【推奨】と【奨励】と【勧奨】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「推奨」(読み方:すいしょう)と「奨励」(読み方:しょうれい)と「勧奨」(読み方:かんしょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「推奨」と「奨励」と「勧奨」という言葉は、どれも人に勧めることを意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。



推奨と奨励と勧奨の違い

推奨と奨励と勧奨の違いを分かりやすく言うと、推奨とはあなたのためになるからと勧めること、奨励とは世の中のためになるからと勧めること、勧奨とは勧める人にとって都合の良いことをするように勧めることを意味しているという違いです。

三つの言葉に共通する奨の字は、「すすめる、はげます」という意味です。勧めるという意味は分かりやすいですが、「はげます」はどうでしょうか。

「励ます」には「何かをするように言葉で力を与える」という意味があります。「頑張れ」は勇気づけることですが、それは決して心の中に留まるものではありません。頑張れは、相手が何らかの行動を起こすことを期待して発せられる言葉です。

さて、推奨と奨励と勧奨という三つの言葉には、辞書的な意味での違いはありません。また、三つの言葉には強く勧めるのか、弱く勧めるのかという違いがあると説明されることもありますが、それも必ずしも正しくはありません。

三つの言葉の実際の使い方を見てみると、「誰に利益があるのか」という点で使い分けられている傾向があることが分かります。

しかしこの違いも傾向的、慣例的なものなので、三つの言葉には厳密な意味の違いがあるとは考えないようにするのが無難です。そのことを念頭に置いたうえで、以下の解説を読み進めて下さい。

一つ目の「推奨」は「相手に利益があるので勧めること」です。その地域の特産物のことを「推奨品」と呼ぶことがあります。例えば北海道の夕張メロン、秋田のきりたんぽ、広島の牡蠣などで、どれも他の地域のものよりも美味しいとされています。

美味しさは、それを食べた人が感じるものです。広島の牡蠣を勧められて食べた時、美味しさという利益を享受するのは食べた人です。推奨とは、勧める人にではなく、勧められた人に利益が出るような勧めることです。

二つ目の「奨励」は「世の中の利益になることを勧めること」です。歴史関係の本を開くと、「農業の奨励」「開墾の奨励」などの言葉を目にすることがあります。それぞれ推奨という言葉で表現されることは少ないです。

これらの奨励は、農家の人に儲かって欲しいということではなく、農業生産を向上させることで社会を安定させることを目的としていました。ここでは利益は農業をした人ではなく、世の中にあると考えられているので、推奨ではなく奨励という言葉が使われています。

ちなみにこれらの奨励は現代でいう農業政策の一環ですが、江戸時代までは農業政策は「勧農」(読み方:かんのう)と呼ばれていて、明治時代に入ってから次第に農業政策という言葉が使われるようになりました。

推奨も奨励もどちらも使われるものとしては、スポーツが挙げられます。「スポーツを推奨する」「運動を奨励する」というように、どちらの言葉を使うことも出来ます。

では推奨と奨励を使い分けた時に、意味やニュアンスの違いが生まれるかというと、微妙なところです。上で挙げた例のように、推奨と奨励は微妙なニュアンスで使い分けられるときもありますが、意味の違いがはっきりしない場合も多いことを覚えておいて下さい。

三つ目の「勧奨」は「自分に利益が出ることを見込んで他人に勧めること」を意味します。ただしこの言葉は単独で使われることはほとんどなく、他の言葉とともに熟語的に使われることが多いです。

例えば、早期退職を促すという意味の「退職勧奨」という言葉があります。リストラ対象者を募集するために使われる言葉です。リストラは、される側に対して一定の対価が与えられることが多いですが、基本的にはコストカット、経営上の都合によってなされます。

リストラは会社にとってメリット、利益があるので、それを促すことを表現するために勧奨という言葉が使われます。勧奨という言葉は、勧められる側ではなく、勧める側に利益がある時に使われます。

推奨の意味

推奨とは、勧められる側に利益があるような勧めることを意味しています。他人に何かを勧める時、勧める人は相手のためになるようにと考えています。

推奨の推の字には「前方に押し出す」という意味があります。自分が良いと思っているものを相手に渡すというイメージで考えると、推奨という言葉の意味が分かりやすくなります。

勧める対象は物であっても行動であっても構いません。物を推奨する例としては「薬用せっかんを推奨する」、行動を推奨する例としては「半身浴の推奨」などがありますが、いずれも、使う人にとってメリットがあります。

ただし、相手にメリットがあるというニュアンスはあくまでも傾向的なものです。それに当てはまらない場合も当然あります。

例えば、「厚生労働省は胃がん、肺がん、大腸がん等に対して定期的な検診を受けることを推奨している」という文言は、検診を受ける人のメリットだけではなく、社会全体としてがんの治療費を抑制しようとする思惑があることも表現しています。

この場合には推奨は、世の中のためになることを勧めるという意味の奨励とほとんど意味が変わらなくなります。

推奨は、書き言葉的な言葉です。格式が必要な場面では話し言葉でも使われることがありますが、友人や家族などとの日常会話で使うと堅苦しい印象を与えてしまいます。

推奨の推の字を使った別の言葉としては、物事を先へ進めることを意味する「推進」、良い人や良い物を勧めることを意味する「推薦」、人をある地位や官職に相応しいとして勧めることを意味する「推挙」「推挽」などがあります。

奨励の意味

奨励とは、世の中のためになることを勧めることを意味しています。

奨励の励の字は「はげます」という意味で、例えば「頑張れ」という「はげまし」は、相手が行動を起こすことを期待してかけられる言葉です。そのため奨励という言葉は「行動を奨励する」という意味になり、物に対しては使われません。

奨励という言葉の辞書的な意味は、推奨と大きく異なりません。「奨励は強い気持ちで気持ちで勧めること、推奨はそれほど強くない気持ちで勧めること」と説明されることもありますが、それは必ずしも正しくありません。

実際の使い方を見ると、奨励という言葉は「世の中のためになることをするように勧める」というニュアンスで使われる傾向があることが分かります。

例えば「奨励金」という言葉があります。これは、主に国や公共団体などが事業や研究を促進するために交付するものです。研究費などは奨励金の一種です。

このお金は、貰う人の私的な利益のために贈られるのではなく、その分野の発展のために支払われるお金です。例えば医療研究費は、医療の発展、つまり将来の世の中への先行投資のようなものとして考えることが出来ます。

また日本将棋連盟は、プロの育成のために「奨励会」という組織を設けています。奨励会は、伝統文化である将棋の普及と発展のために、優れた腕前を持つ棋士が必要なために設けられています。つまり公共的な事業としてプロを育てているのです。

このように奨励という言葉は、世の中のためになることを勧めるという意味で使われますが、深く考えると相手の利益になるという意味の推奨の意味も含んでいることが分かります。

奨励金は、それを受給した人がその分野を発展させることが出来れば、最終的には受給者にも何らかの利益が生じます。また奨励会でプロになることは、その人自身の利益に直結します。

奨励という言葉が「世の中のためになること」という意味で使われるのは、奨励金や奨励会など、慣用的な熟語表現に限ってのことだということを覚えておいてください。「国が理系科目を推奨する」も「国が理系科目を奨励する」も、意味は同じです。

奨励の対義語・反対語としては、業績に対して報いることを意味する「報奨」などがあります。報奨金は業績を上げた人の利益ですが、奨励金はこれから業績を積むだろう人に対して支給される投資のようなもので、受給者のためのお金ではありません。

勧奨の意味

勧奨とは、自分に利益があることを見込んで他人に何かを勧めることを意味しています。

推奨や奨励がしばしば見聞きする言葉であるのと違って、勧奨という言葉はほとんど使われません。また辞書では三つの言葉には同じような説明がされていて、違いが分かりません。

勧奨という言葉は限定的に使われる言葉で、「退職勧奨」や「納税勧奨」などのように使われます。退職勧奨はリストラ対象者に声掛けする、いわゆる「肩叩き」のことで、納税勧奨は役所の納税課などで使われる言葉です。

これらの使い方を見ると、「勧奨」は「勧める側に利益がある」という意味で使われる傾向があることが分かります。リストラは会社側のコストカットという都合で税行われます。また金の未徴収は職員の評価を下げるので、担当者にとっては徴収率を高めることは大切です。

また戦前には政府の閣議決定で「貯蓄勧奨」「投資の勧奨」という言葉が使われたこともあります。これは経済の安定と戦費支出のために国民に協力することを勧めるものでした。

勧奨という言葉は、勧める人が上の立場である場合に使われるものだと考えることが出来ます。このことを知っておくと、「自分の利益になることを見込んで他人に何かを勧める」という意味が分かりやすくなります。勧奨は上から目線の言葉です。

推奨の例文

1.環境省は冷房時の室温を28℃にするように推奨している。
2.パソコンにゲームをインストールしたけれど、推奨環境を満たしていなかったらしく、動作が遅い。
3.お店の人と相談して、メーカー推奨サイズより一つ大きいものを購入した。
4.どの本を使って勉強すれば良いか、科目毎の推奨本をリストアップしてほしい、との要望を生徒から受けた。
5.花屋で、これからの猛暑や酷暑にも耐え得る推奨植物はないかを尋ねた。
6.私の在学中は自由服制だったが、今年の入学生からは推奨服ができたため、妹はその採寸に出掛けて行った。

この言葉がよく使われる場面としては、それをする人のためになることを勧めることを表現したい時などが挙げられます。推奨という言葉は、勧められた人の利益になるような勧めることを意味しています。

例文1の場合、部屋にいて体調を崩さない適温という意味で、例文2の場合、ゲームのプレイが快適になるという意味で、それをする人にとって利益があることから、推奨という言葉がそれぞれ使われています。

例文3の「メーカー推奨サイズ」とは、洋服やロードバイクなど、体の大きさに合わせてサイズが選べる製品に関して、メーカー側で身長や体重などに対応するサイズの製品を指定したもののことです。

奨励の例文

1.研究奨励費を受給した。達成感と共に責任も感じる。
2.自然科学観察コンクールの文部科学大臣奨励賞は、毎年ユニークな研究が受賞している。
3.江戸幕府の八代将軍徳川吉宗は、飢饉対策としてサツマイモの栽培を奨励した。
4.健康増進のために歌を歌うことが奨励されている僕の町では、皆で一緒に歌を歌おう、という内容のイベントが多数開催されている。
5.県の特産物にしたいその作物は、育てるのが困難で生産量が伸び悩んでいるので、生産奨励金が出されることになった。
6.キャリーバッグの運搬はできるだけ自分に寄せて運ぶよう奨励されているので、自分の真横で直立状態で運べるものを選び購入した。

この言葉がよく使われる場面としては、世の中のためになることを勧めることを表現したい時などが挙げられます。奨励は「行動を奨励する」という意味で使われるため、物をオススメするような場合には推奨が用いられます。

「世の中のためになる」という意味は、特に例文3の奨励の使い方に顕著に見て取ることが出来ます。この頃サツマイモは「甘藷」(読み方:かんしょ)と呼ばれ、西日本で知られていた作物でした。

サツマイモは中国から薩摩藩(現在の鹿児島県)に伝わった作物で、育てやすさから救荒作物として知られていました。享保の大飢饉に際して徳川吉宗が栽培を奨励したことで、全国的に知られるようになりました。

勧奨の例文

1.会社が提案する勧奨退職を受け入れることにした。
2.昔は予防接種は義務としてするものという考え方が一般的だったが、最近は例えばインフルエンザなど、勧奨接種という考え方もだいぶ広まってきた。
3.自動音声電話やショートメールでの納税勧奨を行っている自治体もある。
4.特定健診の受診率を向上させるため、受診勧奨のポスター掲示やチラシ配布が行われている。
5.特定の疾病については、接種対象者やその保護者に定期接種を受けるよう勧奨している。
6.受診勧奨値の変更があり、これまでなら要再検査だったはずの項目が、今回の検診結果では受診勧奨になってしまった。

この言葉がよく使われる場面としては、目上の人が自分の利益になるように他人に何かを勧めることを表現したい時などが挙げられます。

推奨と奨励という言葉がよく使われるのに対して、勧奨という言葉はほとんど使われません。「退職勧奨」「納税勧奨」など、限定的なケースで熟語的に使われるのが勧奨という言葉です。

この言葉には上から目線というイメージがあります。退職勧奨はリストラ勧告のことで、会社の経営的都合からなされます。また納税勧奨も役所の納税課などがするものです。税金は公共の福祉のために徴収されるものですが、徴収率は職員の評価に関わっています。

例文2の「勧奨接種」は、国の医療、福祉政策の一環です。インフルエンザの予防接種を促すことは勧奨なので、これは「勧奨接種」と呼ばれます。

予防接種は当人のためにもなるのですが、それは全体的な医療費の抑制につながり、最終的には国のためになるので、ここでは勧奨という言葉が使われています。

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