似た意味を持つ「長じる」(読み方:ちょうじる)と「長ずる」(読み方:ちょうずる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「長じる」と「長ずる」という言葉は、どちらも成長すること、優れていること、という共通点があり、使う場面は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
長じると長ずるの違い
長じると長ずるの意味の違い
長じると長ずるの違いを分かりやすく言うと、辞書に載っている現代風の読み方か、古い読み方かの違いです。「長じる」と「長ずる」は、どちらも同じ意味を持つ言葉で、現代では「長じる」の方を一般的な読み方として使用しています。
長じると長ずるの使い方の違い
一つ目の長じるを使った分かりやすい例としては、「この打者は打撃力に長じている」「年齢が長じるにつれて優しくなった」「違う手法に長じるべきだ」「この会社は他の事業に長じるほかない」などがあります。
二つ目の長ずるを使った分かりやすい例としては、「政治に長ずる者」「アメリカはITに長ずる国だ」「長ずるに及ぶも昔と変わらない」などがあります。
長じると長ずるの2つが存在する理由
なぜ、長「じる」と長「ずる」という二種類の語尾が存在するのか。これは、日本語の口語文法と文語文法の決まりによる違いがあるからです。口語文法とは、しゃべり言葉のことで、文語文法とは、文章で書く際の言葉という意味です。
これらの日本語文法には「活用法」という考え方があります。活用法とは、文章の流れによって単語の語尾を違和感のないように変えることを意味します。
まさしく「長じる」「長ずる」のように、最初の言葉は同じであっても語尾が違う言葉が存在するのは、活用法によって文脈に合うかたちで語尾が変えられているからです。
長じる、長ずるという言葉は「サ行変格活用」という活用法によって、語尾を変えています。サ行変格活用では、文章の流れによって語尾をサ行の言葉である「さしすせそ」を元にして変えていきます。
「長じる」「長ずる」という言葉の場合、「長」という先頭の言葉はそのままに、語尾を「未然形:じ」「連用形:じ」「終止形:じる・ずる」「連体形:じる・ずる」「仮定形:じれ・ずれ」「長令形:じろ・じよ・ぜよ」という風に変化させます。
語尾の変化の形である未然形や連用形などの名称は、その言葉がどのような文脈で使われているかの形のことを指しています。例えば「未然形」というのは「まだそうなってはいない」という意味を持ち、否定形と一緒に使われます。
つまり、長じるの未然形の表現は「長じない」となります。変化しない先頭の「長」に未然形の「じ」をつけて、最後に否定形の「ない」を付けた形です。
このように、日本語には、様々な文法上の決まりがあります。「長じる」「長ずる」というのは、両方ともこの文法で言うところの「終止形」です。
終止形というのは、言い切りの形という意味があります。文章ではなく、ひとつの単語として使う際には終止形を使います。
長じると長ずるの使い分け方
「長」の終止形には「じる」と「ずる」の二種類があります。これが「長じる」と「長ずる」の違いです。二種類の語尾がある場合、どちらを使っても間違いではありませんが、どちらか一方が、一般的に使われているものであることがほとんどです。
「長」の場合、辞書に記載されているのは「長じる」という言葉です。こちらが、現代では一般的に使用されている言葉であり、「長ずる」というのは古い言い方になります。
しかし、意味に違いはありませんし、どちらも文法的には使えるものですので、個々人の好みや文章の前後の文脈などを考えて、自由に使い分けが出来るものであると言えます。
長じるの意味
長じるとは
長じるとは、成長することや優れていることを意味しています。
表現方法は「長じるにつれ」「長じるにつれて」「長じて」
「長じるにつれ」「長じるにつれて」「長じて」などが、長じるを使った一般的な言い回しです。
長じるの使い方
長じるを使った分かりやすい例としては、「木が長じて実をなす」「息子が長じて東京に上京した」「この仕事に長じている」「あの若者は長じて医師となった」などがあります。
長じるの類語
長じるの類語・類義語としては、一人前になることを意味する「大人びる」、果物などが熟することを意味する「成熟する」、広がりが増すことを意味する「伸びる」、盛りの状態になることを意味する「長ける」などがあります。
長じるの長の字を使った別の言葉としては、大きくなることを意味する「成長」、期間が延びることを意味する「延長」などがあります。
長ずるの意味
長ずるとは
長ずるとは、長じるという言葉の少し古い言い方を意味しています。長ずるというのは「長ず」という言葉のサ行変格活用の終止形です。
長ずるの使い方
長ずるを使った分かりやすい例としては、「怠け者にも長ずる所はある」「長ずることも無く今に至る」「普段はダメ夫でも長ずる才能はある」などがあります。
表現方法は「長ずるに及び」「長ずるに及ぶ」
上記以外では「長ずるに及び」「長ずるに及ぶ」などが、長ずるを使った一般的な言い回しです。
長ずるは辞書に載っていない
意味としては、長じると全く同じものであり、文章の前後の文脈などによって使い分けることが出来るものです。辞書には「長じる」は載っていても、「長ずる」という言葉は載っていないことが多く、長ずるは現代語よりも少し古い表現です。
しかし、意味は同じであるので、「長じる」「長ずる」のどちらを使っても間違いではありません。古風な雰囲気を出したい時などには、あえて「長ずる」という言葉を使うのも良いでしょう。
他にも、例えば「長ず」という言葉の長令形を考えてみると、現代風の言い方であれば「長じろ」となりますが、古風な言い回しになると「長じよ」または「長ぜよ」となります。
この「長じよ」「長ぜよ」と同じ雰囲気を持つのが「長ずる」であると考えると、わかりやすいでしょう。
長じるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、成長することや優れていることを表現で表したい時などが挙げられます。
例文1では小さい子供が大きくなり成長したことを表現するために「長じて」を使い、一方例文2では努力を続ける才能が他の人よりも優れていることを表現するために「長じて」という言葉を使っています。
長ずるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、長じるという言葉を少し古風な表現で表したい時などが挙げられます。
上記の例文を見れば分かる通り、「長ずる」を「長じる」に置き換えても文章としての問題は全くありません。