似た意味を持つ「最後通牒」(読み方:さいごつうちょう)と「宣戦布告」(読み方:せんせんふこく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「最後通牒」と「宣戦布告」という言葉は、どちらも「戦争前の意思表示」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
最後通牒と宣戦布告の違い
最後通牒と宣戦布告の意味の違い
最後通牒と宣戦布告の違いを分かりやすく言うと、最後通牒とは最終的な要求の表明、宣戦布告とは戦争開始の表明という違いです。
最後通牒と宣戦布告の使い方の違い
一つ目の最後通牒を使った分かりやすい例としては、「政府は最後通牒を発することに決めた」「即時撤退を促す最後通牒を送った」「ロシアからの最後通牒はなかった」「浮気がばれて妻から最後通牒を突きつけられた」などがあります。
二つ目の宣戦布告を使った分かりやすい例としては、「宣戦布告の理由は明らかになっていません」「事実上の宣戦布告であった」「宣戦布告なしの戦争状態になっている」「恋のライバルから宣戦布告のLINEが届いた」がなどがあります。
最後通牒と宣戦布告の使い分け方
最後通牒と宣戦布告という言葉は、どちらも戦争を開始する前の意思表示を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
最後通牒とは、国際交渉において自国の最終的な要求を提出し、それを相手国が受諾しなければ実力行使をする旨を述べた外交文書のことです。特に戦争に訴えると明示したものを「条件付開戦宣言を含む最後通牒」といい、期限満了と同時に戦争状態に入ります。
宣戦布告とは、戦争を開始する意思を宣言することや、他人に対して闘争をいどむ意思を明らかにすることを意味します。最後通牒のような要求を提示するものではなく、戦争や闘争の意思を表明するものです。
最後通牒と宣戦布告の英語表記の違い
最後通牒を英語にすると「ultimatum」「final note」となり、例えば上記の「最後通牒を発する」を英語にすると「issue an ultimatum」となります。
一方、宣戦布告を英語にすると「declaration of war」「proclamation of war」となり、例えば上記の「宣戦布告の理由」を英語にすると「the reason for declaring war」となります。
最後通牒の意味
最後通牒とは
最後通牒とは、相手が要求を受け入れない場合は、交渉を打ち切り、実力行使に出ることを述べる外交文書を意味しています。
その他にも、「交渉の決裂も辞さないという態度で、相手に一方的に示す最終的な要求」の意味も持っています。
最後通牒の使い方
「最後通牒を突きつけられて政府は戦争を決意した」「ハルノートは最後通牒ではありません」「期限を設定して最後通牒を発する」などの文中で使われている最後通牒は、「要求が受け入れられなければ実力行使に出ると述べた外交文書」の意味で使われています。
一方、「赤点をとったら留年だと英語教師に最後通牒を突きつけられた」「これは怒りに震える母からの最後通牒だろう」「家族で最後通牒ゲームにハマっています」などの文中で使われている最後通牒は、「相手に一方的に示す最終的な要求」の意味で使われています。
最後通牒とは、国家間の友好的な外交交渉を打ち切って最後的な要求を提示し、受け入れられなければ実力行使をする旨を述べた外交文書のことです。一般に、24時間ないし48時間の短い期限がつけられます。
「最後通牒を突きつける」の意味
最後通牒を用いた言い回しには、「最後通牒を突きつける」があります。「突きつける」は、強い態度で文書などを相手に差し示すことであり、「最後通牒を突きつける」とは、最後の要求を強い態度で指し示すことを表します。
転じて、日常生活においては、この要求を守らなければ実力を行使するということを相手に示す知らせの意味で用いられています。最後通牒の「通牒」は、国家から国家へ一方的に意思表示をするときの文書を意味します。
最後通牒の対義語
最後通牒の対義語・反対語としては、戦いに負けて服従することを意味する「降参」、戦争が終わることを意味する「終戦」などがあります。
最後通牒の類語
最後通牒の類語・類義語としては、相手方に決定事項や意向などを告げ知らせることを意味する「通告」、所管の機関や職員に文書で通知することを意味する「通達」、人をこわがらせる言葉を意味する「脅し文句」などがあります。
宣戦布告の意味
宣戦布告とは
宣戦布告とは、戦争を開始する意思を宣言することを意味しています。
表現方法は「宣戦布告する」「宣戦布告した」「宣戦布告を受ける」
「宣戦布告する」「宣戦布告した」「宣戦布告を受ける」などが、宣戦布告を使った一般的な言い回しです。
宣戦布告の使い方
宣戦布告を使った分かりやすい例としては、「ハーグ平和会議で宣戦布告に関する条約が成立した」「映画で見た宣戦布告のシーンが忘れられません」「第一次世界大戦の宣戦布告文は英語で記されています」などがあります。
その他にも、「ロシアはウクライナに宣戦布告しました」「真珠湾攻撃は宣戦布告なき奇襲である」「ハッカー集団がサイバー攻撃を仕掛けると宣戦布告した」「恋愛初心者の私がライバルに宣戦布告なんて出来ません」などがあります。
戦線布告とは、紛争当事者である国家が、相手国に対して戦争を開始する意思を表明する宣言のことです。「宣戦」「戦争宣言」「開戦宣言」とも言います。宣戦布告後に国家間が武力を使って争うことが「戦争」であり、宣戦布告がないまま武力で争うことを「事変」や「紛争」と言います。
宣戦布告という言葉は、しばしば恋愛に関しても使われています。恋愛における宣戦布告とは、好きな人を巡って争うこと、好きな人にパートナーがいる場合は略奪することを、ライバルに表明することを意味します。
宣戦布告の対義語
宣戦布告の対義語・反対語としては、交戦国が互いに協定を結んで平和を回復することを意味する「講話」、人や国が争いをやめて仲直りし平和になることを意味する「和平」などがあります。
宣戦布告の類語
宣戦布告の類語・類義語としては、、個人や国家などが意見あるいは方針などを外部に表明することを意味する「宣言」、告げ知らせることを意味する「宣告」、告げ知らせることや通知することを意味する「告知」、勢いよく言葉が飛び出す歯切れのよい言葉を意味する「啖呵」などがあります。
最後通牒の例文
この言葉がよく使われる場面としては、最後的要求を提示して受け入れられなければ実力行使をする旨を述べた外交文書、交渉の決裂も辞さない態度で相手に一方的に示す最終的な要求を表現したい時などが挙げられます。
例文3の「最後通牒ゲーム」とは、世界中で数多く行われてきている経済学実験の一つです。イスラエルのゲーム理論家アリエル・ルービンシュタインが考え出しました。
宣戦布告の例文
この言葉がよく使われる場面としては、戦争を開始する意思を宣言すること、他人に対し闘争を挑む意思を明らかにすることを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文4の文中にある宣戦布告は、戦争を開始する意思を宣言することの意味で用いられています。例文5の宣戦布告は、他人に対し闘争を仕掛ける意思を明らかにすることの意味で用いられています。
最後通牒と宣戦布告という言葉は、どちらも「戦争前の意思表示」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、最終的な要求を表現したい時は「最後通牒」を、戦争開始の意思を表現したい時は「宣戦布告」を使うようにしましょう。