似た意味を持つ「陶酔」(読み方:とうすい)と「恍惚」(読み方:こうこつ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「陶酔」と「恍惚」という言葉は、どちらも「うっとりする様子」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
陶酔と恍惚の違い
陶酔と恍惚の意味の違い
陶酔と恍惚の違いを分かりやすく言うと、陶酔とはうっとりする様子のみを表し、恍惚とはうっとりする様子だけでなく意識がもうろうとしている様子も表すという違いです。
陶酔と恍惚の使い方の違い
一つ目の陶酔を使った分かりやすい例としては、「おいしいお酒に陶酔する」「アルコールは陶酔感をもたらす」「幻想的な景色に陶酔する」「自分の美しさに自己陶酔しているようだ」「幻のライブ映像に陶酔感が湧き上がる」などがあります。
二つ目の恍惚を使った分かりやすい例としては、「クラシック演奏に恍惚として聴き入る」「恋人同士が恍惚とした目で見つめ合う」「ライブで夢見心地の恍惚状態になる」「祖父は認知症で恍惚の人となった」などがあります。
陶酔と恍惚の使い分け方
陶酔と恍惚という言葉は、どちらも心を奪われてうっとりするさまを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
陶酔とは、「お酒に陶酔する」のような使い方で、うっとりと気持よく酔うことを意味します。また、「景色に陶酔する」のような使い方で、うっとりするほど心を奪われることを意味します。上記の例文にある「自己陶酔」とは、自らの長所などに満足して自分にうっとりすることを表す言葉です。
恍惚とは、「恍惚として聴き入る」のような使い方で、心を奪われてうっとりするさまを意味します。さらに恍惚という言葉は、「恍惚の人」のような使い方で意識がはっきりしないさまや、老人が病的にぼんやりしているさまも意味します。陶酔にはこのような意味がない点が、明確な違いになります。
二つの言葉を比べると、陶酔よりも恍惚の方が広い意味を持ち、幅広いシーンで使われる言葉だと言えるでしょう。
陶酔と恍惚の英語表記の違い
陶酔を英語にすると「intoxication」「euphoria」「rapture」となり、例えば上記の「陶酔する」を英語にすると「be intoxicated」となります。
一方、恍惚を英語にすると「ecstasy」「trance」「rapture」となり、例えば上記の「恍惚として」を英語にすると「in an ecstasy」となります。
陶酔の意味
陶酔とは
陶酔とは、気持ちよく酔うことを意味しています。
その他にも、「心を奪われてうっとりすること」の意味も持っています。
陶酔の読み方
陶酔の読み方は「とうすい」です。誤って「ようすい」「とうよう」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「陶酔する」「陶酔効果」「陶酔感」
「陶酔する」「陶酔効果」「陶酔感」などが、陶酔を使った一般的な言い回しです。
陶酔の使い方
「ほどよい飲酒は陶酔感をもたらします」「本格焼酎で陶酔境に浸る」「お酒に陶酔するのはいいけど泥酔するな」「猫にとってマタタビには陶酔効果があります」などの文中で使われている陶酔は、「気持ちよく酔うこと」の意味で使われています。
一方、「美しい音楽に陶酔する」「自己陶酔する人には共通する特徴があります」「勝った瞬間の高揚感や陶酔感は最高です」などの文中で使われている陶酔は、「うっとりすること」の意味で使われています。
陶酔とは、もともと酒を飲んで心地よくなることを表しました。その意味がだんだんと広範囲に使われるようになり、お酒を飲んだようにうっとりとしてその気分に浸ること、うっとりするほど心を奪われることの意味を持つようになりました。
陶酔の語源
陶酔という言葉の語源は、構成する漢字にあります。陶酔の「陶」は、うち解けて楽しむことやうっとりすること、「酔」は酒に酔うことや心を奪われることを表します。この「陶」と「酔」が組み合わさり、「うっとりとして良い気持ちになる」という意味になります。
「自己陶酔」の意味
陶酔を用いた日本語には「自己陶酔」があります。自己陶酔とは、自分自身に酔いしれることであり、自惚れて気持ちよくなっている様子を表します。
陶酔の対義語
陶酔の対義語・反対語としては、正体をなくすほどひどく酔うことを意味する「泥酔」、ひどく酒に酔うことを意味する「酩酊」、酒に酔って気分が悪くなることを意味する「悪酔い」、迷いからさめ過ちに気づくことを意味する「覚醒」などがあります。
陶酔の類語
陶酔の類語・類義語としては、酒に酔ってよい気持ちになるさまを意味する「陶然」、夢のようなうっとりとした気持ちを意味する「夢見心地」、心地よくうっとりとした気持ちにさせることを意味する「甘美」、すっかり心を奪われてうっとりするさまを意味する「惚れ惚れ」などがあります。
恍惚の意味
恍惚とは
恍惚とは、物事に心を奪われてうっとりするさまを意味しています。
その他にも、「意識がはっきりしないさま」「老人の病的に頭がぼんやりしているさま」の意味も持っています。
表現方法は「恍惚とした表情」「恍惚とした目」「恍惚とする」
「恍惚とした表情」「恍惚とした目」「恍惚とする」などが、恍惚を使った一般的な言い回しです。
恍惚の使い方
「恍惚とした表情でデザートを味わう」「心に訴えるブルースに恍惚として聴き入った」「ペットに恍惚とした目を向ける」などの文中で使われている恍惚は、「心を奪われてうっとりするさま」の意味で使われています。
一方、「眠気に襲われて次第に恍惚となる」の文中で使われている恍惚は「意識がはっきりしないさま」の意味で、「お年寄りが恍惚と徘徊している」「ぼけが進行すると恍惚感を覚えます」などの文中で使われている恍惚は「老人の病的に頭がぼんやりしているさま」の意味で使われています。
恍惚とは、上記の例文にあるように複数の意味がありますが、本来は満足してうっとりしているさまや、意識がはっきりしないさまを意味する言葉でした。恍惚の「恍」はうっとりする様子やぼんやり様子を表し、「惚」は心がぼうっとするさまを表す漢字です。
さらに恍惚という言葉は「老人の病的に頭がぼんやりしているさま」も意味しますが、これは1972年に発表された長編小説「恍惚の人」に由来するものです。この小説は認知症と老人介護の問題をテーマとしたもので、認知症の人の状態を「恍惚」と婉曲に表現しました。
恍惚の対義語
恍惚の対義語・反対語としては、それまでの楽しい気分や興味が薄れることを意味する「興ざめ」、興がさめて気まずい雰囲気になることを意味する「しらける」、他に気を取られていたのが本心に返ることを意味する「我に返る」などがあります。
恍惚の類語
恍惚の類語・類義語としては、快感が最高潮に達して無我夢中の状態になることを意味する「エクスタシー」、頭の働きや知覚が鈍くなることを意味する「呆け」、年をとって頭脳や身体の働きが衰えることを意味する「もうろく」、意識が通常とは異なった状態を意味する「トランス」などがあります。
陶酔の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ほろよい加減でうっとりすること、うっとりするほど心を奪われることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「陶酔感」とは、心地よく酔っている感覚を意味します。また、文脈によっては、快楽の境地に浸っている気分を意味することもある言葉です。
例文5の文中にある「陶酔」と「心酔」の違いは、陶酔は「自己陶酔」のように自分に対して使うことができますが、心酔は自分ではない他の物事に対して使う点にあります。
恍惚の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事に心を奪われ惚けてしまうこと、意識がはっきりしない様子、老人の病的に頭がぼんやりしている様子を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3の文中にある恍惚は、物事に心を奪われ惚けてしまうことの意味で用いられています。例文4の恍惚は意識がはっきりしない様子、例文5の恍惚は老人の病的に頭がぼんやりしている様子を表しています。
陶酔と恍惚という言葉は、どちらも「うっとりとするさま」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、うっとりと気持ちよくなっている様子を表現したい時は「陶酔」を、うっとりする様子や意識がはっきりしない様子を表現したい時は「恍惚」を使うようにしましょう。