似た意味を持つ「往来」(読み方:おうらい)と「従来」(読み方:じゅうらい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「往来」と「従来」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
往来と従来の違い
往来と従来の意味の違い
往来と従来の違いを分かりやすく言うと、往来とは行ったり来たりすること、従来とは以前から今まで続いていることという違いです。
往来と従来の使い方の違い
一つ目の往来を使った分かりやすい例としては、「旅行者の往来が禁止されている地域です」「危険区域の往来自粛をお願いします」「ご近所トラブルで往来危険罪が適用された」「工事車両の往来が多い道路だ」などがあります。
二つ目の従来を使った分かりやすい例としては、「従来方式の自由変形を使用する」「従来通りの営業を行っております」「従来株よりも感染しやすいウイルスだ」「従来のやり方では対応し切れない」などがあります。
往来と従来の使い分け方
往来と従来という言葉は、音の響きが似ているため、混同して使われる傾向がありますが、意味は全く違います。
往来とは、人や物が行ったり来たりすることを意味します。上記の例文にある「工事車両の往来が多い」とは、工事車両の交通量が多い状態を表します。往来は、空間の移動を表す言葉です。
従来とは、過去から現在まで続いていることを意味します。上記の例文にある「従来方式」とは、以前からこれまで採用されている定まった形式のことです。従来は、時間の継続を表します。
このように、従来と往来という言葉は、指し示す領域が異なるものです。
往来と従来の英語表記の違い
往来を英語にすると「comings and goings」「thoroughfare」「street」となり、例えば上記の「旅行者の往来」を英語にすると「the comings and goings of tourists」となります。
一方、従来を英語にすると「up to now」「hitherto」「conventional」となり、例えば上記の「従来方式」を英語にすると「a conventional manner」となります。
往来の意味
往来とは
往来とは、行ったり来たりすること、行き来を意味しています。
その他にも、人や乗り物が行き来する場所、感情や考えが心中に現れたり消えたりすることなどがあります。
表現方法は「人の往来」「往来がある」「往来が多い」
「人の往来」「往来がある」「往来が多い」などが、往来を使った一般的な言い回しです。
往来の使い方
「不要不急の往来自粛を呼びかける」「頻繁に往来する間柄です」「国境をまたぐ往来を再開させる」「道路にブロックを置くのは往来妨害罪だ」「古文書に往来手形が記されている」などの文中で使われている往来は、「行ったり来たりすること」の意味で使われています。
一方、「往来で人が倒れている」「往来で遊ぶな」などの文中で使われている往来は「人や乗り物が行き来する場所」の意味で、「走馬灯のように往来する」「思い出が脳裡を往来した」などの文中で使われている往来は「心中に現れたり消えたりすること」の意味で使われています。
往来という言葉の「往」は出かけて行くこと、「来」は近づいてくることを表します。往来とは、人や事物がある場所へ行ったり、ある場所から来たりすることや、その行き来する場所を意味する言葉です。また、感情や考えなどが消えたり浮かんだりすることを表します。
「往来手形」の意味
上記の例文にある「往来手形」とは、江戸時代における旅行者が所持した身分証明書兼通行許可証です。旅行者はこの手形を番所や関所で提示し、人改めを受けて通行が許可されました。通行手形とも言います。
「往来物」の意味
往来という言葉を用いた日本語には「往来物」があります。平安時代から明治初期にかけてつくられた初歩教科書の総称です。平安時代のものは手紙の模範文例集でしたが、近世では項目が多様化し、寺子屋の教科書となりました。
往来の類語
往来の類語・類義語としては、人や車などの通行する道を意味する「道路」、人や車のとおるところを意味する「通り」、人と人とが互いに付き合うことを意味する「交際」、行きかようことを意味する「行通い」、行ったり来たりすることを意味する「去来」などがあります。
従来の意味
従来とは
従来とは、以前から今までを意味しています。
従来の使い方
従来を使った分かりやすい例としては、「業務は従来通り実施する」「新製品は従来のものより使いやすい」「従来とは違う形式での開催します」「従来型のウイルスよりリスクが高い」「特養は従来型とユニット型の2タイプある」などがあります。
その他にも、「従来の方法では検出できなかった」「従来の方針を大きく転換する」「従来よりも柔らかい素材を使用しています」「ショートステイで従来型個室を希望する」「新型株は従来株に比べて重症化しやすい」などがあります。
従来という言葉の「従」とは、ある時を起点としてそれからを表し、「来」とは、過去のある時点から今までを表します。従来とは、ずっと前から今まで変わりなく何かが続いていることや状態を表す言葉です。「従来知られていなかった」のように、副詞的に用いられることもあります。
「従来株」の意味
上記の例文にある「従来株」とは、ウイルスの遺伝子情報が変化することで出来た「変異株」に対して、変化する前に存在していたウイルスを指します。
「従来から」は誤り
従来という言葉の誤った言い回しには「従来から」があります。以前から今までずっとの意味で使われていますが、重複表現となります。正しい表現は「従来」「以前から」になります。
表現方法は「従来通り」「従来の方法」「従来のやり方」
「従来通り」「従来の方法」「従来のやり方」などが、従来を使った一般的な言い回しです。
従来の対義語
従来の対義語・反対語としては、今からのちや以後を意味する「今後」、現在のあとに来る時を意味する「未来」、これから先や未来を意味する「将来」、あとに続くことを意味する「後継」などがあります。
従来の類語
従来の類語・類義語としては、これまでや今より前を意味する「従前」、昔から今までや古くからを意味する「古来」、昔から行われていることを意味する「旧来」などがあります。
往来の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人や事物が行ったり来たりすること、考えなどが消えたり浮かんだりすることを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4にある往来は、人や事物が行ったり来たりすることの意味で使われています。例文5の往来は思い出が胸中に消えたりうう咬んだりすることの意味で使われています。例文5の往来は「去来」と言い換えることができます。
従来の例文
この言葉がよく使われる場面としては、前から今まで、これまでを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「従来型個室」とは、介護老人保健施設の部屋のタイプの一つです。従来型個室とは、1つの部屋にベッドが1つ置かれていて1名のみが生活します。ユニット型個室とは、1部屋に1名が生活しますが、併設されているキッチンやトイレ、リビングなどは他のメンバーと共有します。
往来と従来という言葉は、音の響きが似ていますが意味は異なります。どちらの言葉を使うか迷った場合、人や事物が行ったり来たりすることを表現したい時は「往来」を、過去から現在まで続いていることを表現したい時は「従来」を使うようにしましょう。