似た意味を持つ「巧遅」(読み方:こうち)と「拙速」(読み方:せっそく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「巧遅」と「拙速」という言葉は、どちらもを「仕事の速さと出来栄え」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
巧遅と拙速の違い
巧遅と拙速の意味の違い
巧遅と拙速の違いを分かりやすく言うと、巧遅とは出来栄えを優先すること、拙速とは速さを優先することという違いです。
巧遅と拙速の使い方の違い
一つ目の巧遅を使った分かりやすい例としては、「雑で早い仕事より、むしろ巧遅を好む」「何事も巧遅より拙速だと思います」「巧遅拙速はビジネスの基本です」「巧遅より拙速の考え方で政策を進める」などがあります。
二つ目の拙速を使った分かりやすい例としては、「拙速な決定は避けるべきです」「政府は民営化を拙速に進めた」「拙速に過ぎると失敗する可能性がある」「拙速な判断に批判が殺到した」などがあります。
巧遅と拙速の使い分け方
巧遅と拙速という言葉は、主にビジネスシーンで使われ、どちらも仕事の速さとその仕上がりの関係を表しますが、意味は大きく異なります。
巧遅とは、出来は良いけれど完成に時間がかかることを意味します。一方、拙速とは出来は悪いけれどすぐに完成することを意味します。つまり、巧遅と拙速は、スピードを優先するか、仕上がりを優先するかの意味において、相反する言葉なのです。
二つの言葉を組み合わせた「巧遅拙速」という四字熟語は、物事は確実で遅いよりも、多少つたなくても早い方が良いことを表します。特に、スピードが重んじられるビジネスにおいて用いられています。
巧遅と拙速の英語表記の違い
巧遅を英語にすると「elaborate perfection」「polished but slow work」となり、例えば上記の「むしろ巧遅を好む」を英語にすると「prefer to elaborate perfection」となります。
一方、拙速を英語にすると「rough and ready work」「indiscreet」となり、例えば上記の「拙速な決定を避ける」を英語にすると「avoid rough-and-ready decision」となります。
巧遅の意味
巧遅とは
巧遅とは、出来栄えはすぐれているが、仕上がりまでの時間がかかることを意味しています。
巧遅の使い方
巧遅を使った分かりやすい例としては、「巧遅は拙速に如かずで完成度は求めません」「社長は巧遅よりも拙速を好みます」「英語の通訳は巧遅拙速と心得ています」「巧遅は拙速に如かず、即実行します」などがあります。
その他にも、「兵は巧遅より拙速を尊ぶ」「巧遅より拙速を重んじる社風です」「巧遅も極めれば立派な才能です」「通報は巧遅より拙速が鉄則です」「改善は巧遅より拙速を尊ぶべきでしょう」などがあります。
巧遅という言葉の「巧」は訓読みで「巧み」と読み、物事を手際よく上手に成し遂げるさまを表し、「遅」は物事の進み具合がぐずぐずしていることを表します。巧遅とは、出来は良いけれど完成に時間がかかることを意味する言葉です。
ことわざ「巧遅は拙速に如かず」の意味
巧遅を用いたことわざには「巧遅は拙速に如かず」(読み方:こうちはせっそくにしかず)があります。仕事の出来が良くて遅いよりは、出来が悪くても速い方が良いことを表します。反対の意味を持つことわざには「急がば回れ」があります。
巧遅の対義語
巧遅の対義語・反対語としては、下手ではあるが出来上がりの早いことを意味する「拙速」などがあります。
巧遅の類語
巧遅の類語・類義語としては、落ち着いて念入りに物事をするさまを意味する「じっくり」、細かいところまで気を配ることを意味する「丁寧」、やり方が堅実であぶなげがないことを意味する「手堅い」などがあります。
拙速の意味
拙速とは
拙速とは、出来はよくないが、仕事が速いことを意味しています。
拙速の読み方
拙速の読み方は「せっそく」です。誤って「せつそく」と読まないようにしましょう。
拙速の使い方
拙速を使った分かりやすい例としては、「拙速に事を運ぶのは危険です」「拙速なプロジェクト発足となった」「ベンチャー企業は拙速を尊ぶものです」「上司が拙速な人で振り回されています」などがあります。
その他にも、「必ずしも拙速は巧遅に勝るとは思わない」「拙速は巧遅に如かずが私のモットーです」「拙速に過ぎる結論ではないか」「職場には拙速を貴ぶ雰囲気があります」「拙速に検討を進めるべきではない」などがあります。
拙速とは、出来上がりが下手でも仕事は早いことを意味します。拙速の「拙」は事を行うのに巧みでなく下手であること、「速」は物事の進行が速いさまを表します。文脈により、良い意味でも悪い意味でも用いられる言葉です。
ことわざ「兵は拙速を尊ぶ」の意味
拙速を用いたことわざには、「兵は拙速を尊ぶ」があります。孫子の兵法から生まれた言葉であり、作戦を練るのに時間をかけるよりも、少々まずい作戦でも素早く行動して勝利を得ることが大切であることを意味します。
拙速の対義語
拙速の対義語・反対語としては、物事をするのに巧みではあるが出来上がりが遅いことを意味する「巧遅」などがあります。
拙速の類語
拙速の類語・類義語としては、物事の進みかたが急であることを意味する「性急」、ひどく急なさまを意味する「短兵急」、下手くそであることや出来が悪いことを意味する「へぼい」、出来が悪いことを意味する「不出来」などがあります。
巧遅の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事をするのに巧みではあるが出来上がりが遅いことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3のように、巧遅という言葉は拙速と対比して使われることが多くあります。例文4や例文5にある「拙速巧遅」とは、「巧遅は拙速に如かず」を四字熟語にした表現です。時間をかけて良いものにするより、多少出来が悪くても迅速である方がいいことを意味します。
拙速の例文
この言葉がよく使われる場面としては、下手ではあるが、仕上がりの早いことを表現したい時などが挙げられます。
例文1の「拙速に過ぎる」や例文5の「拙速すぎる」とは、何かを実行するためには、まだ時間的に早すぎるということを意味します。例文3にある「拙速を避ける」とは、スピードを重視するあまりクオリティーが下がることのないようにすることです。
巧遅と拙速という言葉は、どちらも作業の速さと出来栄えを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、出来は良いが時間がかかるこを表現したい時は「巧遅」を、出来は良くなくとも迅速であることを表現したい時は「拙速」を使うようにしましょう。