似た意味を持つ「貸与」(読み方:たいよ)と「貸出」(読み方:かしだし)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「貸与」と「貸出」という言葉は、どちらも「物品や金銭を貸すこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
貸与と貸出の違い
貸与と貸出の意味の違い
貸与と貸出の違いを分かりやすく言うと、貸与とは期間を定めずに貸すこと、貸出とは期間を定めて貸すことという違いです。
貸与と貸出の使い方の違い
一つ目の貸与を使った分かりやすい例としては、「音楽と同じように出版物にも貸与権が認められています」「日本学生支援機構の貸与型奨学金を申込みました」「ビジネス英語プログラムの参加者にはPCを貸与します」などがあります。
二つ目の貸出を使った分かりやすい例としては、「レンタル店では会員情報と貸出履歴を管理しています」「図書館から借りた本の貸出期間が過ぎてしまった」「教材の貸出表をExcelで作成しました」「貸出業務で得た利子は銀行の収入になります」などがあります。
貸与と貸出の使い分け方
貸与と貸出という言葉は、どちらも金銭や物品を貸すことを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
貸与とは、返すことを前提に金銭や物品を貸し与えることを意味します。アルバイトの条件に「制服貸与」と書いてあれば、仕事中に着用する制服を貸し出すことであり、アルバイトを辞める時には返却しなければなりません。貸与の場合、返却義務はありますが明確な期間設定はないことがほとんどです。
貸出とは、金品を貸して外部への持ち出しを許すことを意味します。多くは、使用の許可とともに期間が設定されるものです。図書館の本、レンタルビデオ、スキー用品のレンタルや、銀行の貸出業務などに対して用いられる言葉です。
つまり、貸与と貸出の違いは、貸す際に期間を明確に定めるか定めないかです。期間を定めずにいずれ返却することを約束して貸す場合は「貸与」、明確な期間を設定して貸す場合は「貸出」になります。
貸与と貸出の英語表記の違い
貸与も貸出も英語にすると「lending」「loan」「rental」となり、例えば上記の「貸与権」を英語にすると「right of rental」となります。
貸与の意味
貸与とは
貸与とは、金や物を貸し与えること、返すことを条件として金品の使用を許すことを意味しています。
貸与の読み方
貸与の読み方は「たいよ」、貸与品の読み方は「たいよひん」です。誤って「かしよ」「かしよしひん」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「貸与する」「貸与された」「貸与を受ける」
「貸与する」「貸与された」「貸与を受ける」などが、貸与を使った一般的な言い回しです。
貸与の使い方
貸与を使った分かりやすい例としては、「水道メーターは市の貸与品です」「貸与品契約書に署名しました」「貸与品返却書の書き方を教えてください」「メーカーより電気自動車1台を無料貸与いただくことになりました」などがあります。
その他にも、「海外留学のための貸与奨学金のご案内です」「貸与型奨学金の減額返還制度について対象者を拡大します」「日弁連は修習資金貸与制に反対し給費制を維持しています」などがあります。
貸与とは、文字通り「貸し与えること」であり、返却することを約束して金銭や物品などを貸し付けることを意味します。「与える」という文字が入っていますが、もらえるのではなく返す必要があります。貸与は日常会話では使われない文章語であり、主にビジネスシーンで用いられる言葉です。
「貸与権」の意味
貸与を用いた日本語には「貸与権」があります。貸与権とは著作権の内容の一つであり、著作権者だけが、著作物の複製物を、貸与により公衆へ提供することができるという権利のことです。昭和59年の著作権法改正により、音楽CDレンタル業を対象とする目的で作られました。
貸与の対義語
貸与の対義語・反対語としては、借りて使うことや使うために借りることを意味する「借用」、借りることをへりくだっていう語を意味する「拝借」、船・バス・航空機などを借り切ることを意味する「チャーター」などがあります。
貸与の類語
貸与の類語・類義語としては、使用料や期間などを定め物品や権利を貸したりすることを意味する「貸付」、一般には長期のものをいう機械や設備などの賃貸を意味する「リース」、農民へ稲の種もみや金銭を貸し付け利息とともに返還させた古代の制度を意味する「出挙」などがあります。
貸出の意味
貸出とは
貸出とは、物を貸して外部へ持ち出させることを意味しています。
その他にも、「金融機関などが、貸付金を支出すること」の意味も持っています。
表現方法は「貸出冊数」「貸出先別貸出金」「銀行貸出金利」
「貸出冊数」「貸出先別貸出金」「銀行貸出金利」などが、貸出を使った一般的な言い回しです。
貸出の使い方
「英語図書の貸出冊数は5冊までです」「コンビニに貸出充電器はありますか」「シンプルで使い易い貸出管理アプリを利用しています」「貸出表のテンプレートをダウンロードする」などの文中で使われている貸出は、「物を貸して外部へ持ち出させること」の意味で使われています。
一方、「日限は貸出先別貸出金を公表しています」「銀行貸出金利が10年ぶり上昇している」「貸出は銀行の基本的資金運用です」などの文中で使われている貸出は、「金融機関が貸付金を支出すること」の意味で使われています。
貸出は、「貸し出し」「貸出し」とふりがなを付けて表記されることがあります。「貸出」と「貸し出し」「貸出し」の明らかな使い分けはありませんが、名詞としては「貸出」、動詞としては「貸し出し」と書かれることが多いようです。
貸出とは、上記の例文にあるように、二つの意味があります。一般的には、「図書の貸出カード」のような使われ方で、外部へ持ち出させるように物を貸し与えることの意味で用いられています。また、金融用語として、銀行が取引先に資金を貸し与えることの意味も持っています。
「貸出金利」の意味
貸出を用いた日本語には「貸出金利」があります。貸出金利とは、金融機関が企業や個人に資金を貸し出すときの利息のことです。企業の業績や個人の資産状況によって、利率は異なります。
貸出の対義語
貸出の対義語・反対語としては、金品などを借りて自己のもとに取り入れることを意味する「借入れ」、金を借りることを意味する「借財」、金銭を借りることを意味する「借金」などがあります。
貸出の類語
貸出の類語・類義語としては、金銭や土地などを貸し付けることを意味する「貸付」、貸付や貸付金を意味する「ローン」、賃貸しや賃借りを意味する「レンタル」、賃料を取り物を相手方に貸すことや賃貸しを意味する「賃貸」などがあります。
貸与の例文
この言葉がよく使われる場面としては、金銭や物品を貸し与えることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「貸与型奨学金」とは、奨学金のうち、卒業後に返還する必要があるものを指します。対する言葉には「給付型奨学金」があり、卒業後に返還する必要はありません。
貸出の例文
この言葉がよく使われる場面としては、金銭や本などの品物を貸すこと、銀行の手形割引・手形貸付・当座貸越・証書貸付の総称を表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「貸出預金動向」とは、日本銀行が毎月公表しているデータであり、都市銀行や地方銀行、信用金庫などの金融機関の貸出額と預金額が記されています。国内の経済活動の状況を把握する目的で作成される統計です。
貸与と貸出という言葉は、どちらも「金銭や物品を貸すこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、期間を定めずに貸し与えることを表現したい時は「貸与」を、期間を定めて貸すことを表現したい時は「貸出」を使うようにしましょう。