【強欲】と【貪欲】と【欲張り】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「強欲」(読み方:ごうよく)と「貪欲」(読み方:どんよく)と「欲張り」(読み方:よくばり)の違いを分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、このページの使い分け方を参考にしてみて下さい。

「強欲」と「貪欲」と「欲張り」という言葉は、どれも欲が深いことを意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使用される傾向があります。




強欲と貪欲と欲張りの違い

強欲と貪欲と欲張りの意味の違い

強欲と貪欲と欲張りの違いを分かりやすく言うと、強欲とは他人の迷惑になっても物を欲しがることで、貪欲とは知識を欲するなど自分を高める欲が深いことで、欲張りとは相手を茶化すような意味合いのある強欲さを意味しているという違いです。

強欲も貪欲も欲張りも、どの言葉も辞書的な定義は変わりませんので、辞書を開いても違いははっきりしません。三つの言葉が違うのは、使い方です。強欲は悪い意味で使われ、貪欲は良い意味でも使われ、欲張りはからかいや冗談のニュアンスを含みます。

強欲と貪欲と欲張りの使い分け方

一つ目の「強欲」は、他人のことなど考えずにひたすらに私利私欲を優先することを表現する言葉です。例えばワゴンセールなどで、一つの商品を争ってまるでつかみ合いになっているような人たちは、強欲と表現することが出来ます。

二つ目の「貪欲」は、知識や技能など、自分を高めるものに対する、ひたむきで強い欲求を表現する言葉です。良い意味でも悪い意味でも使われますが、傾向的には良い意味で使われることが多いです。

例えば「貪欲に知識を吸収する」や「物事に貪欲に取り組む姿勢」などのように使われます。この言葉が悪い意味で用いられるのは、「良いことをしているが、度を越し過ぎてかえって悪くなる」という場合が多いです。

「物事に貪欲に取り組む姿勢」はそれ自体としては良いことですが、没頭しすぎて周りのことが見えなくなり、周囲に迷惑をかけたり疎まれたりする場合には、悪いニュアンスになります。

三つ目の「欲張り」は、強欲と同じ意味ですが、茶化したり、からかったり、冗談を言うなど、軽口を叩くニュアンスを持ちます。例えば「欲しいものがあってお金が足りないよ」と話してきた友人に対して「欲張りだなぁ」と返すような場面で使われます。

強欲の意味

強欲とは

強欲とは、他人のことなど考えずに私利私欲に走ることを意味しています。特に金銭欲や物欲など、「所有欲が度を越して強いこと」を「強欲」と表現することが多いです。

表現方法は「強欲になる」「強欲に生きる」「強欲さ」

「強欲になる」「強欲に生きる」「強欲さ」などが、強欲を使った一般的な言い回しです。

強欲の使い方

金銭欲や物欲は、ほどほどであれば人間が当たり前に持つものです。しかしそうした欲求が度を越して、ある種の精神の醜さを感じさせる時に、強欲と表現されるものになります。そのため、この強欲という言葉には侮蔑的なニュアンスがあります。

例えば、セールなどで他人を押しのけてでも目当ての物を入手しようと躍起になっている人は強欲と呼ぶことが出来ますし、金に物を言わせて豪華な装飾品を身にまとっている人も強欲と呼ぶことが出来ます。

強欲は精神の醜さとして目に映ります。実際、カトリック系キリスト教では、強欲ないし金銭欲は七つの大罪の一つに数え上げられる悪名高いものです。また仏教では、あらゆる欲求は煩悩として捨て去られるべきものと考えられています。

強欲の対義語

強欲の対義語・反対語としては、欲求を持たないことを意味する「無欲」、欲求が極めて少ないことを意味する「寡欲」、我欲を他人に見せず、つつましいことを意味する「謙虚」、煩悩を捨て去ることを意味する「悟る」などがあります。

強欲の類語

強欲の類語・類義語としては、欲が多いこと、多くの物を欲することを意味する「多欲」、欲が深く大きいことを意味する「大欲」、金や物などを必要以上に欲する様子を意味する「意地汚さ」などがあります。強欲は英語で「グリード」ということも覚えておきましょう。

強欲の強の字を使った別の言葉としては、他人から力づくで物を奪うことを意味する「強奪」、嫌がることを無理にやらせようとすることを意味する「強要」、強者が弱者を犠牲にすることを意味する「弱肉強食」などがあります。

貪欲の意味

貪欲とは

貪欲とは、知識を技能など、自分を高めるような物事に対する欲求が強いことを意味しています。

表現方法は「貪欲に取り組む」「貪欲に学ぶ」「貪欲になる」

「貪欲に取り組む」「貪欲に学ぶ」「貪欲になる」などが、貪欲を使った一般的な言い回しです。

貪欲の使い方

貪欲の貪の字は、獣などが獲物を「貪る」(読み方:むさぼる)という意味を持ちます。

野生動物が獲物を貪ることにはある種の野蛮さや低俗さを見出すこともありますが、少し立ち止まって考えてみると、野生動物にとって獲物を貪るとは、自分たちが生きていくために必要なことであり、またそうして自分を形作っていく大切な営みでもあります。

貪るという言葉がこのような好ましい意味を持つことから、貪欲という言葉も必ずしも悪い意味ではなく、むしろ良い意味を持つことがあります。もっと言えば、強欲と対比される形で、貪欲は多くの場合、肯定的な使われ方をする傾向があるとさえ言えます。

例えば「貪欲に知識を吸収する」と言われれば、それは知識欲が旺盛であることを意味しています。野生動物が貪ることが獲物を自分の血肉とすることであるように、「貪欲」と表現される欲求は、「自分を形成するものを求める」ものです。

知識を貪欲に吸収する場合、その知識が自分の人格を形作るというようなニュアンスを持ちます。この「自分を形作る」というニュアンスは、強欲や欲張りなどで表現される、物欲や金銭欲にはないものです。

貪欲という言葉が悪い意味で使われる場合は、「良いことがかえって悪くなる」場合、つまり、ひたむき過ぎて周囲に注意が行かなくなったり、迷惑をかけたり、快く思われなくなるような場合です。

例えば「新しい仕事に貪欲に取り組む」ことは、それ自体としては良いことです。しかし、没頭のあまり周囲の人のことが見えなくなり、迷惑をかけたり疎まれたりする場合には、悪いニュアンスになります。

なお、貪欲の貪の字は「貧困」(読み方:ひんこん)の貧の字ではないので書き間違えることのないように注意しましょう。

貪欲の類語

貪欲の類語・類義語としては、ひとつのことに囚われて離れられないことを意味する「執着」、欲が深くて心が卑しいことを意味する「貪汚」(読み方:たんお)などがあります。

貪欲の貪の字を使った別の言葉としては、けちで思いやりのないことを意味する「慳貪」などがあります。慳貪は「つっけんどんな態度」の「けんどん」です。

欲張りの意味

欲張りとは

欲張りとは、茶化したり、からかったり、冗談を言うなど、軽口を叩くニュアンスで表現される強欲を意味しています。

表現方法は「欲張りすぎ」「欲張りになる」「欲張りに生きる」

「欲張りすぎ」「欲張りになる」「欲張りに生きる」などが、欲張りを使った一般的な言い回しです。

欲張りの使い方

欲張りは強欲のことです。そのため、基本的には金銭欲や物欲などが過度であることを表現する言葉です。

例えば「彼女は欲張りだ」と言えば、色々な物を欲しがっていることを意味しますが、強欲という言葉よりは、軽蔑するようなニュアンスは少なくなります。むしろ、相手との関係性によっては、そこに一種の親愛の情すら込められていることもあり得ます。

欲張りという言葉は強欲と同じく、基本的には金銭欲や物欲などに対して使われる言葉です。ただし、茶化したり、からかったりする言葉なので、貪欲と表現される良い欲求に対して使われることもあります。

例えばテストで好成績を取ることは貪欲に学んでいることの証ですが、それを友人がからかうように「そんなにいい点ばっかり取って、お前って欲張りだな」と言うことも、日本語としておかしくはありません。

欲張りの類語

欲張りの類語・類義語としては、お金をため込むことに執着する人を意味する「守銭奴」(読み方:しゅせんど)、お金を一番大切なものと考える人を意味する「拝金主義者」「金の亡者」などがあります。

強欲の例文

1.彼がこんなに金に執着するなんて知らなかった。なんて強欲な人なんだ。
2.彼の性根は強欲なのだが、それを人前では隠すスキルがある。
3.この強欲さが倫理的に罪だと言うことは頭では分かっているんだけれどね・・・。

この言葉がよく使われる場面としては、金銭欲や物欲が度を越して激しく、私利私欲に走っていることを表現したい時などが挙げられます。

物欲や金銭欲は人間ならば誰しもが持っているもので、それ自体としては正常です。しかしそれが度を越して激しくなると、精神の醜さとなって現れ、周囲からの軽蔑の対象となります。そうした醜いことが「強欲」と表現されます。

強欲は、例文1にあるように執着心が強いことですし、例文3のように特に倫理的、宗教的に悪いことだと考えられています。この言葉には「醜さ」と「道徳的な悪さ」という意味があることを知っておいてください。

貪欲の例文

1.彼は勝ちに貪欲な姿勢を最後まで見せつづけたが、惜しくもあと一歩届かなかった。
2.若いころのように貪欲に学ぶことが出来なくなってきたことに気づいてしまった。
3.キミの貪欲な知識欲は素晴らしいけれど、行き過ぎるとかえって周囲との軋轢を生むよ。

この言葉がよく使われる場面としては、自分を高める物を貪欲に追いかける姿勢や欲求を表現したい時などが挙げられます。貪欲は良い意味で使われることの多い言葉です。

貪欲の貪の字は、野生動物が獲物を貪るという意味と全く同じ意味で使われていると考えることが出来ます。野生動物は貪ることで獲物を自分の血肉として生かしています。同じように、貪欲さは自分を高める知識や技術、功績などを強く追い求めることです。

貪欲という言葉を使うべきか悩んだ時には、その欲求の対象がその人物の血肉として生きるものなのか、それを追うことでその人物が人間として高みに登れるかどうか、このようなことを考えてみて下さい。

欲張りの例文

1.あなた欲張りさんね、と言われて内心ムッとしている。
2.友達が欲張りな性格をやめたいと言っていたけれど、性格なんだからそうそう治らないんではないかと思った。
3.欲張りな人が飼っているのは、これまた欲張りな犬だった。

欲張りという言葉は、意味は強欲と変わりません。しかし「軽口、茶化し、おどけ」などの態度で使われるのが「欲張り」です。

そのため、欲張りには必ずしも相手を軽蔑するニュアンスはありません。必ず軽蔑や侮蔑といった意味合いを含むことになる強欲という言葉とは、この点で大きく違います。

しかし例文1のように、受け取る側には悪口に聞こえる場合も十分に考えられます。元々の意味が悪口なのですから当然です。相手のことを欲張りと言う時には、十分に注意が必要です。

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