似た意味を持つ「覆水盆に返らず」(読み方:ふくすいぼんにかえらず)と「後悔先に立たず」(読み方:こうかいさきにたたず)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「覆水盆に返らず」と「後悔先に立たず」という言葉は、どちらも取返しがつかないことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「覆水盆に返らず」と「後悔先に立たず」の違い
「覆水盆に返らず」と「後悔先に立たず」の意味の違い
「覆水盆に返らず」と「後悔先に立たず」の違いを分かりやすく言うと、「覆水盆に返らず」は人の気持ちが関係していない、「後悔先に立たず」は人の気持ちが関係しているという違いです。
「覆水盆に返らず」と「後悔先に立たず」の使い方の違い
一つ目の「覆水盆に返らず」を使った分かりやすい例としては、「喧嘩別れした彼女と復縁することはない、覆水盆に返らずだ」「ここまで壊れてしまっては覆水盆に返らずです」「仲いい友達と大喧嘩して絶交してしまった、覆水盆に返らずだろう」などがあります。
二つ目の「後悔先に立たず」を使った分かりやすい例としては、「後悔先に立たずなのだから気持ちを切り替えよう」「まさかこんなことになるなんて思ってもいなかったです、後悔先に立たずだ」などがあります。
「覆水盆に返らず」と「後悔先に立たず」の使い分け方
「覆水盆に返らず」と「後悔先に立たず」はどちらも取り返しがつかないことを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「覆水盆に返らず」は「パソコンで文章を書いてたら停電で電源が落ちてしまい、データが全て消えてしまった。覆水盆に返らずです」のように、客観的な事実を表現しており人の気持ちが関係していない場合に使います。
一方、「後悔先に立たず」は「試験勉強をサボって遊んでばかりいたら赤点で補習授業になってしまいました。後悔先に立たずです」のように、過去の行動に対して使用する言葉で、人の気持ちが関係している場合に使うというのが違いです。
また、「覆水盆に返らず」は一度別れた夫婦の仲は元通りにならないことの意味も持っているというのも違いの一つになります。
「覆水盆に返らず」と「後悔先に立たず」の英語表記の違い
「覆水盆に返らず」を英語にすると「What is done cannot be undone」「It is no use crying over spilt milk」となります。一方、「後悔先に立たず」を英語にすると「It’s too late to be sorry」「there is no use crying over spilled milk」となります。
「覆水盆に返らず」の意味
「覆水盆に返らず」とは
「覆水盆に返らず」とは、一度したことはもはや取り返しがつかないことを意味しています。その他にも、一度別れた夫婦の仲は元通りにならないことの意味も持っています。
「覆水盆に返らず」の読み方
「覆水盆に返らず」の読み方は「ふくすいぼんにかえらず」です。誤って「ぷくすいぼんにかえらず」などと読まないようにしましょう。
「覆水盆に返らず」の使い方
「契約書にサインしてしまっては覆水盆に返らずだ」「ゲームのプレイデータを誤って削除してしまったが、覆水盆に返らずです」などの文中で使われている「覆水盆に返らず」は、「一度したことはもはや取り返しがつかないこと」の意味で使われています。
一方、「元妻が復縁を求めてきたとしても覆水盆に返らずというものです」「覆水盆に返らずなので父と母が再婚するのは難しいだろう」などの文中で使われている「覆水盆に返らず」は、「一度別れた夫婦の仲は元通りにならないこと」の意味で使われています。
「覆水盆に返らず」は一度したことはもはや取り返しがつかないことと、一度別れた夫婦の仲は元通りにならないことの二つの意味を持つことわざで、どちらの意味でも使われています。
「覆水盆に返らず」の由来
「覆水盆に返らず」は中国の小説集『拾遺記』(読み方:しゅういき)が由来です。昔の中国である周の国に、呂尚と馬氏という夫婦がいました。夫の呂尚は読書ばかりしていて働かないので、妻の馬氏は愛想を尽かして実家に帰ってしまいます。
しかし、呂尚は王に認められ大出世して太公望となると、別れた妻が復縁を求めて呂尚の元へ戻ってきました。そこで、呂尚は盆から水をこぼして、「この水を元に戻せたならば、復縁に応じよう」と言いました。もちろん水を元に戻すことはできません。
呂尚は水を元に戻すことができないことが分かっていて、復縁を断るためにこの行動を取ったのです。このことが転じて、一度したことはもはや取り返しがつかないことの意味で使われるようになりました。
「覆水盆に返らず」の類語
「覆水盆に返らず」の類語・類義語としては、元の状態に戻すことができないことを意味する「取り返しがつかない」、夫婦の離別などの一旦壊れた関係は元には戻らないことを意味する「破鏡再び照らさず」(読み方:はきょうふたたびてらさず)などがあります。
「後悔先に立たず」の意味
「後悔先に立たず」とは
「後悔先に立たず」とは、してしまったことは後になって悔やんでも取り返しがつかないことを意味しています。
「後悔先に立たず」の読み方
「後悔先に立たず」の読み方は「こうかいさきにたたず」です。誤って「こうかいせんにたたず」などと読まないようにしましょう。
「後悔先に立たず」の使い方
「後悔先に立たず」を使った分かりやすい例としては、「なぜ親友にあんなことを言ってしまったのだろう、後悔先に立たずだ」「後悔先に立たずにならないように、やれることは全て終わらせよう」「大事なプレゼンの日に寝坊してしまい後悔先に立たずだ」などがあります。
「後悔先に立たず」は自分のしてしまったことを後になって失敗であったと悔やむことを意味する「後悔」に、先頭になることを意味する「先に立つ」を否定形にした「先に立たず」が合わさった言葉です。
つまり、「後悔先に立たず」はしてしまったことは後になって悔やんでも取り返しがつかないことを意味することわざになります。
また、「後悔先に立たず」は語源や由来が判明していないのが現状です。
「後悔先に立たたず」は過去を振り返って後悔する場合と、後悔しないように自分の行動を戒める場合の二通りの使い方をすることができます。
一つ目の過去を振り返って後悔する場合は、起きてしまった物事に対して、あの時ああしていれば良かったと後悔する場面で使います。分かりやすい例を挙げると、「なぜきちんと下調べをせずこの商品を購入してしまったのだろう、後悔先に立たずです」になります。
二つ目の後悔しないように自分の行動を戒める場合は、あとで後悔しないように今しっかりやっておこうというニュアンスで使います。分かりやすい例を挙げると、「後悔先に立たずにならないよう、親孝行をしっかりすることにしました」になります。
「後悔先に立たず」の類語
「後悔先に立たず」の類語・類義語としては、時機遅れで無駄なことを意味する「後の祭り」、手当てや処置すべき時機を逃すことを意味する「手遅れ」などがあります。
「覆水盆に返らず」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、一度したことはもはや取り返しがつかないことを表現したい時などが挙げられます。その他にも、一度別れた夫婦の仲は元通りにならないことを表現したい時にも使います。
例文1から例文3の「覆水盆に返らず」は一度したことはもはや取り返しがつかないこと、例文4と例文5の「覆水盆に返らず」は一度別れた夫婦の仲は元通りにならないことの意味で使っています。
「後悔先に立たず」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、してしまったことは後になって悔やんでも取り返しがつかないことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3の「後悔先に立たず」は、過去を振り返って後悔している使い方で、例文4と例文5の「後悔先に立たず」は後悔しないよう自分の行動を戒める使い方です。
「覆水盆に返らず」と「後悔先に立たず」はどちらも取返しがつかないことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、人の気持ちが関係していないのが「覆水盆に返らず」、人の気持ちが関係しているのが「後悔先に立たず」と覚えておきましょう。