同じ「じき」という読み方、似た意味を持つ「時期」と「時季」と「時機」の違いと使い方を分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しいのか、このページの使い分け方を参考にしてみて下さい。
「時期」と「時季」と「時機」という言葉は、どれも一種の時間を意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使用される傾向があります。
時期と時季と時機の違い
時期と時季と時機の意味の違い
時期と時季と時機の違いを分かりやすく言うと、時期とは一定の期間を持った時間のことを意味していて、時季とは季節感を持った時期のことを意味していて、時機とは物事をするのに丁度良い時のことを意味しているという違いです。
時期と時季と時機の使い分け方
一つ目の「時期」はスパンを持った時間のことです。文脈によって数日間や数週間のこともあれば、何年から何千年まで広い時間の範囲を意味し、「時代」(読み方:じだい)と変わらない使われ方をすることもあります。ただし一時間や二時間のような短い間を意味することはありません。
例えば折込チラシなどで「この時期限定の大セール」という見出しを目にすることがよくあります。その場合は「お正月限定」であったり、「ゴールデンウイーク限定」であったり、期間という言葉は、数日間から一週間程度のスパンを指し示しています。
また歴史的な物事についても「この時期には・・・」と言われます。例えば「田沼意次の時期には蝦夷地の調査が進められた」のように使われる際の時期という言葉は、何年や何十年といったスパンを表していますし、先史時代の長いスパンを表すのにも使われます。
二つ目の「時季」は、時期に「季節」(読み方:きせつ)という意味合いを含ませた言葉で、カタカナ語では「シーズン」です。使われ方は季節とほとんど変わりはなく、例えば「秋はサンマ季節」は「秋はサンマの時季」と言い換えることが出来ます。
時季が指し示す状況は、時期という言葉でも表現することが可能なので、一般的には時期が用いられ、時季が使われるのはごく僅かです。
三つ目の「時機」という言葉は、物事をするのに丁度良い時のことで、カタカナ語の「チャンス」や「タイミング」のことです。時機の機は「機会」(読み方:きかい)の機だと考えると、この言葉の意味が分かりやすくなります。
例えば「時機を得て上京した」と言えば、タイミングがあって上京した、ということです。また「良い時機だから、教えてもらったらどうだ」の「良い時機」とは「良いチャンス」のことです。
この言葉は「瞬間」(読み方:しゅんかん)という意味合いを持つ言葉です。タイミングもチャンスも、瞬間的なもので、それを逃したら次はありません。時機という言葉の持つ瞬間という意味合いと、時期と時季の持つ期間という意味合いの違いに注目しましょう。
時期の意味
時期とは
時期とは、期間・スパンを持った時間を意味しています。
時期の期間
時間という言葉が「一時間」や「二時間」程度の長さを指し示すのに対して、時期という言葉は数日や数週間から、何百年何千年の間を指し示します。
時期の使い方
例えば「この時期は急に冷え込む」という言葉が話された場合、秋が次第に冬に差し掛かる何日間か数週間が指し示されています。
また歴史の「時代」のことを「時期」と表現することもあります。例えば「大正時代」を指して「この時期には婦人の権利の拡大が叫ばれた」というように言うことが出来ます。
時期とタイミングは同義語
このような期間を持った時間の他に、「一定の期間の中からある一時点を取り出す」際に使われる時期という言葉もあります。例えば「時期を見計らって」は「タイミングを見て」とほとんど同一の意味です。この場合の時期は時機に意味が限りなく近くなります。
表現方法は「時期を見計らって」「時期を見て」「時期尚早」
「時期を見計らって」「時期を見て」「時期尚早」「時期が来れば分かる」などの慣用表現があります。また、やや砕けた言い方ですが「時期感」という言葉も一部で使われています。「時期感のない服装をしてる」と言われれば、寒いのに薄着をしているというような意味です。
時期の類語
時期の類語・類義語としては、期日を先に延ばすことを意味する「延期」、学校の一年間を区分した単位を意味する「学期」、予め定められた一定の期間を意味する「期限」などがあります。
時季の意味
時季とは
時季とは、「季節」という意味合いを持った時期を意味しています。
時季の使い方
「海水浴の時季」「コタツの時季」「コートの時季」など、ある物事が一年の中で盛んに行われていることを表現するのが、時季という言葉です。
しかし、わざわざ時季という言葉を使わなくても、時期を使えばいいため、あまり使われることはありません。時季よりは時期という言葉を使うべきですが、時季という言葉があえて使われる場合を二つ紹介します。
一つ目は、季節の挨拶のための手紙の文面に「時季」という言葉を使うことです。もちろん。時期でも構いませんが、時季という言葉を使うことによって趣きが深くなります。
二つ目は、法律の条文です。労働基準法第39条第4項前段には「使用者は、第3項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」とあり、「時期」ではなく時季という言葉が使われています。
これは、労働者に有給を取得させねばならないことを雇用主の義務として課す法律の条文です。労働者側が取得の申請をしなかった場合、夏休みや春休みのような形で労働者に申請を促さねばならない、というように解釈されている条文です。
表現方法は「梅雨の時季」「時季外れ」「時季の終わり」
「梅雨の時季」「時季外れ」「時季の終わり」などが、時季を使った一般的な言い回しです。
時季の類語
時季の類語・類義語としては、一年のうちの、特色ある気候や景観を持った期間を意味する「季節」、季節という英語をカタカナ表記「シーズン」、自然が移り変わることで感じられる時間を意味する「時節」などがあります。
時季の季の字を使った別の言葉としては、奉公の約束の年限を意味する「年季」、季節の気候を意味する「季候」、末っ子を意味する「季子」などがあります。特に「年季」という言葉は、「年季が入る」という慣用表現で用いられます。
時機の意味
時機とは
時機とは、ある物事をするのに丁度良い時を意味しています。時期と時季は期間を持つ時間を意味する言葉ですが、時機には期間という意味合いはありません。時機の機の字は、機会を意味しています。
時機の使い方
時機には「チャンス」や「タイミング」という、ある種の瞬間的な言い合いがあります。「時機を見て行動を起こす」は、「チャンスを見計らって」という意味で、「時機に投じて富を得る」は、「良いタイミングに乗れて」という意味です。
時機という言葉は、「時期を見計らう」「時期が来れば分かる」「時期尚早」などのように使われる時期と意味が似ています。時期は通常は期間を表す言葉ですが、こうした使い方では「その時」という瞬間的な意味合いを持つからです。
時機という言葉は、「時機を見る」や「時機に投ずる」などの慣用表現以外では見ることがほとんどなくなりました。大抵の場合、「機会」と言い換えることが出来るからです。
表現方法は「時機に応じた」「時機を得る」「時機をうかがう」
上記以外では「時機に応じた」「時機を得る」「時機をうかがう」などが、時機を使った言い回しとなります。
時機の類語
時機の類語・類義語としては、何かをするのに丁度有良い時を意味する「頃合い」、時間の中の切り取られたある一時点を意味する「折」などがあります。
時機の機の字を使った別の言葉としては、あることをするのに丁度いい時を意味する「機会」、機会を逃すことを意味する「逸機」、ある物事が起こるきっかけを意味する「機縁」、物事を起こそうとする風潮を意味する「機運」などがあります。
時期の例文
この言葉がよく使われる場面としては、一年の中のある一時期を表現したい時などが挙げられます。時期という言葉は、文字通りには一定の期間を持った時間という意味ですが、日常生活の中では季節感を込めて使われることが多いです。
逆に、本来は季節という意味合いを持った時季という言葉の方は、あまり使われません。広く色々な物事を表現出来る時期という言葉の方が、間違いがなく便利だからです。
例文3の「時期尚早」など、一部の慣用的表現の中には、「一定の期間の中の一時点」という、時機に近い意味で時期を使っているものもあります。
それだけに、時期と時季と時機の使い分け方は難しいですが、迷った時にはまずは時期という言葉を使うことを考えてみて下さい。
時季の例文
この言葉がよく使われる場面としては、季節の特色を持った時期を表現したい時などが挙げられます。時季という言葉は、時期と季節を約めた言葉だと考えると意味が分かりやすくなります。
ただし、時季という言葉で表現される物事は時期も表現することが出来ます。そのため、時季という言葉はほとんど使われません。時期という言葉の方を使うようにしましょう。
時機の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事をするのに丁度良い頃合いを表現したい時などが挙げられます。時機の機は機会のことで、「チャンス」や「タイミング」というカタカナ語の意味合いを持っています。
そのため時機とは短い時、一瞬というようなニュアンスを持っています。カタカナ語が広まるにつれ、時機という言葉はだんだんと使われなくなり、現在ではやや堅苦しい印象を与える言葉となっています。
また時期にも時機とほぼ同じ意味を表す用法もあるので、特別な場合を除き、時機よりも時期という言葉を選択すべきです。