似た意味を持つ「適材適所」(読み方:てきざいてきしょ)と「適所適材」(読み方:てきしょてきざい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「適材適所」と「適所適材」という言葉は、どちらも「人の能力と仕事の適性」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
適材適所と適所適材の違い
適材適所と適所適材の意味の違い
適材適所と適所適材の違いを分かりやすく言うと、適材適所とは人の能力が発揮できる仕事を与えること、適所適材とは仕事が求める人を配置することという違いです。
適材適所と適所適材の使い方の違い
一つ目の適材適所を使った分かりやすい例としては、「社員の能力を見極めて適材適所の配置をする」「従業員のスキルや適性を踏まえて適材適所に配置する」「適材適所の人材配置が実現できていません」などがあります。
二つ目の適所適材を使った分かりやすい例としては、「適所適材を重視する企業が増えています」「適所適材で女性が活躍できる環境をつくる」「今後は適所適材の実現を目指します」「ジョブ型雇用の前提に適所適材の考え方があります」などがあります。
適材適所と適所適材の使い分け方
適材適所と適所適材という言葉は、どちらも人の能力と仕事配置の関係性を表しますが、意味や使い方には大きな違いがあります。
適材適所とは、その人の能力に相応しい地位や任務を与えることを意味します。得意とする能力を活かすことにより、生産性の高い仕事が出来るという考え方です。
一方、適所適材とは、適材適所と真逆の考え方であり、職務内容や勤務地を明確にして、それに合う人材を充てることを意味します。適所適材は、適材適所に対する言葉として生まれた造語であり、辞書に載っていない人事用語です。
つまり、適材適所と適所適材は、先に考えるものに違いがあります。適材適所はその人の能力が先にあり、それを活かせる職場に配置する考え方であり、適所適材は職務が先にあり、その職務が求める人材を配置しようとする考え方なのです。
適材適所と適所適材の英語表記の違い
適材適所も適所適材も英語にすると「the right person in the right place」「right man in the right place」となり、例えば上記の「適材適所の配置をする」を英語にすると「get the right people in the right seats」となります。
適材適所の意味
適材適所とは
適材適所とは、その人の適性や能力に応じて、それにふさわしい地位や仕事に就かせることを意味しています。
表現方法は「適材適所を見極める」「適材適所の人員配置」
「適材適所を見極める」「適材適所の人員配置」などが、適材適所を使った一般的な言い回しです。
適材適所の使い方
適材適所を使った分かりやすい例としては、「英語の資料作成は彼女に任せるのが適材適所だろう」「係の仕事は適材適所に割り振ります」「仕事ができない人ほど適材適所に従わない」「適材適所と適所適材は似て非なるものです」などがあります。
その他にも、「適材適所は能力に勝ると言われています」「すべての人材を適材適所に配置することは難しい」「人事部で適材適所を見極める力を養う」「企業と就活生が適材適所を実現する」「適材適所により生産性が向上した」などがあります。
適材適所とは、あることに適した才能を持っている者を、それに適した地位や任務につけることです。主にビジネスの場において、社員の適性や能力に応じて、ふさわしい職務に配属することを表します。「適材」は、ある仕事に適した能力をもつ人、「適所」は、相応する地位や仕事を意味します。
適材適所の由来
適材適所という言葉の由来は、木造建築にあります。昔から日本家屋や寺社などの建築現場では、さまざまな種類の木材の特性を踏まえて、建築物の各部分でどの木材を配置するかを使い分けていました。木造の配置は、建物の頑丈さや見栄えに影響する大事な要素なのです。
適材適所の対義語
適材適所の対義語・反対語としては、才能ある人物につまらない仕事をさせることを意味する「大器小用」、偉大な人材につまらない仕事をさせることを意味する「大材小用」などがあります。
適材適所の類語
適材適所の類語・類義語としては、各人の能力を考慮して人材を用いることを意味する「量才録用」、功績に合わせて人材を評価し登用することを意味する「黜陟幽明」、その道のことは専門家が一番であることを意味する「餅は餅屋」、その任務に適していることを意味する「適任」などがあります。
適所適材の意味
適所適材とは
適所適材とは、その地位や仕事に合った人を配置することを意味しています。
適所適材の使い方
適所適材を使った分かりやすい例としては、「適所適材をアピールする会社が増えている」「適所適材を約束してくれた会社に転職します」「富士通は適材適所ならぬ適所適材を掲げている」などがあります。
その他にも、「適所適材で海外事業部に英語力のある社員を異動させる」「適材適所の配置はヒューマンリソースを最適化させます」「我が社はジョブ型人事で適所適材を推し進めます」などがあります。
適所適材とは、求められる役割にふさわしい人材を充てることを意味する造語です。人を適した職場に置くという考えを表す「適材適所」に対して、役割にふさわしい人を配置するという考えを表す「適所適材」という言葉が使われるようになりました。
適所適材の雇用形態はジョブ型雇用
適所適材の考え方に当てはまる雇用形態には「ジョブ型雇用」があります。ジョブ型雇用とは、職務や勤務地、労働時間などを明確に定めた雇用契約のことで、労働者は自らの専門スキルを活かして職務や勤務場所を絞り込むことができるメリットがあります。
適所適材の対義語
適所適材の対義語・反対語としては、その人の身分や能力にふさわしくないことを意味する「分不相応」、身分や分限を越えていることを意味する「分外」、二つ以上の物事が食い違っていることを意味する「ちぐはぐ」などがあります。
適所適材の類語
適所適材の類語・類義語としては、その人に合った場で生き生きと活躍する様子を意味する「水を得た魚のよう」、その役に適していることやその人に適した役を意味する「適役」、その人に最も適した役やその役にうってつけの人を意味する「はまり役」などがあります。
適材適所の例文
この言葉がよく使われる場面としては、あることに適した才能を持っている者をそれに適した地位や任務につけることを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「適材適所を見極める」とは、それぞれの人の能力やスキルを十分に検討したうえで、配置する職場を判定することです。「見極める」とは、徹底的によく見て確認することを意味します。
適所適材の例文
この言葉がよく使われる場面としては、求められる役にふさわしい人を配置することを表現したい時などが挙げられます。
例文4の「適材適所」は自分の能力やスキルを活かすために職務内容を選ぶこと、「適所適材」は自分の経歴やスキルよりも職務内容や勤務地を優先することを表しています。
適材適所と適所適材という言葉は、どちらも人材と職務の関係性を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、能力が発揮できる仕事を与えることを表現したい時は「適材適所」を、求められる役にふさわしい人を配置することを表現したい時は「適所適材」を使うようにしましょう。