似た意味を持つ「捨象」(読み方:しゃしょう)と「抽象」(読み方:ちゅうしょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「捨象」と「抽象」という言葉は、どちらも「ある特徴を抜き出すこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
捨象と抽象の違い
捨象と抽象の意味の違い
捨象と抽象の違いを分かりやすく言うと、捨象とは特定の特徴以外を切り捨てることを表し、抽象とは特定の特徴だけを抜き出すことを表すという違いです。
捨象と抽象の使い方の違い
一つ目の捨象を使った分かりやすい例としては、「捨象主義作家の作品をコレクションしています」「個別事象の差異を捨象して概念化する」「具体性を捨象して抽象化する」「抽象と捨象によって、それが何であるか把握する」などがあります。
二つ目の抽象を使った分かりやすい例としては、「話が抽象的すぎて何を言っているのか分かりません」「抽象画の描き方を教えてほしい」「抽象的思考で柔軟なアイデアを生み出す」「抽象美術には果てしない可能性がある」などがあります。
捨象と抽象の使い分け方
捨象と抽象という言葉は、どちらも対象となる事物から、ある特徴を抜き出して把握したり概念化したりすることを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
抽象とは、対象物の特定の性質だけに着目して把握することを意味する言葉です。例えば、「犬」という対象物があった場合に、「飼い主に従順」「縄張り意識がある」「吠える」など、ある特徴を取り出すことです。
捨象とは、対象となる事物から特定の特徴を抜き出す抽象を行う際に、それ以外の特徴を捨て去ることを意味します。例えば、「犬は飼い主に従順である」と抽象化した場合に、「縄張り意識」や「吠える」という他の特徴を切り捨てる作業のことです。
つまり、特定の性質を取り上げることを「抽象」と言い、その抽象化により他の性質が切り捨てられることを「捨象」と言います。二つの言葉は密接な関係にありますが、意味や使い方が異なることに注意しましょう。
捨象と抽象の英語表記の違い
捨象も抽象も英語にすると「abstraction」となり、例えば上記の「捨象主義」を英語にすると「abstractionism」となります。
捨象の意味
捨象とは
捨象とは、事物または表象からある要素・側面・性質を抽象するとき、他の要素・側面・性質を度外視することを意味しています。
捨象の読み方
捨象の読み方は「しゃしょう」です。誤って「しゃぞう」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「捨象する」「捨象して」「捨象されていた」
「捨象する」「捨象して」「捨象されていた」などが、捨象を使った一般的な言い回しです。
捨象の使い方
捨象を使った分かりやすい例としては、「財政支出の実態を捨象してわかりやすく説明します」「細部を捨象してラフスケッチを描きましょう」「捨象と抽象化によって本質を伝えることができます」などがあります。
その他にも、「色や材質などの属性を捨象して形に着目する」「具体的なアルゴリズムは捨象されます」「捨象されていた要素を取り込む」「英語圏とアジア圏の差異を捨象する」「対象を捨象した統計学の使い方を教えましょう」などがあります。
捨象とは、物事や概念のある要素や性質などを取り出して抽象する時に、それ意外の特性を考えのうちから捨て去ることを意味します。捨象の「捨」は訓読みで「すてる」と読み、関わりのないものとして放っておくこと、「象」は目に見える姿や形を表す漢字です。
捨象は、思考における手法の一つで、物事や概念を抽象化する際のプロセスです。例えば、「黒猫」と「三毛猫」の二匹の猫がいるとき、この二匹を「猫」と捉えることが抽象化です。一方、抽象化する過程で、猫種や毛の色といった二匹の猫の特徴を省いていくことを捨象と言います。
捨象の対義語
捨象の対義語・反対語としては、物事が直接に知覚され認識されうる形や内容を備えていることを意味する「具体」、実際に具体的な形に現すことを意味する「具現」などがあります。
捨象の類語
捨象の類語・類義語としては、事物に共通する性質を抽象しその性質を一つの概念にまとめることを意味する「概括」、込み入っている物事を単純にすることを意味する「単純化」などがあります。
抽象の意味
抽象とは
抽象とは、事物または表象からある要素・側面・性質を抜き出して把握することを意味しています。
表現方法は「抽象的」「抽象画」「抽象美術」
「抽象的」「抽象的思考」「抽象美術」などが、抽象を使った一般的な言い回しです。
抽象の使い方
抽象を使った分かりやすい例としては、「英語の先生の説明が抽象的で理解できません」「抽象画は簡単そうに見えて実は難しい」「抽象物のフリーイラストをダウンロードする」「具体的思考と抽象的思考を意識して使い分けよう」などがあります。
その他にも、「プログラミングは抽象化思考を鍛えると思います」「インターフェースと抽象クラスの違いを説明します」「抽象メソッドの実装は派生クラスで行います」「具体的なものを抽象化して考える」などがあります。
抽象という言葉の「抽」は、訓読みで「ひく」「ぬく」と読み、引っ張って外へ出すことを表す漢字です。形や姿を表す「象」と組み合わさり、抽象とは、目で見たり手で触ったりして知覚できる形を備えているものから、本質的な面を抜き出して把握することを意味します。
「抽象画」の意味
上記の例文にある「抽象画」とは、現実世界における具体的な対象を写しとらず、形状や色または、線といった造形要素を使って構成される絵画のことです。抽象画の代表的な画家には、ロシア出身のカンディンスキーやスイス出身のパウルクレーなどがいます。
抽象の対義語
抽象の対義語・反対語としては、ものが実体を備え固有の形体を持っていることを意味する「具象」、思想や観念などを具体的な形であらわすことを意味する「体現」などがあります。
抽象の類語
抽象の類語・類義語としては、特殊なものから普遍的な法則や概念を作り出すことを意味する「普遍化」、さまざまな事物に共通する性質を抽象し一つの概念にまとめることを意味する「一般化」などがあります。
捨象の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事の表象から特徴を分けて取り出す抽象を行なう場合に、それ以外の特徴を捨て去ることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にあるように、概念とは、物事に共通している特徴を抽象化して理解する思考内容です。物事に共通していない特徴は捨象することになります。
抽象の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある認識の仕方をするために、いろいろな表象や概念から特定の性質や状態だけを抜き出すことを表現したい時などが挙げられます。
例文2の文中にある抽象化とは、象のある特徴だけを抜き出し、残りは無視するという思考の手法です。例文4の「抽象的」とは、一般的であるさまを意味しますが、転じて、具体性に欠けており分かりにくいさまを表す言葉です。
捨象と抽象という言葉は、どちらも「ある特定の特徴を抜き出すこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、ある特定の特徴以外を無視することを表現したい時は「捨象」を、ある特定の特徴だけを抜き出して把握することを表現したい時は「抽象」を使うようにしましょう。