似た意味を持つ「指針」(読み方:ししん)と「方針」(読み方:ほうしん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「指針」と「方針」という言葉は、どちらも物事の目指す方向を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
指針と方針の違い
指針と方針の意味の違い
指針と方針の違いを分かりやすく言うと、指針とは外部から示す方向性を意味し、方針とは主体的に示す方向性を意味するという違いです。
指針と方針の使い方の違い
一つ目の指針を使った分かりやすい例としては、「健康づくりのための運動指針」「著作物利用に関する運用指針が公表された」「浸水対策に関連する指針に基づく行動マニュアル」「製品ラベルの指針番号から情報を得る」などがあります。
二つ目の方針を使った分かりやすい例としては、「学校の教育方針に賛同して受験を決めた」「プロダクト開発の方針転換を決めた」「個人情報保護方針を定める」「方針管理と目標管理の二本立てで管理する」などがあります。
指針と方針の使い分け方
指針と方針いう言葉は、ビジネスシーンで使われることが多い言葉です。どちらも物事が進むべき方向を意味しており、混同して使われる傾向があるのですが、指針と方針では設定する立場が異なるので微妙に意味合いが異なります。
指針は物事を進める当事者ではない外部から、進むべき方向を示すことを意味します。一方の方針は物事を進める当事者が主体的に、進むべき方向を示すことを意味します。
「運動指針」と「運動方針」の違い
上記の「健康づくりのための運動指針」を例にとると、この場合、外部から健康のためにどのように運動をしたら良いのかアドバイスするものを表します。これが「健康づくりのための運動方針」となると、主体的に健康のためにどのように運動をするかという意志を表します。
指針と方針の英語表記の違い
指針を英語にすると「guidance」「guideline」となり、例えば上記の「運動指針」を英語にすると「exercise guideline」となります。一方、方針を英語にすると「policy」「direction」となり、例えば上記の「教育方針」を英語にすると「educational policies」となります。
指針の意味
指針とは
指針とは、物事を進めるうえで頼りとなるものを意味しています。
他にも、各種メーターなどの指示装置についている針の意味も持っています。
表現方法は「指針になる」「指針が定まる」「指針ができる」
「指針になる」「指針が定まる」「指針ができる」などが、指針を使った一般的な言い回しです。
指針の使い方
「運用指針を運用開始してから5年が経過した」「各施設が危機管理対策マニュアルを策定するための指針」「パワハラ防止法の指針案をまとめる」などの文中で使われている指針は、「物事を進めるうえで頼りとなるもの」の意味で使われています。
一方、「水平器の指針が曲がっていて使えない」「水道メーターの指針を確認する」「この電力メーターには指針型とデジタル型がある」などの文中で使われている指針は、「指示装置についている針」の意味で使われています。
指針の語源
指針という言葉の成り立ちをみると、針が指し示すことを表しています。針が指し示す方向や目印となるもの、つまり物事を進めるうえで頼りとなるものを意味しています。何かをするための拠り所となりますが、一般に、これを設定するのは物事の当事者ではない外部からになります。
「運用指針」の意味
上記の例の「運用指針」とは、運用を行うにあたって目的や方向に向かって教え導く事柄を表します。他にも、行動を行う上でどのようにすべきかを明確にした事柄を表す「行動指針」などがあります。
指針の類語
指針の類語・類義語としては、気持ちや行動の向かうところを意味する「方向」、物事を判断するための目じるしとなる「指標」、考え方の方向を意味する「方角」などがあります。
指針の指の字を使った別の言葉としては、物事をそれと指し示すことを意味する「指示」、指揮や命令することを意味する「指令」、数え上げるに値するほど優れていることを意味する「屈指」などがあります。
方針の意味
方針とは
方針とは、物事や計画を実行する上での方向を意味しています。
他にも、方位を示す磁石の針の意味も持っています。
表現方法は「方針を決める」「方針を立てる」「営業方針」
「方針を決める」「方針を立てる」「営業方針」などが、方針を使った一般的な表現方法です。
方針の使い方
「各家庭の教育方針が出やすい幼稚園選び」「方針管理の仕組みを整える」「キャッシュレスを推進する方針だ」「給付金に対する方針転換を評価する」などの文中で使われている方針は、「物事や計画を実行する上での方向」の意味で使われています。
一方、「コンパスの方針は常に北を差している」「方針を静止させるストッパーが付いた方位磁石」「スマホのコンパスにも方針があった」「操縦用の羅針盤の方針が定まらない」などの文中で使われている方針は、「方位を示す磁石の針」の意味で使われています。
方針の語源
方針とは、方角を示す針を表し、物事や計画を実行する上での行動や手段の方向を意味します。方針を設定するのは、物事を進める当事者であることが一般的です。当事者が自分や自分が所属する集団に対して行動や手段の方向を示す、強い意志表明のニュアンスがあります。
「教育方針」の意味
上記の例の「教育方針」とは、どんな風に子供にに育ってほしいか、どんな指導をして行きたいかという気持ちや行動の向かうところを表します。
「方針管理」の意味
方針という言葉を用いた日本語には「方針管理」があり、方針を達成するために行う業務の管理のしくみや取り組みを意味します。特に企業活動において、経営方針に基づき長期経営計画や短期経営方針などを定め、それらを効率的に達成するために行う仕組みです。
方針の類語
方針の類語・類義語としては、持ちつづけている考えや方針などを意味する「主義」、堅く信じて守っている事柄を意味する「信条」、団体や組織などの運動の基本方針を意味する「路線」などがあります。
方針の方の字を使った別の言葉としては、関係するものの両方を意味する「双方」、行いや心の持ち方の正しいことを意味する「方正」、ある一定のやり方を意味する「方式」などがあります。
指針の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事を進めるうえでの拠り所やメーターの針を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4で使われている指針は、物事を進めるうえで頼りとなるものの意味します。指針は、一般的に物事を進める当事者ではない外部が設定するもので、例文4では実際の営業活動を行わない部長が設定しています。例文5で使われている指針は、時計の針を意味します。
方針の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事を実行する上での方向を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「方針を打ち出す」とは、方針を決定する時に使う表現であり、意向を固めることを意味する言葉です。例文2にある「方針転換」とは、方針を変える時に使う表現であり、これまでとは異なる志向にすることを意味します。
指針と方針は、どちらも物事が進むべき方向を意味しますが、それぞれ設定する立場が異なります。指針は当事者ではない外部が設定し、方針は物事を進める当事者が設定すると覚えておくと良いでしょう。