似た意味を持つ「不躾」(読み方:ぶしつけ)と「失礼」(読み方:しつれい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「不躾」と「失礼」という言葉は、どちらも「礼儀を欠くこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
不躾と失礼の違い
不躾と失礼の意味の違い
不躾と失礼の違いを分かりやすく言うと、不躾とは自分の行為を表すことが多く、失礼とは自分だけでなく他人の行為も表すという違いです。
不躾と失礼の使い方の違い
一つ目の不躾を使った分かりやすい例としては、「不躾な質問で恐縮ですが、教えて下さい」「不躾ながら値下げをご検討いただけないでしょうか」「不躾なお願いで申し訳ありません」「初対面の人に不躾な態度を取る」などがあります。
二つ目の失礼を使った分かりやすい例としては、「先輩に失礼なことをしてしまった」「彼に悪気はないけど失礼な人だと思う」「夜分に失礼します」「取り急ぎメールにて失礼いたします」などがあります。
不躾と失礼の使い分け方
不躾と失礼という言葉は、どちらも礼儀を欠いているさまを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
不躾とは、無作法で礼儀を欠くさまを意味します。「不躾な質問で恐縮ですが」のように聞きづらい質問をする場合や、「不躾なお願いで申し訳ありません」のように急なお願いしたい時など、自分の行為に対して用いられることが多い言葉です。
失礼とは、人に接する際に礼儀に欠けることを意味します。「夜分に失礼します」とは、夜遅くに連絡をするという礼儀を欠いた自分の行為に対して、許しを求めるニュアンスがあります。また、「失礼な人」のように、礼儀に反する振る舞いをする相手や第三者を表すこともあります。
つまり、不躾は自分の行為に対して使われることが多く、失礼は自分だけでなく相手や第三者の行為に対しても使われる言葉です。二つの言葉を比べると、不躾よりも失礼の方が広く使われており、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。
不躾と失礼の英語表記の違い
不躾も失礼も英語にすると「impolite」「discourtesy」「rude」となり、例えば上記の「不躾な質問」を英語にすると「impolite question」となります。
不躾の意味
不躾とは
不躾とは、礼を欠くこと、無作法なことを意味しています。
不躾の使い方
不躾を使った分かりやすい例としては、「不躾なお願いとは存じますが何卒ご検討ください」「不躾ながら言わせていただきます」「不躾な手紙に腹が立った」「あの人は不躾で厚かましいところがある」などがあります。
その他にも、「不躾な質問で恐縮ですが、会員権はお持ちでしょうか」「不躾かと存じましたがご連絡いたしました」「不躾なお願いで大変恐縮です」「不躾ながらお詫びの品をお送りした次第です」などがあります。
不躾は「不仕付け」とも書く
不躾は「不仕付け」とも書きますが、一般的には不躾と表記されています。
不躾の語源
不躾とは、しつけが出来ていないことです。しつけの由来は裁縫用語にあり、縫い目や折り目を正しく整えるために仮にざっと縫うことを意味し、もともとは「仕付け」と書きました。現在では、礼儀作法をその人の身につくように教え込むことを表し、「躾」と書きます。
「不躾ながら」「不躾なお願いですか」の意味
不躾という言葉は、相手や第三者の言動よりも、自分の言動に対して用いられることが多い言葉です。「不躾ながら」「不躾なお願いですか」など、自分の行いが相手に失礼になる恐れがある時や、相手に手間を取らせてしまう場合に、その許しを請う意味合いがあります。
表現方法は「不躾ですが」「不躾とは存じますが」「不躾なメールをお許しください」
「不躾ですが」「不躾とは存じますが」「不躾なメールをお許しください」などが、不躾を使った一般的な言い回しです。
不躾の対義語
不躾の対義語・反対語としては、真心がこもっていて礼儀正しいことを意味する「慇懃」、礼儀正しく手厚いことを意味する「丁重」などがあります。
不躾の類語
不躾の類語・類義語としては、礼儀にはずれることを意味する「無礼」、人に対して礼を失した振る舞いをすることを意味する「失敬」、礼儀を欠くことや挨拶をしないことを意味する「欠礼」などがあります。
失礼の意味
失礼とは
失礼とは、他人に接する際の心得をわきまえていないことを意味しています。
その他にも、「他人のもとを立ち去ることの丁寧な言い方」「軽く謝るときや人に何かを頼んだりするときなどの挨拶」の言葉の意味も持っています。
失礼の読み方
失礼の読み方は「しつれい」の他に、「しちらい」「しつらい」などがありますが、一般的に「しつれい」と読まれています。
表現方法は「失礼する」「失礼にあたる」「失礼いたしました」
「失礼する」「失礼にあたる」「失礼いたしました」などが、失礼を使った一般的な言い回しです。
失礼の使い方
「ご挨拶が遅れまして大変失礼いたしました」「メールにて失礼いたします」「失礼な人とは関わりたくない」「長文失礼しました」「失礼クリエイターが作り出した謎マナーがある」などの文中で使われている失礼は、「心得をわきまえていないこと」の意味で使われています。
一方、「用事があるのでお先に失礼します」の文中で使われている失礼は「立ち去ることの丁寧な言い方」の意味で、「また会いましょう、では失礼」「失礼、ちょっと通してくだい」などの文中で使われている失礼は「軽く謝るときなどの挨拶の言葉」の意味で使われています。
失礼とは、文字通り「礼を失うこと」であり、備わっているはずの礼儀が一時的になくなっていることを表します。もともと礼儀を持っていないニュアンスがある「無礼」よりも、礼を欠いている度合いは低い表現です。そのため、人と別れる時や、何かたずねたりする時の挨拶にも用いられています。
「失礼クリエイター」の意味
上記の例文にある「失礼クリエイター」とは、インターネットやSNSで用いられているマナー講師の蔑称です。マナー講師が新たなマナーを定義し、不要な失礼を作り出していることを批判している言い方です。
失礼の対義語
失礼の対義語・反対語としては、尊敬する気持ちを意味する「敬意」、言動が礼儀正しく配慮が行き届いていることを意味する「丁寧」などがあります。
失礼の類語
失礼の類語・類義語としては、礼儀にそむくことを意味する「非礼」、尊敬の念を持たず礼儀にはずれることを意味する「不敬」、礼儀作法にはずれていることを意味する「無作法」などがあります。
不躾の例文
この言葉がよく使われる場面としては、礼を欠くこと、無作法なことを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「不躾ながら」とは、無作法ではあることを自覚しつつ、あえて行うさまを表します。「ながら」は、内容の矛盾する二つの事柄をつなぐ言葉です。例文5の「不躾な物言い」とは、礼を欠いた話しぶりや言葉遣いを意味します。
失礼の例文
この言葉がよく使われる場面としては、礼儀をわきまえないこと、退出するときの挨拶、人に問いかける時の挨拶、を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4の文中にある失礼は、礼儀をわきまえないことの意味で用いられています。例文5にある失礼は、人に問いかける時の挨拶の意味で用いられています。
不躾と失礼という言葉は、どちらも「礼を欠くこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、自分の無作法な行為を表現したい時は「不躾」を、自分や他人の礼儀をわきまえない行為を表現したい時は「失礼」を使うようにしましょう。