【前記】と【前述】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「前記」(読み方:ぜんき)と「前述」(読み方:ぜんじゅつ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「前記」と「前述」という言葉は、どちらも「前に位置する事柄」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




前記と前述の違い

前記と前述の意味の違い

前記と前述の違いを分かりやすく言うと、前記とは前に位置する客観的な事柄を表し、前述とは前に述べた主観的な事柄を表すという違いです。

前記と前述の使い方の違い

一つ目の前記を使った分かりやすい例としては、「詳しい仕様については前記参照のこと」「内容をかいつまんでサマリーを前記するように」「前記の通り定員に達しましたので、募集を締め切らせていただきます」などがあります。

二つ目の前述を使った分かりやすい例としては、「前述したようにネットスラングは増え続けています」「前述した通り文章を書く時にはルールがあります」「前述の通り地球温暖化は様々な影響を及ぼしています」などがあります。

前記と前述の使い分け方

前記と前述という言葉は、どちらも会話ではほとんど使われない文章語であり、論文やレポートなどで使用されています。二つの言葉は「前に位置する事柄」を指し示しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。

前記とは、「前に書き記したこと」を表し、文章の中で、それより前の部分で記した事柄を指す言葉となっています。指し示す内容が、日時や場所あるいは事実など客観的事柄の場合によく使われる表現です。

前述とは、「前に述べたこと」を表す言葉であり、「前記」と同様に前に記した事柄を指し示しますが、「前述」はどちらかというと、意見や考えなどの主観的な事柄に対して使われています。

前記と前述の英語表記の違い

前記も前述も英語にすると「aforesaid」「above-mentioned」「above」となり、例えば上記の「前記参照」を英語にすると「See above」となります。

前記の意味

前記とは

前記とは、その文章より前の部分に書くことを意味しています。

その他にも、「本文の前に書き記すこと」「前代の記録文書、旧記」の意味も持っています。

表現方法は「前記した通り」「前記したように」「記の通りです」

「前記した通り」「前記したように」「記の通りです」などが、前記を使った一般的な言い回しです。

前記の使い方

「前記のように公用文における漢字使用にはルールがあります」「法律の整備状況は前記の通りです」「英語のレポートは前記の例に準じて記述してください」などの文中で使われている前記は、「その文章より前の部分に書くこと」の意味で使われています。

一方、「この本に編集後記はあるけど編集前記はないようだ」の文中で使われている前記は「本文の前に書き記すこと」の意味で、「薩摩藩に関連する前記や記録を集めています」などの文中で使われている前記は「前代の記録文書」の意味で使われています。

前記とは、文字通り「前に記すこと」を表しており、例文にあるように複数の意味を持ちます。ほとんどの場合「その文章より前の部分に書くこと」の意味で用いられ、「本文の前に書き記すこと」「前代の記録文書」の意味で使われることは少なくなっています。

前記と上記の違い

前記と同じような意味を持つ言葉に「上記」があります。上記は横書きの文章でのみ使用できる言葉ですが、前記は横書きでも縦書きでも使える表現です。

前記の対義語

前記の対義語・反対語としては、その文章よりあとの方に書くことを意味する「後記」、文章でそれより後に示してあることを意味する「後掲」、ある記事や文章のあとに書き記すことを意味する「下記」などがあります。

前記の類語

前記の類語・類義語としては、文章でそれより前に示してあるものを意味する「前出」、すでに示されていることを意味する「既出」、文章でその箇所よりも前に書き記されたことを意味する「前掲」、前に書いてあることを意味する「上記」などがあります。

前述の意味

前述とは

前述とは、前に述べたことを意味しています。

前述の読み方

前述の読み方は、「ぜんじゅつ」です。誤って「まえじゅつ」「せんじゅつ」などと読まないようにしましょう。

表現方法は「前述の通り」「前述のように」「前述を踏まえて」

「前述の通り」「前述のように」「前述を踏まえて」などが、前述を使った一般的な言い回しです。

前述の使い方

前述を使った分かりやすい例としては、「前述したように教育格差は所得格差が原因です」「前述の通り、幼児期からの英語教育は常識となっています」「前述で紹介したビジネスモデルは現代で通用しません」などがあります。

その他にも、「前述した正しい使い方を怠ると事故を招きます」「前述したように英語留学は特別なことではありません」「こちらが前述でお話した点を修正したスライドです」などがあります。

前述という言葉の「述」は、考えや意見を口に出して言ったり、書いたりすることを表す漢字です。前述とは、前に書いた自分の考えや意見、あるいは説明などを指し示す際に用いる言葉です。前述は「先述」と言い換えることができます。

「前述で述べたように」「前述で述べた通り」は二重表現

前述を用いた誤った言い回しには「前述で述べたように」「前述で述べた通り」などがあります。「前述」には「述べる」という意味が含まれており、これらの表現は「頭痛が痛い」と同じ二重表現なので誤用とされています。

前述の対義語

前述の対義語・反対語としては、あとで述べることを意味する「後述」、それより後に述べることを意味する「以下」などがあります。

前述の類語

前述の類語・類義語としては、すでに述べたことを意味する「既述」、前に述べてあることやその部分を意味する「先述」、前に述べたことを意味する「前陳」、上で述べたことを意味する「上述」」などがあります。

前記の例文

1.前記に述べた通り、感染症対策の考え方は人それぞれ異なります。
2.前記のように、パソコンの使い方を知らないと就職してから苦労します。
3.前記の公用文作成要領は、国家公務員にとって文章作成の手引きとなっています。
4.氏名や住所の記載については、前記の使用できる文字で記入してください。
5.PTA広報誌に編集後記はよくみかけますが、編集前記はみたことがありません。
6.英語検定は3級以上になると前記の筆記試験に加えて、面接試験が行われるのでその対策も必要になってくる。
7.詳しい仕様については前記参照のことと書いてあったが、どこに書いてあるのかページ数くらい書いておいてほしいものだ。
8.資料の冒頭は全体の内容をかいつまんで概略を前記するようにしているが、私にとってこれが一番苦手な作業であった。
9.前記の通り、わが校では昨年からは定期テストで基準点を満たさない場合は、赤点予備軍として扱われることになった。
10.この通りはずいぶんと変わった名称であるが、おそらく前記の地元で祀られている神様の名からきているのであろう。

この言葉がよく使われる場面としては、その文章より前の部分に書くこと、本文の前に書き記すこと、かつて記した文書や記録を表現したい時などが挙げられます。

例文1から例文4にある前記は、「その文章より前の部分に書くこと」の意味で用いられています。例文5の前記は、「本文の前に書き記すこと」の意味で用いられています。

前述の例文

1.前述の通り、リチウムイオン電池は使い方を間違えると大変危険です。
2.前述したように、過剰な敬語はかえって失礼になってしまうことがあります。
3.前述の論文によると、性的マイノリティの権利保障は国際社会でも大きな課題となっています。
4.あくまでロゴはデザイン上の表現ですので、文章表記する際は前述の正式名称のとおりになります。
5.マーケティングの概念は前述の通りですが、簡単に言い換えると「商品を売るための仕組み作り」なのです。
6.前述の通り若い人にも関心を持ってもらいたいので、チラシやポスターなど発信は紙媒体だけに頼らずSNSも活用すべきです。
7.前述したようにネットスラングは増え続けていますが、使われなくなってしまったものも多く、栄枯盛衰の様相を呈しています。
8.私は前述の通り飛行機に遅刻したことは一度もないのだが、この時はお酒を飲み過ぎたせいで寝坊をして遅刻しそうになった。
9.この作品について必ずしも全員が全員前述のように感じるわけではなく、中にはあまり面白くなかったとまでいう人もいる。
10.記述の重大なミスの結果として書籍はすべて回収されて、改訂版を新たに出版したことは、前述の通りである。

この言葉がよく使われる場面としては、前に述べてあること、先述を表現したい時などが挙げられます。

前述という言葉は、先に述べた内容を表し、特に自分の意見や考えなどの主観的な事柄を指す場合に多く使われています。

前記と前述という言葉は、どちらも「前に位置する事柄」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、前に位置する客観的な事柄を表現したい時は「前記」を、前に述べた主観的な事柄を表現したい時は「前述」を使うようにしましょう。

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