似た意味を持つ「自署」(読み方:じしょ)と「自書」(読み方:じしょ)と「自筆」(読み方:じひつ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「自署」と「自書」と「自筆」という言葉は、自分で書くことという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
自署と自書と自筆の違い
自署と自書と自筆の意味の違い
自署と自書と自筆の違いを分かりやすく言うと、自署は氏名を書くことを表現する時に使い、自書は自分で書くことを表現する時に使い、自筆は自分で書いたものを表現する時に使うという違いです。
自署と自書と自筆の使い方の違い
自署という言葉は、「自署欄にはご自身でお名前を書くようお願い致します」「クレジットカードなどの裏面には自署する必要がある」などの使い方で、本人が自分でその氏名を記すことや自分で書いた氏名を意味します。
自書という言葉は、「彼の自書には過去の経験などについて記載されている」「投票用紙に自書するのは有権者本人でなければならない」などの使い方で、自分で書くことや書いたものを意味します。
自筆という言葉は、「有名作家の自筆原稿などが展示されると聞いてすぐに予約した」「原画を模して描かれたものだけが残り自筆絵画は存在しないのではないかと言われている」などの使い方で、本人が自分で書くことや書いたものを意味します。
自署と自書と自筆の使い分け方
自書と自筆は、どちらも自分で書くことを意味する言葉でほとんど意味は同じです。強いて言えば、前者は当人が書くこと自体を重視し、後者は当人の筆跡や当人が書いたものであること自体を重視するという区別がなされることもあります。
一方の自署も、自分で書く時に使われる言葉ですが、書き手の名前が記入される場合のみに対して使われるため、自書や自筆よりも表現できる幅が狭くなります。
これが、自署、自書、自筆の明確な違いです。
自署の意味
自署とは
自署とは、本人が自分でその氏名を記すことを意味しています。
表現方法は「所持人自署」「本人自署欄」「保護者自署」
自署を使った表現として、「所持人自署」「本人自署欄」「保護者自署」「原則自署で記入すること」などがあります。「自署押印」という表現も見られますが、自身で記名を行う場合は押印が不要であることも少なくありません。
公的書類や契約書類などでは自署が必要となりますが、委任状やその他代わりに記名してもらう旨を申告することで、本人の代わりに記名を別の者が行うことができる場合もあります。
自署は氏名の記入を行う場合に使う
また、氏名の記入を行う場合に使われる言葉であるため、「住所を自署する」や「電話番号の自署をお願いします」などの表現をすることはできません。
自署の対義語
自署の対義語・反対語としては、本人に代わって署名することを意味する「代署」があります。
自署の類語
自署の類語・類義語としては、自分の手で自分の名前を書くことを意味する「手署」(読み方:しゅしょ)、作者が署名したり押印することやその印を意味する「落款」、文書の末尾などに書く署名の一つを意味する「花押」などがあります。
自書の意味
自書とは
自書とは、自分で書くことや書いたものを意味しています。
「自書式投票」の意味
自書を使った言葉として、「自書式投票」があります。これは、投票用紙に候補者の名前や政党名を記入して投票する方法を指す言葉で、「自著式投票」とも言われます。筆跡で不正を行ったか否かが分かりやすくなるというメリットがあります。
また、地方公共団体の議員や市長などの選挙においては、候補者や政党名が書かれた用紙に、規定された記号を書く投票方式である「記号式投票」が用いられることもあります。
これは、自書式投票で問題とされる漢字表記や文字の書き方などによる疑問票が少なく済むメリットがある一方で、偽造されたマークシートの判別がつかないなどのデメリットがあります。
自書の対義語
自書の対義語・反対語としては、他に人に代わって文書を書くことを意味する「代書」、他人の書いた文字などに似せて書くことを意味する「偽筆」があります。
自書の類語
自書の類語・類義語としては、自分で書きつけることや書いたものを意味する「自記」、本人が直接書くことやその文書を意味する「直書」、その人が本当に書いた筆跡を意味する「真筆」があります。
自筆の意味
自筆とは
自筆とは、本人が自分で書くことや書いたものを意味しています。
「自筆証書遺言」の意味
自筆を使った言葉として、「自筆証書遺言」があります。これは、遺言者本人だけで作成できる遺言書を指す言葉です。夫婦二人で一つの遺言書を作成した場合や、加筆修正の方法が間違っている場合などは無効となります。
その他にも、他者によって改ざんされる恐れや、紛失したり存在に気付かれないまま誰にも読まれない可能性があるなど、デメリットが多くあるものの、金銭的負担が他の遺言書作成と比べて掛からないことがメリットとして挙げられます。
また、自筆証書遺言以外にも、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」といった種類もあります。どちらも立会人のもとで作成される遺言書ですが、後者は公証人にいざという時証明してもらう手続きをしたうえで、遺言内容を明かさずに作成できます。
自筆の対義語
自筆の対義語・反対語としては、他の人が書くことや他人の筆跡を意味する「他筆」、本人に代わって書くことを意味する「代筆」があります。
自筆の類語
自筆の類語・類義語としては、本人自身が直接に筆を取って書くことを意味する「直筆」、コピーではなく本人が実際に手で書くことを意味する「肉筆」、その人が実際に書いたと認められる筆跡を意味する「真跡」などがあります。
自署の例文
この言葉がよく使われる場面としては、本人が自分でその氏名を記すことや自分で書いた氏名を意味する時などが挙げられます。
例文1と例文3の自署は、名前という意味が含まれていない自書や自筆に置き換えて使うことはできません。
自書の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分で書くことや書いたものを意味する時などが挙げられます。
例文3の自書は、その人が書いた本を意味する言葉として使われているため、自署や自筆といった言葉に置き換えて使うことはできません。
自筆の例文
この言葉がよく使われる場面としては、本人が自分で書くことや書いたものを意味する時などが挙げられます。
どの例文の自筆も、書かれたサインそのものを重視することから、自書という言葉に置き換えて使うことはできません。
自署と自書と自筆どれを使うか迷った場合は、氏名を書くことを表す場合は「自署」を、自分で書くことを表す場合は「自書」を、自分で書いたものを表す場合は「自筆」を使うと覚えておけば間違いありません。