似た意味を持つ「発給」(読み方:はっきゅう)と「発行」(読み方:はっこう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「発給」と「発行」という言葉は、どちらも書類などを与えることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
発給と発行の違い
発給と発行の意味の違い
発給と発行の違いを分かりやすく言うと、発給とは公的機関が発行すること、発行とは書類などを与えることという違いです。
発給と発行の使い方の違い
一つ目の発給を使った分かりやすい例としては、「新しいパスポートの発給を受ける予定だ」「ビザの発給を急いでもらう」「有効期間は発給日の翌日から起算します」「一般旅券発給申請書をダウンロードする」などがあります。
二つ目の発行を使った分かりやすい例としては、「取引先に請求書を発行する」「聖書は世界の発行部数ランキングに入ります」「発行済株式総数を登記する必要がある」「公報発行予定表を見せて下さい」などがあります。
発給と発行の使い分け方
発給と発行という言葉は、どちらも書類などを作成して出すことを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
発給とは、「パスポートを発給する」のように、役所などの公的機関が一定の手続きをした者に対して、書類などを作成して与える時に用いられる言葉です。一方、発行とは、「請求書を発行する」「聖書の発行部数」のように、役所や公的機関に関わらず、書類などを作成して与えることを表します。
つまり、発給とは役所が書類などを発行することであり、発行している機関を限定する言葉なのです。発給と発行を比べると、発行の方が広い意味を持ち、幅広く使われる言葉だと言えるでしょう。
発給と発行の英語表記の違い
発給も発行も英語にすると「issue」となり、例えば上記の「新しいパスポートの発給」を英語にすると「a new passport issue」となります。
発給の意味
発給とは
発給とは、役所が書類などを発行して与えることを意味しています。
表現方法は「発給する」「旅券の発給」「ビザの発給」
「発給する」「旅券の発給」「ビザの発給」などが、発給を使った一般的な言い回しです。
発給の使い方
発給を使った分かりやすい例としては、「ビザの有効期間は発給日から3か月です」「発給申請者は原則として本人です」「輸出証明書等発給申請を行います」「北条氏の発給文書を研究しています」などがあります。
その他にも、「パスポートを発給する」「旅券の発給手数料はいくらですか」「原産地証明書の発給日を記入してください」「パーキングチケット発給設備のある駐車場です」「チケット発給設備で料金を払う」などがあります。
発給という言葉の「発」は外部や世間に向けて出すことを表し、「給」は金品などを下し与えることを表します。発給とは、発行して給付することを意味する言葉であり、主に役所が書類などを発行して与えることを表します。
「パーキング・チケット発給設備」の意味
発給という言葉を用いた言葉には、「パーキング・チケット発給設備」があります。時間制限駐車区間内に設置されたパーキング・チケットを発給する機械のことであり、チケットには発給を受けた日時や駐車場名などが自動的に印字されます。
発給の類語
発給の類語・類義語としては、役所や機関などが手続きをふんだ人に金銭を供与したり書類などを発行したりすることを意味する「交付」、金品を支給・交付することを意味する「給付」、金銭・物品を給与・給付として払い渡すことを意味する「支給」などがあります。
発行の意味
発行とは
発行とは、図書・新聞・雑誌などを印刷して、世に出すことを意味しています。
その他にも、「紙幣・債券・証明書・定期券・入場券などを作って通用させること」、「流行すること」の意味も持っています。
表現方法は「発行する」「発行を行う」「発行をお願いします」
「発行する」「発行を行う」「発行をお願いします」などが、発行を使った一般的な言い回しです。
発行の使い方
「新聞の発行部数は伸び悩んでいる」「雑誌の発行日を確認する」「急いで領収書を発行する」「公報発行予定表をチェックする」などの文中で使われている発行は、「印刷して世に出すこと」の意味で使われています。
一方、「日銀が銀行券を発行する」「発行可能株式総数と発行済株式数が同数の会社です」などの文中で使われている発行は「作って通用させること」の意味で、「デザインは周期的に発行する」「感染症が世界的に発行する」などの文中で使われている発行は、「流行すること」の意味で使われています。
発行という言葉は、上記の例文にあるように複数の意味を持ちますが、一般には「新聞などを印刷して世に出すこと」または「紙幣などを作って通用させること」の意味で用いられています。「流行すること」の意味では、同音の「発向」という言葉に置き換えることが出来ます。
「発行可能株式総数」の意味
上記の例文にある「発行可能株式総数」とは、株式会社が発行することができる株式の上限数のことです。対する「発行済株式総数」とは、会社設立にあたって発行する株式の数を表します。
「発行市場」の意味
発行という言葉を用いた日本語には「発行市場」があります。資金を調達するために、企業や国などが株式や公社債などの有価証券を発行し、投資家に取得させる市場を意味します。一方、発行された株式や債券を投資家間で売買する市場を「流通市場」「セカンダリー・マーケット」といいます。
発行の対義語
発行の対義語・反対語としては、一度配った物や使った物などをまた集めることを意味する「回収」、新聞・雑誌などの定期刊行物の刊行を廃止することを意味する「廃刊」、一度出版した本の版を廃棄して再び発行しないことを意味する「絶版」などがあります。
発行の類語
発行の類語・類義語としては、書籍やデジタルデータなどを製作して販売や頒布することを意味する「出版」、書籍などを印刷して世に出すことを意味する「刊行」、新聞・雑誌などの定期刊行物を出しはじめることを意味する「発刊」、書物を出版することを意味する「上梓」などがあります。
発給の例文
この言葉がよく使われる場面としては、発行して給付すること、出して与えることを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある発給文書とは、主に中世時代に使われた言葉で、将軍や大名から家臣にむけて発給され、何らかの効果を期待された書きもののことです。「はっきゅうもんじょ」と読みます。
発行の例文
この言葉がよく使われる場面としては、雑誌などを印刷して世に出すこと、紙幣や入場券などを作って通用させること、流行することを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2で使われている発行は、印刷して世に出すことを意味します。例文3や例文4の発行は、作って通用させることの意味で使われています。例文5の発行は、流行することを意味し、「発向」と置き換えることができます。
発給と発行という言葉は、どちらも書類などを与えることを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、公的機関が書類などを与えることを表現したい時は「発給」を、書類や印刷物などを与えること全般を表現したい時は「発行」を使うようにしましょう。