【全体】と【全部】と【全般】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「全体」(読み方:ぜんたい)と「全部」(読み方:ぜんぶ)と「全般」(読み方:ぜんぱん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「全体」と「全部」と「全般」という言葉は、物事のすべてという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




全体と全部と全般の違い

全体と全部と全般の意味の違い

全体と全部と全般の違いを分かりやすく言うと、全体は一つのものの全てを表現する時に使い、全部は複数をまとめた一つを表現する時に使い、全般は全ての範囲を表現する時に使うという違いです。

全体と全部と全般の使い方の違い

全体という言葉は、「会場全体に照明が行き届いていることを確認した」「全体像が全く見えない」などの使い方で、一つにまとめた物事のすべての部分を意味します。

全部という言葉は、「どれを食べたいかと尋ねると全部と言われた」「全部夢だったらよかったのに」などの使い方で、ある物事の全てを意味します。

全般という言葉は、「社会全般に言えることではあるが例外もあるだろう」「猫全般、近づくと鼻がムズムズする」などの使い方で、物事のあらゆることを意味します。

全体と全部と全般の使い分け方

全体と全部という言葉はどちらも、物事のすべてを意味する言葉ですが、前者は一つのもののすべての部分を指すのに対して、後者は複数ある同じようなものを寄せ集めたものを指します。対応する英単語も異なり、前者は「whole」、後者は「all」が使われます。

一方の全般は、全部という言葉と使い方が似ており、広く見渡した際物事や事柄に及んでいるすべての範囲を指す言葉です。全体や全部よりも広範囲を表すことが多い言葉です。

しかし、全体や全般と共に使う言葉によっては意味合いが異なり、「社会全体」と「社会全般」は同じように使われますが、「身体全体」と「身体全般」であれば、前者は特定の一人の全身を表しますが、後者は万人の全身を表します。

これが、全体、全部、全般の明確な違いです。

全体の意味

全体とは

全体とは、一つにまとめた物事のすべての部分を意味しています。

表現方法は「全体を通して」「全体では」「全体を見渡す」

「全体を通して」「全体では」「全体を見渡す」などが、全体を使った一般的な言い回しです。

全体を使った言葉として、「全体主義」「全体像」があります。

「全体主義」の意味

一つ目の「全体主義」とは、個人の権利や利益を認めずに、国家全体の利害と一致するよう統制されなければならないという考え方を指す言葉で、「トータリタリアニズム」とも呼ばれます。

具体的には、マスメディアによるプロパガンダや、計画経済、言論統制、国家暴力の使用などで政治的な権力を維持していくことで国家統制を行います。

「全体像」の意味

二つ目の「全体像」とは、ある物事の全体的なイメージや、一つのまとまりとして捉えた時の物事の姿を意味する言葉です。「全体像を把握する」「全体像を掴む」「計画の全体像を改めて知る」などの使い方をすることができます。

全体の対義語

全体の対義語・反対語としては、全体をいくつかに分けたものの一つを意味する「部分」、あるまとまったものの一部分を意味する「断片」、物事の中心となるところを意味する「要点」があります。

全体の類語

全体の類語・類義語としては、個々別々のものを一つにあわせてまとめることを意味する「総合」、領域の全体を意味する「全域」、勢力などの及ぶ範囲が広い様子を意味する「広範」、全体の有り様を意味する「全貌」などがあります。

全部の意味

全部とは

全部とは、ある物事の全てを意味しています。

表現方法は「全部でいくらですか」「全部が嫌になる」「全部が全部」

「全部でいくらですか」「全部が嫌になる」「全部が全部」などが、全部を使った一般的な言い回しです。

全部を使った言葉として、「全部改正」「全部判決」があります。

「全部改正」の意味

一つ目の「全部改正」とは、法律の内容を全面的に変更することを意味する言葉です。意味合いや法解釈を180度変更するわけではなく、既存の法律を存続させながら全文を書き改める際に行われます。

その法令の改正が必要な部分が広範囲であり、追加や削除、移動などが多く行われて複雑となる場合に行われ、部分的に改正が行われる場合は一部改正と呼ばれます。

「全部判決」の意味

二つ目の「全部判決」とは、訴訟が行われた事件の全部を完結するための判決を指す言葉です。当事者の二人とももしくは一方が同じである二つ以上の審判すべてを完結させる場合に取られる判決です。

全部の対義語

全部の対義語・反対語としては、全体の中のある部分を意味する「一部」、二分の一の分量や数量を意味する「半分」があります。

全部の類語

全部の類語・類義語としては、ある物事の全体を意味する「全面」、すべてを意味する「一切」、全体の姿や形を意味する「全容」、一つにまとまった全体を意味する「一統」、あるものの数量や事柄の全体に及ぶ様子を意味する「丸々」などがあります。

全般の意味

全般とは

全般とは、物事のあらゆることを意味しています。

表現方法は「全般的に」「全般が好き」「全般を指す」

「全般的に」「全般が好き」「全般を指す」などが、全般を使った一般的な言い回しです。

「全般季節予報」の意味

全般を使った言葉として、「全般季節予報」があります。

「全般季節予報」とは、全国を対象として気象庁が発表する季節予報を指す言葉で、通常の天気予報とは異なり、1か月間や3か月間など長い期間の大体の予報が出されます。

そのため、特定の日付の気温などを予報として出すのではなく、1か月後の気温が現在よりも高くなる確率が予報として発表されます。また、天気予報は都道府県ごとの予報が出されますが、全般季節予報は地方ごとの予報が発表されます。

全般の対義語

全般の対義語・反対語としては、全体を構成しているものを切り離した一つ一つを意味する「個別」、関心などを向けている限られた事柄を意味する「専門」があります。

全般の類語

全般の類語・類義語としては、すべての事柄を意味する「万般」、あらゆるものを意味する「万物」、物事の全体を意味する「総体」、あたり全体を意味する「一帯」、物事の大体の有り様を意味する「概観」などがあります。

全体の例文

1.雨で足元が少しばかり濡れただけだと思っていたが、家に帰るころには全体的に濡れてしまったため、すぐに浴室へと向かった。
2.庭全体に今にも咲こうとする花を見て、新しい季節へと移り変わる様子を目の当たりにしているような気がしてくる。
3.一体全体何が起きたというんだと周囲を確認しようとしても、照明が落ちてしまったため叶わなかった。
4.平社員から課長に昇進したのはいいが、これからは組織全体を見ながら仕事をしなければならないだろう。
5.地震の発生当初、災害対策本部は混乱していたが、全体像がみえるにつれてそれが甚大な災害であることが分かってきた。
6.世界一辛いと言われる唐辛子の入った料理を食べてみたんだけど、顔全体から炎が噴き出るかと思ったよ。
7.このいちごの品種は全体的に粒が大きいので、一つ食べるだけで三つ分食べたような満足感があります。
8.昨今の地方の衰退が叫ばれるなかでも、わが町全体は一丸となって町おこしに取り組んで必死に頑張っている。

この言葉がよく使われる場面としては、一つにまとめた物事のすべての部分を意味する時などが挙げられます。

例文3の「一体全体」という表現は、強い疑問を感じた場合や対象を咎める場合に使われる言葉です。

全部の例文

1.このままでは全部の計画が水の泡となってしまうと感じて上司に報告し、講じられた策によってその危機を回避することができた。
2.本屋で欲しい本を全部手に取ったら、片腕に収めるには難しいほどの量になってしまったため、いくつかの本は戻して後日購入することにした。
3.今目の前で起きていることが全部夢だったらどうしようと不安になるほど幸せな気持ちのまま家に帰ってきた。
4.最近話題になるSDGsだが掲げられた17の目標を一度に全部取り入れるのは難しそうなので、できることから少しづつ始めていきたいと思う。
5.おやつのポテトチップスなんかは一度空けてしまうと全部食べてしまうので、なるべく小さい袋のモノを買うようにしています。
6.あれだけあった財産をギャンブルのために全部使い果たしてしまったとは、依存症というのは恐ろしいものだね。
7.生半可に収集癖があると、キャラクターグッズなどを全部集めないと気が済まなくなるので、それはそれで厄介な性分ではある。
8.志望校合格のために3年間必死に勉強して、試験でも全部出し切ったと思えたので、結果がどうなっても後悔はありません。

この言葉がよく使われる場面としては、ある物事の全てを意味する時などが挙げられます。

例文1の全部は全体という言葉に置き換えて使うことができます。

全般の例文

1.世間全般がセクシャルマイノリティに理解があるというわけではないのは事実だが、否定することは彼らの人生を否定することと同義なのではないかと思う。
2.子どもたちの行動全般は行動指針となる大人たちの言動によって大きく左右されると言っても過言ではないだろう。
3.自分の持つマンガや小説など、書籍全般が価値観や倫理観などを形作っていたのだと思うと感慨深い。
4.こんなご時世で送別会を開催できないのですまないがプレゼントを買ってきてくれないか。彼はお酒全般大丈夫なはずだからウイスキーがいいかな。
5.昭和の日本の家電製品全般に言えることだが、ユーザーが使いこなるかどうかにかかわらず、とにかく多機能をアピールすることが挙げられるだろう。
6.高度経済成長期の日本は食生活全般がどんどん豊かになり、さらに80年代に差し掛かると、一大グルメブームが巻き起こりました。
7.妻は家事全般がからきしダメなので、お手伝いさんを雇ったり、夫である私が料理をしたりしているが、特に不満はない。
8.私は小学生の頃から球技全般が苦手だったので、体育の授業でサッカーや野球がある時にはとても憂鬱だったことを覚えている。

この言葉がよく使われる場面としては、物事のあらゆることを意味する時などが挙げられます。

例文1と例文3の全般は全体という言葉に置き換えて使うことができ、例文2の全般は全体という言葉に置き換えて使うことができます。

全体と全部と全般どれを使うか迷った場合は、一つのものの全てを表す場合は「全体」を、複数をまとめた一つを表す場合は「全部」を、全ての範囲を表す場合は「全般」を使うと覚えておけば間違いありません。

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