似た意味を持つ「出自」(読み方:しゅつじ)と「出生」(読み方:しゅっしょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「出自」と「出生」という言葉は、どちらも「人の生まれや家柄」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
出自と出生の違い
出自と出生の意味の違い
出自と出生の違いを分かりやすく言うと、出自とは生まれた土地や家柄のみを表し、出生とは生まれた土地や家柄だけでなく人が生まれることも表すという違いです。
出自と出生の使い方の違い
一つ目の出自を使った分かりやすい例としては、「彼の出自については不明です」「法律で出自を知る権利を保障すべきです」「選挙広報で候補者の出自経歴を確認する」「合法でも違法でも資金自体の出自は問わない」などがあります。
二つ目の出生を使った分かりやすい例としては、「出生率は6年連続で前年を下回っています」「出生前診断は受けません」「出生率低下の原因は何ですか」「出生届はいつまでに出すものですか」「とうとう自分の出生を明かすことにした」などがあります。
出自と出生の使い分け方
出自と出生という言葉は、どちらも生まれた土地や家柄を意味します。この意味で使われている上記の「出自については不明」「自分の出生を明かす」の出生と出自は、互いに置き換えて使うことができます。
さらに出生という言葉は、「人が生まれること」の意味も持っています。この意味で使われている「出生率」「出生届」「出生前診断」の出生は、出自という言葉に置き換えることはできません。
また、出生は人に対して使う言葉ですが、出自は「資金の出自は問わない」のように、人だけでなく事物に対しても使うことができます。
これらが、出自と出生という言葉の明確な違いになります。
出自と出生の英語表記の違い
出自を英語にすると「descent」「birthplace」「origin」となり、例えば上記の「彼の出自については不明です」を英語にすると「His origin is unknown」となります。
一方、出生を英語にすると「birth」「geniture」となり、例えば上記の「出生率」を英語にすると「the birth rate」となります。
出自の意味
出自とは
出自とは、人の生まれ、事物の出どころを意味しています。
出自の読み方
出自の読み方は「しゅつじ」です。誤って、出自を「でじ」と読まないようにしましょう。
表現方法は「出自が卑しい」「出自が良い」「出自が悪い」
「出自が卑しい」「出自が良い」「出自が悪い」などが、出自を使った一般的な言い回しです。
出自の使い方
出自を使った分かりやすい例としては、「発音からすると東北の出自ではなか」「英語の先生の出自が気になる」「島の出自である人は時間の使い方がゆったりしています」などがあります。
その他にも、「生殖補助医療に関連して出自を知る権利が議論されました」「戦後は出自不明の孤児がたくさんいました」「性別や出自は問わないのですが資格は必須条件です」「噂の出自は彼女なのではないかと疑う」などがあります。
出自の「出」は生まれることを表し、「自」は起点を示しまる。出自とは、人の生まれや出身、あるいは物事が出てきたもとの所を意味する言葉です。また、文化人類学では、個人が出生すると同時に特定の祖先を共通にする集団を決定する原理も意味します。
「出自を知る権利」の意味
上記の例文にある「出自を知る権利」とは、自分がどのようにして生まれたのか、自分の遺伝的ルーツはどこにあるのかを知る権利のことです。人工授精や代理出産などの生殖補助医療が進歩を遂げることにより、権利の法制化が議論されるようになりました。
出自の対義語
出自の対義語・反対語としては、育ってゆくことや成長することを意味する「生い立ち」、成長するときの環境や育てられ方を意味する「育ち」などがあります。
出自の類語
出自の類語・類義語としては、その土地や身分などの生まれであることを意味する「出身」、人の出生や経歴などの事柄を意味する「身元」、血筋や生まれ育った境遇を意味する「素性」、物事が出てきたもとの所を意味する「出所」などがあります。
出生の意味
出生とは
出生とは、生まれでること、人が生まれることを意味しています。
その他にも、「ある土地・境遇・家柄の生まれであること」の意味も持っています。
出生の読み方
出生の読み方は三通りあり、「しゅっしょう」の他に「しゅっせい」「すいさん」があります。どれも正しい読み方ですが、「しゅっしょう」と読むことが一般的です。また、「すいさん」と読む場合は食事を施すことを意味する仏教用語になります。
表現方法は「出生を証明する」「出生の秘密」「出生を知る権利」
「出生を証明する」「出生の秘密」「出生を知る権利」などが、出生を使った一般的な言い回しです。
出生の使い方
「出生届の書き方を教えてください」「出生前診断の費用はどれぐらいですか」「合計特殊出生率の推移を表したグラフです」「出生時育児休業を利用して会社を休みます」などの文中で使われている出生は、「人が生まれること」の意味で使われています。
一方、「彼の出生の秘密を教えてあげる」「彼女の出生は明らかになっていない」「出生に関して口外することはありません」などの文中で使われている出生は、「ある土地や家柄の生まれであること」の意味で使われています。
出生とは、上記の例文にあるように二つの意味があります。一つは「出生届」「出生率」のように人の生まれることを客観的に表現し、もう一つは「出生の秘密」のように生まれた環境や家柄を表し、文脈により意味を判断する必要があります。
「出生届」の意味
上記の例文にある「出生届」とは、生まれてきた子どもの氏名等を戸籍に記載するための届出です。出生届の読み方は「しゅっしょうとどけ」です。出生は「しゅっせい」とも読みますが、出生届を「しゅっせいとどけ」と読むのは誤読とされます。
「出生率」の意味
出生を用いた日本語には「出生率」があります。出生率とは、一定人口に対するその年の出生数の割合です。「普通出生率」とは人口1000人に対する1年間の出生数の比率であり、「合計特殊出生率」とは15~49歳までの全女性の年齢別出生率を合計したものです。
出生の対義語
出生の対義語・反対語としては、人が死ぬことや死去を意味する「死亡」、遠の眠りにつくことを意味する「永眠」、永眠や逝去を意味する「長逝」、命が絶えることを意味する「絶命」などがあります。
出生の類語
出生の類語・類義語としては、人が生まれることや物事が新しくできることを意味する「誕生」、人が生まれることを意味する「生誕」、聖人や偉人などがこの世に生まれることを意味する「降誕」などがあります。
出自の例文
この言葉がよく使われる場面としては、生まれた家柄・血統・土地、物事の出どころを表現したい時などが挙げられます。
例文3の「出自が卑しい」とは、ある人の生まれた出身地や家柄などが、他者と比較した場合に劣っていることを表しています。「卑しい」とは、身分的地位や社会的地位が低いことや、品位に欠けていることを意味します。
出生の例文
この言葉がよく使われる場面としては、生まれ出ること、生まれた境遇や場所を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「出生前診断」とは、妊娠中に胎児に先天性の病気や染色体異常がないかどうかを調べる検査のことです。出産する前に行うことから「出生前診断」「出生前検査」と呼ばれています。
出自と出生という言葉は、どちらも「生まれた土地や家柄」を表します。さらに「出生」には、「人が生まれること」という意味があることを覚えておきましょう。