似た意味を持つ「杞憂」(読み方:きゆう)と「危惧」(読み方:きぐ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「杞憂」と「危惧」という言葉は、どちらも「心配事や気がかり」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
杞憂と危惧の違い
杞憂と危惧の意味の違い
杞憂と危惧の違いを分かりやすく言うと、杞憂とは必要のない心配をすること、危惧とは悪い結果を心配することという違いです。
杞憂と危惧の使い方の違い
一つ目の杞憂を使った分かりやすい例としては、「それは杞憂であると思います」「心配性でよく杞憂する人だ」「あなたの懸念は全くの杞憂に終わるだろう」「ビジネスメールに不備があると心配したのは杞憂でした」などがあります。
二つ目の危惧を使った分かりやすい例としては、「地球温暖化が進む可能性を危惧する」「変異ウイルスの流入を危惧する声が強まる」「絶滅が危惧される動植物を一覧にしました」「日本の将来に大きな危惧の念を抱く」などがあります。
杞憂と危惧の使い分け方
杞憂と危惧という言葉は、どちらも気がかりで落ち着かないことや、心配している様子を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
杞憂とは、心配する必要のないことに対して、あれこれ心配することを意味します。心配していたけど何も起こらなかった時に「杞憂に終わる」「杞憂に過ぎなかった」などと表現します。
危惧とは、事の成り行きが、悪い結果になることを恐れたり、心配する気持ちを意味します。上記の例文の「絶滅が危惧される」とは、現在の状況や取り巻く環境から、生物の種が滅びて絶えることを恐れている様子を表します。
つまり、杞憂とは無用の心配を表し、危惧とは悪い結果を想定して心配することを意味します。例えば、悪い結果を想定しておきながら何事もなく事を終えた時には、「危惧は杞憂であった」と表現することが出来ます。
杞憂と危惧の英語表記の違い
杞憂を英語にすると「groundless fear」「needless fear」となり、例えば上記の「それは杞憂である」を英語にすると「it is a needless fear」となります。
一方、危惧を英語にすると「apprehensions」「misgivings」「fear」となり、例えば上記の「危惧する」を英語にすると「feel misgivings」となります。
杞憂の意味
杞憂とは
杞憂とは、心配する必要のないことをあれこれ心配することを意味しています。
杞憂の使い方
杞憂を使った分かりやすい例としては、「杞憂かもしれませんが不安な気持ちでいっぱいです」「あなたが恐れていることは杞憂かもしれません」「天気が心配でしたが、杞憂に終わってよかったです」などがあります。
その他にも、「あなたの心配は杞憂に終わるでしょう」「そんな考えは杞憂に過ぎない」「当初の心配は杞憂に帰すこととなった」「不吉な予感は杞憂であって欲しい」「杞憂民がユーチューバーの発言を萎縮させている」などがあります。
杞憂の由来
杞憂の由来は、古代中国の国「杞」に住む男が、天が崩れ落ちてくるのではないかと憂えて、寝食をとらなかった故事にあります。このことから、無用の心配を意味する「杞憂」という故事成語が生まれました。「杞人之憂」「杞人の憂え」とも表現します。
「杞憂かもしれませんが」「杞憂であれば良い」の使い方
杞憂という言葉は、「杞憂かもしれませんが」「杞憂であれば良い」のように、心配事が実際には起こらないと希望を込めて言う場合に多く使われています。
「杞憂に終わる」「杞憂に過ぎなかった」の使い方
また、「杞憂に終わる」「杞憂に過ぎなかった」のように、心配していたことが起こらずに終わった安堵を表す時にも用いられています。
「杞憂民」の意味
上記の例文にある「杞憂民」とは、ネットスラングです。SNS発信者や動画配信者に対して、視聴者やアンチに叩かれる内容ではないかと過剰に心配する人々のことです。
杞憂の対義語
杞憂の対義語・反対語としては、物事の先行きをよいほうに考えて心配しないことを意味する「楽観」、性格や気分がのんびりとしていることを意味する「呑気」、心配や苦労がなくのんびりとしていられることを意味する「気楽」などがあります。
杞憂の類語
杞憂の類語・類義語としては、どうなるかわからないことをあれこれ心配することを意味する「取り越し苦労」、気にかかって不安に思うことを意味する「懸念」、心配することや思いわずらうことを意味する「憂慮」、世の中を悪と苦に満ちていると考えることを意味する「悲観」などがあります。
危惧の意味
危惧とは
危惧とは、あやぶみ、おそれることを意味しています。
表現方法は「危惧する」「危惧している」「危惧を抱く」
「危惧する」「危惧している」「危惧を抱く」などが、危惧を使った一般的な言い回しです。
危惧の使い方
危惧を使った分かりやすい例としては、「森林破壊が進むと危惧されている」「あなたが言う危惧と懸念の違いは何ですか」「理想と現実の乖離が危惧される」「テレワークがもたらす危惧を考える」などがあります。
その他にも、「ここは絶滅危惧種が多く生息する地域です」「絶滅が危惧されるマリモの保護活動に参加する」「衝撃で道具が壊れたかと危惧する」「企業の利潤追求に深い危惧の念を抱く」「英語教育のあり方に危惧の念を抱く」などがあります。
危惧とは、上手くいかないのではないかと危ぶむことや、良くないことが起こるのではないかと恐れることを意味します。危惧の「危」は、悪い結果になるのではないかと不安に思うこと、「惧」は、怖がる気持ちや不安を表します。なお、惧のつくりは「具」の旧字体なので、字形に注意しましょう。
「絶滅危惧種」の意味
危惧を用いた日本語には「絶滅危惧種」があります。現在生存する野生生物のうち、個体数が減少しており絶滅の恐れの極めて高い生物のことで、「絶滅危険種」とも言います。日本ではツシマヤマネコ、シマフクロウなどが指定されています。
危惧の対義語
危惧の対義語・反対語としては、気がかりなことが除かれ安心することを意味する「安堵」、気にかかることがなく心が落ち着いていることを意味する「安心」などがあります。
危惧の類語
危惧の類語・類義語としては、危険だと思って恐れることや不安心を意味する「危懼」、うたがって不安に思うことを意味する「疑惧」、物事の先行きなどを気にして心を悩ますことを意味する「心配」、どうなるかと不安で心から離れないことを意味する「気がかり」などがあります。
杞憂の例文
この言葉がよく使われる場面としては、心配する必要のないことを、あれこれ心配することを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「杞憂に終わる」とは、悪いことが起きるのではないかと心配していたが、特に問題もなく無事に終わったことを意味します。
危惧の例文
この言葉がよく使われる場面としては、悪い結果になりはしないかと心配しおそれることを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「危惧の念を抱く」とは、危機にあることを強く自覚することや、危機感を募らせることを表す言い回しです。
杞憂と危惧という言葉は、どちらも「不安や気がかり」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、無用の心配を表現したい時は「杞憂」を、悪い結果を心配することを表現したい時は「危惧」を使うようにしましょう。