【したためる】と【記す】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「したためる」と「記す」(読み方:しるす)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「したためる」と「記す」という言葉は、どちらも文字や文章にして残すことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




「したためる」と「記す」の違い

「したためる」と「記す」の意味の違い

「したためる」と「記す」の違いを分かりやすく言うと、「したためる」の方が「記す」よりも文章語的という違いです。

「したためる」と「記す」の使い方の違い

一つ目の「したためる」を使った分かりやすい例としては、「手紙を毛筆でしたためる」「田舎に住む祖母に手紙をしたためる」「紹介状を一筆したためないかと先生にお願いする」「ここに名前を記しなさい」などがあります。

二つ目の「記す」を使った分かりやすい例としては、「この手紙には彼が不治の病であることが記されている」「気になることはメモに記すようにしている」「大切なことをこの本に記す」などがあります。

「したためる」と「記す」の使い分け方

「したためる」と「記す」はどちらも文字や文章にして残すことという同じ意味を持つ言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。

「したためる」の方が「記す」よりも文章語的というのが違いになります。文章語とは、口頭語にはあまり用いられず文章を書くときに多く用いられることを意味しています。したがって「したためる」はよりきちんとした文章で使う言葉になります。

分かりやす例を挙げると、「手紙をしたためる」「手紙を記す」はどちらも正しい使い方になります。なぜなら、「手紙」はきちんとした文章のことを指しているからです。

また、「文字や記号をしたためる」は間違った使い方になります。「したためる」は基本的に文章に対して使う言葉なので、この場合はあまり適していません。反対に、「文字や記号を記す」は使うことができる言い回しになります。

「したためる」と「記す」の英語表記の違い

「したためる」も「記す」も英語にすると「write」「mention」となり、例えば上記の「ここに名前を記しなさい」を英語にすると「Write your name here」となります。

「したためる」の意味

「したためる」とは

「したためる」とは、文章を書くことを意味しています。

表現方法は「俳句をしたためる」「手紙をしたためる」

「俳句をしたためる」「手紙をしたためる」などが、「したためる」を使った一般的な言い回しになります。

「したためる」の使い方

「したためる」を使った分かりやすい例としては、「遺書をしたためる時の人の気持ちを知りたい」「良い機会なので毛筆でしたためることにしました」「遠距離恋愛してる彼に手紙をしたためることにする」などがあります。

「したためる」は上記の他に、食事をする、整理をする、支度をするという意味も持っていますが、とても古い表現なので、現代においてはほとんど使われていない意味になります。

「したためる」は文字や記号だけを書く場合には用いにくく、手紙などのしっかりとして文章を書く場合に使うというのが特徴です。

「したためる」の語源

「したためる」の語源は諸説ありますが、一番有力なのは強くしっかりしていることを意味する「したたか」が転じたという説です。また、「親しい」元の言葉である「したた」に接尾語の「める」を付けたという説もあります。

「したためる」の漢字表記

「したためる」を漢字にすると「認める」となりますが、あまり一般的ではありません。余程の理由がない限り、平仮名の「したたためる」を使うようにしましょう。

「したためる」の類語

「したためる」の類語・類義語としては、文字や符号を記すことを意味する「書く」、物事を文字や図に書いてはっきりと示すことを意味する「書き表す」、新聞や雑誌などが取り上げて盛んに書くことを意味する「書き立てる」などがあります。

「記す」の意味

「記す」とは

「記す」とは、文字や文章などを書きつけることを意味しています。その他にも、忘れないようによく覚えておくことの意味も持っています。

表現方法は「記録を記す」「名前を記す」「経緯を記す」

「記録を記す」「名前を記す」「経緯を記す」などが、「記す」を使った一般的な言い回しです。

「記す」の使い方

「会員名簿に住所氏名を記す」「今日の出来事を日記に記す」などの文中で使われている「記す」は、「文字や文章などを書きつけること」の意味で使われています。

一方、「今日の喜びを胸に記す」「今日の悔しさを心に記して、いつかリベンジすることを誓いました」などの文中で使われている「記す」は、「忘れないようによく覚えておくこと」の意味で使われています。

「記す」は文字や文章などを書きつけることを意味する言葉ですが、ただ書くというわけではなく、記録として残すというニュアンスで使います。そのため、「日記を記す」という言い回しは使いますが、「小説を記す」という言い回しは使いません。

「記す」のもう一つの意味の忘れないようによく覚えておくことは、文字として残すのではなく心や胸に記憶して残すというニュアンスで使います。そのため、心や胸などの言葉と一緒に使うのが一般的です。

「記す」の類語

「記す」の類語・類義語としては、書き留めることを意味する「記する」、文章を書くことを意味する「執筆」、小説や脚本などを新たに書くを意味する「書き下ろす」、書き記すことを意味する「筆記」などがあります。

「したためる」の例文

1.年末に来年の抱負をしたためるのが、我が家の恒例行事となっています。
2.先方に紹介状を一筆したためてもらうようにお願いいたしました。
3.私が生きた証を残すために日記をしたため始めたが、いつまで続くだろうか。
4.今の時代には合っていないと思うが、好きな人にラブレターをしたためることにしました。
5.しばらく連絡を取っていなかったので、田舎に住んでる両親に手紙をしたためることにしました。
6.何かでプレゼントより手紙のほうがうれしいと読んだので、夜な夜な推しへのファンレターをしたためています。
7.メールやメッセージアプリ全盛の時代だからこそ、手紙をしたためる時間を大事にしたいと思うのだ。
8.教授がわたしのために紹介状を一筆したためてくれたら、あちこちに根回しする必要もなくなるのになと思ってしまう。
9.中学生時代に片思いの女性へのポエムをしたためていたあの黒歴史のことは、口が裂けても言えない。
10.わたしが文章をしたためる理由のひとつとして挙げられるのは、いつか小説を書きたいと思っているからだ。

この言葉がよく使われる場面としては、文章を書くことを表現したい時などが挙げられます。

上記の例文のように、「したためる」は文章を書くという意味で使うのが一般的です。

「記す」の例文

1.結構忘れっぽい性格なので、教わったことはメモ帳に記すようにしています。
2.この手紙には、なぜ彼女が僕の元から離れていったのかが記されていた。
3.参加者名簿に住所と本名を記すことによって、参加が認められることとなりました。
4.今日の敗戦の悔ししさを心に記して、いつか絶対優勝すると決意しました。
5.皆様から受けた数々のご厚意を、しっかりと胸に記しておきます。
6.先生の説明が理解しきれなかった箇所は、復習する際にすぐ取りかかれるようノートに手がかりを記しておくことにした。
7.彼は記憶喪失のあまり自分の名前を記すことさえできなかったので、まったく身元が分からないままであった。
8.世界のどこでも歴史とは勝者が記すものであるので、そこに客観的事実が記してあるなんて思ってはいけないよ。
9.きょうの試合に負けたことはちゃんと心に記した上で、次こそは絶対に勝ってやるとリベンジを誓った。
10.その巻物には何やら文字が記されていたが、素人が読むには難しく解読することができなかった。

この言葉がよく使われる場面としては、文字や文章などを書きつけることを表現したい時などが挙げられます。その他にも、忘れないようによく覚えておくことを表現したい時にも使います。

例文1から例文3の「記す」は文字や文章などを書きつけること、例文4と例文5の「記す」は忘れないようによく覚えておくことの意味で使っています。

「したためる」と「記す」はどちらも文字や文章にして残すことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、「したためる」の方が「記す」よりも文章語的というのが違いです。

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