似た意味を持つ「過ぎる」(読み方:すぎる)と「過る」(読み方:よぎる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「過ぎる」と「過る」という言葉は、どちらも通り過ぎることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「過ぎる」と「過る」の違い
「過ぎる」と「過る」の意味の違い
「過ぎる」と「過る」の違いを分かりやすく言うと、「過ぎる」は持続的な動作を表すこと、「過る」は瞬間的な動作を表すことという違いです。
「過ぎる」と「過る」の使い方の違い
一つ目の「過ぎる」を使った分かりやすい例としては、「育児に追われているうちに一年が過ぎる」「作業を開始してから2時間が過ぎる」「車で品川駅の前を過ぎる」「彼女は世話を焼き過ぎるところがある」「あれから10年が過ぎた」などがあります。
二つ目の「過る」を使った分かりやすい例としては、「目の前を黒い影が過る」「あの頃の思い出が一瞬頭を過る」「大事なことが脳裏を過る」「彼女の言い分に一瞬疑問が過る」「懐かしい思い出が胸を過る」「あの出来事が丁度頭を過る」などがあります。
「過ぎる」と「過る」の使い分け方
「過ぎる」と「過る」はどちらも通り過ぎることを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「過ぎる」は「時間が過ぎる」「わがままが過ぎる」などのように、時間や程度が一定の基準を超えることを示しており、持続的な動作を表す場合に使います。
一方、「過る」は「目の前を誰かが過る」「思い出が胸を過る」などのように、一瞬のうちに過ぎることを示しているので、瞬間的な動作を表す場合に使うというのが違いです。
「過ぎる」と「過る」の英語表記の違い
「過ぎる」を英語にすると「pass」「go through」「exceed」「be over」となり、例えば上記の「あれから10年が過ぎた」を英語にすると「Ten years have passed since then」となります。
一方、「過る」を英語にすると「cross」「go beyond」となり、例えば上記の「あの出来事が丁度頭を過る」を英語にすると「That incident just went beyond my mind」となります。
「過ぎる」の意味
「過ぎる」とは
「過ぎる」とは、ある場所を通り越すことを意味しています。
その他にも、時間が経過すること、一定の数量を超えること、普通の程度を超えること、釣り合わないほど優れていること、行動や状態などが度を超えていることの意味も持っています。
表現方法は「時間が過ぎる」「可愛いが過ぎる」
「時間が過ぎる」「可愛いが過ぎる」などが、「過ぎる」を使った一般的な言い回しになります。
「過ぎる」の使い方
「ここで嵐が過ぎるの待とう」「話が盛り上がってしまい予定の時間を過ぎる」などの文中で使われている「過ぎる」は、「ある場所を通り越すことや時間が経過すること」の意味で使われています。
一方、「彼女は四十を過ぎてもとても美人です」「彼はわがままが過ぎる」などの文中で使われている「過ぎる」は、「一定の数量を超えることや普通の程度を超えること」の意味で使われています。
「過ぎる」は複数の意味を持つ動詞ですが、どの意味でも使われています。
「過ぎる」は時間や程度が一定の基準を超えることを示しており、持続的な動作を表す場合に使うのが一般的です。また、時間や程度などの抽象的なものだけではなく、「駅の前を過ぎる」のように空間的に移動する場合にも使うことが可能です。
「過ぎる」の類語
「過ぎる」の類語・類義語としては、時が過ぎることを意味する「経つ」、時日が過ぎることを意味する「経る」、時間が過ぎることを意味する「移る」、ある季節や時期が遠のくことを意味する「去る」などがあります。
「過る」の意味
「過る」とは
「過る」とは、前を横切ることを意味しています。
表現方法は「頭を過る」「脳裏を過る」
「頭を過る」「脳裏を過る」「胸を過る」などが、「過る」を使った一般的な言い回しになります。
「過る」の読み方
「過る」の読み方は「よぎる」です。誤って「すぎる」「あやまる」などと読まないようにしましょう。
「過る」の使い方
「過る」を使った分かりやすい例としては、「不安が心を過る」「ここに来ると嫌な思い出が頭を過る」「ハイリスクハイリターンのアイデアが頭を過る」「目の前を人影が過る」「よこしまな考えが私の頭を過る」などがあります。
「過る」は前を横切ることを意味する動詞です。また、途中で立ち寄ることや避けるの意味持っているのですが、現代ではほとんど使われておらず、古文でのみ使われている表現になります。
「過る」は一瞬のうちに過ぎることを示しているので、瞬間的な動作を表す場合に使うのが一般的になっています。
「過る」は公用文で使えない
「過る」を使う上で注意しなければならないのは、公用文では使えないという点です。なぜなら、「よぎる」という読み方が、常用漢字表にはない読み方だからです。そのため、公用文で使用したい場合はひらがなの「よぎる」に置き換えるようにしましょう。
常用漢字とは、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安として、内閣告示の常用漢字表で示された日本語の漢字のことです。
常用漢字はあくまで漢字使用の目安であって制限ではないので、常用漢字以外は使えないというわけではありません。ただし、公用文や新聞などでは常用漢字を使用するのが好ましいとされています。
「過る」の類語
「過る」の類語・類義語としては、通り越してゆくことを意味する「過行く」、時間が経過することを意味する「流れる」などがあります。
「過ぎる」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある場所を通り越すことを表現したい時などが挙げられます。
その他にも、時間が経過すること、一定の数量を超えること、普通の程度を超えること、釣り合わないほど優れていること、行動や状態などが度を超えていることを表現したい時にも使います。
例文1はある場所を通り越すこと、例文2は時間が経過すること、例文3は一定の数量を超えること、例文4は普通の程度を超えること、例文5は釣り合わないほど優れていることの意味で使っています。
「過る」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、前を横切ることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「過る」は瞬間的な動作を表す場合に使う言葉です。
「過ぎる」と「過る」はどちらも通り過ぎることを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、持続的な動作を表すことを表現したい時は「過ぎる」を、瞬間的な動作を表すことを表現したい時には「過る」を使うと覚えておきましょう。