似た意味を持つ「付近」(読み方:ふきん)と「近辺」(読み方:きんぺん)と「周辺」(読み方:しゅうへん)の違いと使い方を分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しいのか、このページの使い分け方を参考にしてみて下さい。
「付近」と「近辺」と「周辺」いう言葉は同義語で、どちらも「近くの場所」という同じ意味を持ちますが、それぞれの言葉の使い方には少し違いがあります。
付近と近辺の周辺の違い
付近と近辺の周辺の範囲の違い
付近と近辺と周辺の違いを分かりやすく言うと、付近とは近くの狭い範囲を意味していて、近辺とは近くの広い範囲を意味していて、周辺とはある場所を取り囲んでいる狭くもないが広くもない範囲を意味しているという違いです。
「付近のコンビニ」「近辺のコンビニ」「周辺のコンビニ」は同じ意味
付近と近辺と周辺という言葉には厳密な使い分けはなく、どの言葉を使っても同じ事柄を表現することが出来ます。例えば「付近のコンビニ」「近辺のコンビニ」「周辺のコンビニ」はどれも「近くのコンビニ」を意味する自然な日本語です。
ただし、話し言葉では「この近くにコンビニはありますか?」のように「近く」という言葉を使うことが多く、付近、近辺、周辺はかしこまった印象を与える言葉です。
よくニュースで「警察が付近一帯を捜索中」や「周辺の聞き込みを続けている」と原稿が読み上げられるように、これらの言葉は話し言葉でまったく使われないというわけではありません。これら三つの言葉は近くの丁寧語だと考えるようにしましょう。
付近と近辺の周辺の使い分け方
付近、近辺、周辺は日常的には意味の区別がされない言葉ですが、細かく考えると以下のような違いがあります。
一つ目の「付近」は「ある場所の近くの別の場所」を意味する言葉です。この言葉が指し示すのは、特定のお店や家など、「近くにある一箇所」のことです。「付近のコンビニ」も「付近の飲食店」も、ある一箇所を指し示しています。
ニュースでよく聞かれる「付近一帯」という言葉は広い範囲を指し示しますが、言葉の造りは「付近」プラス「一帯」で、「広い範囲」の意味は「一帯」が持つものです。「付近」で「個別の家」、「付近」で「数多くの家」という意味合いを出している言葉です。
二つ目の「近辺」は「近くの広い範囲、近くの地域」を意味する言葉です。付近が個別の場所を指し示すのに対して、近辺は一つの場所を特定しない言葉です。指し示す範囲としては「地域一帯」に近い意味合いの言葉だと考えることが出来ます。
三つ目の「周辺」は「ある場所の周りの場所」を意味する言葉です。この言葉も、指し示すのは個別の場所ではなく、複数の場所や辺り一帯です。ただし範囲としては近辺よりは狭いです。
周辺という言葉は「中心がある」というイメージを持つ言葉です。例えば「家の周辺」という言葉では、家が中心・起点となって、そこから四方八方に広がっていくような近所一帯のことが念頭に置かれています。この中心のイメージは、近辺にはないものです。
付近の意味
付近とは
付近とは、ある物の近くの一箇所を意味しています。
表現方法は「付近一帯」「付近のお店」「付近の観光地」
「付近一帯」「付近のお店」「付近のコンビニ」「付近の観光地」などが、付近を使った一般的な言い回しです。
付近の使い方
地図や地域など、人間の住む空間における「近く」を指し示すことが多い言葉ですが、部屋の中の状況などを表現する時にも使われる言葉です。
「付近」が指し示す近くの場所とは、「近くにある狭い場所」です。例えば部屋で探し物をしている時に「テレビの付近にはないなぁ」とつぶやいたなら、部屋全体の中のごく一部の狭い場所にはない、という意味です。
また公園の茂みの中にボールが飛んで行ってしまって探している時に、「この付近にはない」と言ったら、茂み全体の中のごく僅かの範囲にはない、ということを意味しています。
このような「狭い場所」という意味を、地図や地域の意味での「付近」も持っています。地図や地域の意味での「付近」という言葉は「一箇所」という言葉です。
「近所の理髪店」という言葉は、理髪店という一箇所を指し示しています。「付近のホームセンター」も敷地面積としては広いですが、一箇所を指し示しています。
付近の対義語
付近の対義語・反対語としては、ある場所から離れた別の場所を意味する「遠隔地」などがあります。
付近の類語
付近の類語・類義語としては、ある地点から近い場所を意味する「近所」、周りの人や事を意味する「周囲」などがあります。
付近の付の字を使った別の言葉としては、別のものの表面にくっつくことを意味する「付着」、書類などを他のものに添えることを意味する「添付」、本の内容の補足、または雑誌のおまけ等を意味する「付録」などがあります。
近辺の意味
近辺とは
近辺とは、近くの地域一帯を意味しています。一箇所ないし狭い場所を指し示す付近とは異なり、「近辺」は「複数の場所からなる一帯」という意味の言葉です。
表現方法は「近辺のお店」「近辺の郵便局」「近辺にあるラーメン屋」
「近辺のお店」「近辺のコンビニ」「近辺の郵便局」「近辺にあるラーメン屋」などが、近辺を使った一般的な言い回しです。
近辺の使い方
近辺の辺の字には「おおよそ」や「漠然」(読み方:ばくぜん)といった意味合いがあります。「その辺をぶらつく」や「その辺で勘弁してやって」という言葉を思い出してみて下さい。
付近には家の中や公園の中のごく一部を意味する用法がありましたが、そうした用法は近辺にはありません。「近辺」はもっぱら「地図の上で特定されるような場所」を表現する言葉です。
例えば「この近辺にファミレスはありますか?」という時の近辺は、いま居る場所から近くの一帯を漠然と指し示しています。当然、話者によってどれくらいの広さを念頭に置いているかは異なりますが、「漠然と近く」という意味合いは絶対に変わりません。
近辺の対義語
近辺の対義語・反対語としては、遠い場所を漠然と意味する「遠方」、澄んだ青い空、そこから転じて遠くの場所を意味する「碧落」などがあります。
近辺の類語
近辺の類語・類義語としては、隣り合っている家やそこに住む人々を意味する「近隣」、近くの家や場所を意味する「近所」、その辺りを意味する「界隈」などがあります。
近辺の辺の字を使った別の言葉としては、物も周りの状況、親族関係などを意味する「縁辺」、広大で果てがないことを意味する「広大無辺」、へんぴな土地にある、あわ粒のように小さい国を意味する「粟散辺地」(読み方:ぞくさんへんち)などがあります。
周辺の意味
周辺とは
周辺とは、ある物・場所を中心にそれを取り囲むいくつもの物・場所を意味しています。
表現方法は「周辺地図」「周辺施設」「ビル周辺」
「周辺地図」「周辺施設」「ビル周辺」などが、周辺を使った一般的な言い回しです。
周辺の使い方
周辺は辺という字を使っていることから、近辺と近い意味合いを持っています。「漠然」や「おおよそ」という意味の辺の字によって、「周辺」も「一箇所ではなく複数の場所」を漠然と指し示す言葉です。
例えば「このビルの周辺」は「それを取り囲む近く」という意味です。「ビル周辺」も「ビル近辺」も、日常的な使われ方は変わりませんが、言葉の意味としては「周辺」の方が「狭い範囲」を指し示します。
また「周辺」という言葉は空間的な意味以外にも使うことが出来ます。「彼の周辺の人間関係」という表現は、空間的な近さではなく「彼を中心とした人間同士の関係性」を、つまり「物事の関連性」を指し示しています。
このように「周辺」という言葉には「中心・起点」があります。近辺という言葉にはこのような意味合いはありません。微妙なニュアンスの差異に過ぎないと感じられますが、覚えておくようにしましょう。
周辺の対義語
周辺の対義語・反対語としては、真ん中を意味する「中央」「中心」、一番高いところを意味する「頂点」などがあります。
周辺の類語
周辺の類語・類義語としては、ある物をぐるりと囲む周辺、円周の長さ、島の外周などを意味する「周囲」などがあります。
周辺の周の字を使った別の言葉としては、外側の範囲を意味する「外周」、用意などが抜かりなく行き届いていることを意味する「周到」、注意が隅々まで行き渡っていることを意味する「周密」、広く知れわたることを意味する「周知」などがあります。
付近の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある物の近くの狭い範囲・特定の一箇所を表現したい時などが挙げられます。
「付近」という言葉は「近くて狭い範囲」を指し示しています。必ずしも住所を持つような地図上の場所だけではなく、家の中や公園の中での事柄に対しても使うことの出来る言葉で、例文3はそうした使い方をしています。
地図上の住所を持った場所を指し示す際には、「狭い範囲」とは「特定の一箇所」の意味になります。「狭い範囲を指し示す」というのがこの言葉の使い方のポイントですので、間違えないようにしましょう。
近辺の例文
この言葉がよく使われる場面としては、近くの広い範囲・地域一帯を表現したい時などが挙げられます。辺という言葉には「漠然とした」という意味合いがあります。そのためこの字はどこか特定の一箇所ないし狭い範囲を指し示すことは出来ません。
「近辺」という言葉が使われる際には、必ず「ある程度の広い範囲」のことが念頭に置かれています。広い範囲とは一つの住所ではなく、「無数の住所からなる一帯」のことです。
また、付近と周辺が地図上の場所以外の事柄も表現出来るのに対して、近辺は地図で表すことのできるような場所、つまり土地という意味でしか使うことが出来ません。
周辺の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある物を中心にそれを取り囲む状況を表現したい時などが挙げられます。周辺も辺という字を含むことから、複数の物を指し示しています。
例文3のように空間的な意味で使われることもあれば、例文1や2のような「関係性」という意味で使われることもあります。どちらの場合にも、「中心の周りに複数のものがある」というイメージを連想させます。
範囲としては、周辺は近辺よりも狭いです。ただしどちらの言葉にも辺という「曖昧・漠然」を意味する字が含まれていますので、はっきりとした境界線はありません。