけないことを意味しています。
その他にも、「占領すること」の意味も持っています。
占拠の読み方
占拠の読み方は「せんきょ」です。同じ読み方をする熟語に「選挙」や「船渠」がありますが、意味が異なるため書き間違いに注意しましょう。
占拠の使い方
「視聴占拠率は人気度を示す指標である」「不法占拠であっても時効取得が成立することがあります」「占拠性病変をエコーで確認しました」などの文中で使われている占拠は、「ある場所を占有して他人を寄せつけないこと」の意味で使われています。
一方、「軍を率いて占拠に及んだ」「武装集団がテレビ局スタジオを占拠する事件が起きた」「武力によって不法占拠し領有権を主張している」などの文中で使われている占拠は、「占領すること」の意味で使われています。
占拠とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を判断する必要があります。占拠の「拠」は訓読みで「よる」「よりどころ」と読み、何かをするための足場とするところを表します。
表現方法は「不法占拠」
上記の例文にある「不法占拠」とは、法的な権利がない状態で土地や建物を占拠していることの意味で使用されている言葉です。不法占拠は法的用語ではありませんが、占有権限がないのに物件を占有することを表し、そのような者を「不法占拠者」と呼んでいます。
占拠の対義語
占拠の対義語・反対語としては、軍隊を引きあげることを意味する「撤収」などがあります。
占拠の類語
占拠の類語・類義語としては、自分の所有にすることを意味する「占有」、軍隊が他国の領土内に進軍しとどまることを意味する「進駐」、暴力や脅迫などで強引に奪い取ることを意味する「強奪」、あるものや場所あるいは地位などを自分のものとするを意味する「占める」などがあります。
占領の例文
この言葉がよく使われる場面としては、一定の場所を占有すること、軍隊が敵国の領土に入って軍事的支配下におくことを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある占領は、一定の場所を占有することの意味で用いられています。例文2から例文5の占領は、軍隊が敵国の領土に入って軍事的支配下におくことの意味で使われています。
占拠の例文
この言葉がよく使われる場面としては、一定の場所にたてこもり他人が入るのを拒むこと、他国を武力で圧伏してその領土を支配下に置くことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある占拠は、一定の場所にたてこもり他人が入るのを拒むことの意味で用いられています。例文4や例文5にある占拠は、他国を武力で圧伏してその領土を支配下に置くことを意味しています。
占領と占拠という言葉は、どちらも「ある場所や建物を占有すること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、より支配力があり規模が大きいさまを表現したい時は「占領」を使うようにしましょう。