似た意味を持つ「身元」(読み方:みもと)と「素性」(読み方:すじょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「身元」と「素性」という言葉は、どちらも「生まれや経歴」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
身元と素性の違い
身元と素性の意味の違い
身元と素性の違いを分かりやすく言うと、身元とは身の上のデータを表し、素性とは身の上の良し悪しを表すという違いです。
身元と素性の使い方の違い
一つ目の身元を使った分かりやすい例としては、「容疑者の身元を調べる」「遺体の身元が判明した」「身元保証書には身元保証人の記載が必要です」「身元証明書を本籍地の役所で取り寄せる」などがあります。
二つ目の素性を使った分かりやすい例としては、「社長の娘だという素性を明かすつもりはない」「結婚相手の学歴や素性が気になる」「男は素姓の知れるものを何も所持していなかった」「素性のはっきりしない商品は買いません」などがあります。
身元と素性の使い分け方
身元と素性という言葉は、どちらも「氏名や住所、職業や経歴などを含めた、その人の生まれ育ち」を表しますが、意味や使い方には少し違いがあります。
身元とは、その人の出生や経歴や一身上の事柄を意味します。「身元を調べる」とは、氏名や住所、職業など、その人の事実的なあらゆるデータを集めることです。
素性とは、その人の家柄や生まれ育った境遇、出所や由緒を意味します。身元という言葉に比べると、家柄や血筋という意味合いが強くなる言葉です。「学歴や素性が気になる」とは、対象となる人の学歴や家柄などが良いのか悪いのか気にかかることを表しています。
つまり、身元は身の上の事実的データを表しますが、素性はそれに加えて良し悪しの評価が加わる言葉です。また、身元は人に対してのみ使われる言葉ですが、素性は人だけでなく物に対しても使うことができます。これらが、身元と素性という言葉の明確な違いになります。
身元と素性の英語表記の違い
身元も素性も英語にすると「birth」「background」「identity」となり、例えば上記の「身元を調べる」を英語にすると「look into somebody’s background」となります。
身元の意味
身元とは
身元とは、その人の出生・出自・経歴などの事柄を意味しています。
その他にも、「一身上の事柄」の意味も持っています。
身元は身許とも書く
身元は「身許」とも書きますが、「身元」と書き表すことが一般的です。
表現方法は「身元が割れる」「身元がバレる」「身元を明かす」
「身元が割れる」「身元がバレる」「身元を明かす」などが、身元を使った一般的な言い回しです。
身元の使い方
「焼け跡から身元不明の遺体が新たに見つかった」「身元を明かすことを条件に匿名で出産できます」「LINEで身元がバレることはありますか」「被疑者の身元を洗う」などの文中で使われている身元は、「その人の出生や経歴などの事柄」の意味で使われています。
一方、「身元保証書を職場に提出する」「身元保証書の書き方を教えてください」「身元保証人がいないと施設に入所できません」「身元引受人を拒否することは可能ですか」などの文中で使われている身元は、「一身上の事柄」の意味で使われています。
身元とは、上記の例文にあるように二つの意味があり、どちらの意味でも使われているので文脈により捉える必要があります。身元の「身」は社会的な地位や立場、「元」は物事が成り立っている基礎になるものを表します。身元とは、社会的立場の根本となるような事柄を表す言葉です。
「身元保証書」の意味
上記の例文にある「身元保証書」とは、会社に就職する際に必要となる書類です。身元保証書は、被雇用者の身元を証明する人物を記載するものであり、両親や親族が身元保証人となり署名することがほとんどです。
身元の類語
身元の類語・類義語としては、家柄や家系を意味する「氏素性」、その人が今いる地位などを作り出した環境。生い立ちを意味する「バックグラウンド」、身分や地位や家柄を意味する「身上」、人の経歴や履歴を意味する「来歴」などがあります。
素性の意味
素性とは
素性とは、血筋や家柄、また、生まれ育った境遇や生まれを意味しています。
その他にも、「来歴、身もと」「出所、由緒、いわれ」などの意味も持っています。
素性は「素姓」「素生」「種姓」とも書く
素性は「素姓」「素生」「種姓」とも書きますが、「素性」と表記することが一般的です。
素性の読み方
素性の読み方は、「すじょう」のほかに「そせい」とも読みます。「そせい」と読むと、「本来の性質」という違った意味になるので注意しましょう。ちなみに、平安時代に活躍した歌人である「素性法師」は「そせいほうし」と読みます。素性法師の歌は、百人一首の一つになっています。
表現方法は「素性がわからない」「素性を明かす」「素性の知れない」
「素性がわからない」「素性を明かす」「素性の知れない」などが、素性を使った一般的な言い回しです。
素性の使い方
「仲間に自分の素性を明かす」「隠していた素性がばれる」「素性がわからない相手との結婚は認めません」「いずれ素性が知れることになるでしょう」などの文中で使われている素性は、「血筋や家柄、生まれ育った境遇」の意味で使われています。
一方、「素性の知れない人は信用できません」「婚約者の素性調査をしたい」「英語教師の素性が気になる」の文中で使われている素性は「来歴、身もと」の意味で、「素性の確かな食材で調理する」「情報の素性が明らかになる」」の文中で使われている素性は「出所、由緒」の意味で使われています。
素性という言葉は、例文にあるように複数の意味を持ちますが、主に「家柄、生まれ育った境遇」「来歴、身もと」の意味で使われています。素性の「素」は根本になるもの、「性」は生まれつきや物事に備わった性質を表し、素性とは、人や物事の生まれや出所を意味する言葉です。
素性の類語
素性の類語・類義語としては、成人するまでの過程や経歴を意味する「生い立ち」、 成長するときの環境やしつけや教育などを意味する「育ち」、その人が経てきた学業や職業などを意味する「履歴」、隠されているそのもの本来の姿を意味する「正体」などがあります。
身元の例文
この言葉がよく使われる場面としては、その人の生まれや育った場所、家柄、身の上を表現したい時などが挙げられます。
例文4の「身元不明遺体」とは、遺体として発見された時に、名前や住所などに関する情報が見当たらず、身元不明の状態であることを意味します。
素性の例文
この言葉がよく使われる場面としては、 家柄や生まれ育ち、身元、出所や由緒を表現したい時などが挙げられます。
例文1の「素性がばれる」とは、不本意ながら家柄や育ちが知るところになってしまうさまを表します。一方、「素性を明かす」とは、今まで隠していた生まれ育ちを自ら語ることを意味します。
身元と素性という言葉は、どちらも「生まれや経歴」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、生まれや経歴の良し悪しも表現したい時は「素性」を使うようにしましょう。