似た意味を持つ「総花的」(読み方:そうばなてき)と「重点的」(読み方:じゅうてんてき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「総花的」と「重点的」という言葉は、どちらも「物事の取り組み方」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
総花的と重点的の違い
総花的と重点的の意味の違い
総花的と重点的の違いを分かりやすく言うと、総花的とはまんべんなく取り組むことを表し、重点的とは大事な部分に集中して取り組むことという違いです。
総花的と重点的の使い方の違い
一つ目の総花的を使った分かりやすい例としては、「総花的な政策では何も成し得ないだろう」「総花的経営では会社は成長できません」「総花的な計画ではなく重点的な計画に転換する」「施策が総花的になっている」などがあります。
二つ目の重点的を使った分かりやすい例としては、「環境問題に重点的に取り組むべきです」「英語のリスニングに重点的に取り組む」「重症化リスクの患者の健康観察を重点的に行う」「関東地方整備局は重点的安全対策をまとめました」などがあります。
総花的と重点的の使い分け方
総花的と重点的という言葉は、どちらも物事に対する取り組み方を表し、似たような表現をしますが、意味や使い方には違いがあります。
総花的とは、すべての関係者にまんべんなく恩恵やメリットを与えることを意味します。平等に与えるという良い意味ではなく、人気取りのための八方美人的な方法、メリハリがなく効果が薄い方法、といったネガティブな意味合いで使われる言葉です。
重点的とは、複数ある物事の中から大切だと思う部分を取り上げて、それに集中する様子を意味します。上記の例文の「重点的に健康観察を行う」とは、多くの患者の中でも、重症化リスクをもつ患者に対して特に健康観察を実施することを表しています。
つまり、総花的はまんべんなく扱うことを表すことに対し、重点的とは大事な部分を取り上げて扱うことを表します。二つの言葉は物事に対する取り組み方において、相反する関係にある言葉だと言えるでしょう。
総花的と重点的の英語表記の違い
総花的を英語にすると「all around」「across the board」となり、例えば上記の「総花的な政策」を英語にすると「all around policy」となります。
一方、重点的を英語にすると「prioritized」「focused」「concentrated」となり、例えば上記の「問題に重点的に取り組む」を英語にすると「focus on issues」となります。
総花的の意味
総花的とは
総花的とは、関係する人すべてにとって得を与えるさまを意味しています。
総花的の読み方
総花的の読み方は「そうばなてき」です。誤って「そうかてき」と読まれることがあるので、注意しましょう。
総花的の使い方
総花的を使った分かりやすい例としては、「特色がない総花的な政策ばかりだ」「情報が総花的に掲載されている」「事業計画が総花的になっている」「従来のような総花的なビジネスモデルでは業績は改善しないだろう」などがあります。
その他にも、「配分が総花的すぎるのでメリハリをつけた方がいい」「総花的な総合計画になっている」「総花的な予算の使い方をして良いのだろうか」「総花的な英語のカリキュラムでは効果がないだろう」などがあります。
総花的の「総花」は、もともと遊女屋などで客が使用人など全員に出す祝儀を指しました。転じて、全ての関係者をまんべんなく立ててやることの意味で使われている言葉です。性質や状態を表す「的」と結び付き、総花的とは、関係者全員に花を持たせるようなやり方の意味合いで用いられています。
総花的という言葉は、もっぱら批判的な文に用いられ、ネガティブな意味で使われることが多い言葉です。例えば「総花的な政策」とは、全国民に良い顔をするような政策であり、メリハリがなく効果が得られないような政策や、人気取りのための政策といった批判的な意味が込められています。
総花的の対義語
総花的の対義語・反対語としては、特に一方に心をかたむけ公平でないことを意味する「依怙贔屓」(読み方:えこひいいき)、物事の強弱などをはっきりさせることを意味する「めりはり」などがあります。
総花的の類語
総花的の類語・類義語としては、広い範囲または狙いを付けた多数に配ることを意味する「散蒔き」(読み方:ばらまき)、物事が幅広い範囲や分野などにわたっている様子を意味する「網羅的」、手にふれるもの行き当たるものすべてを意味する「片っ端から」などがあります。
重点的の意味
重点的とは
重点的とは、最も重要だと思うところに力を集中するさまを意味しています。
表現方法は「重点的に取り組む」「重点的にやる」「重点的に考える」
「重点的に取り組む」「重点的にやる」「重点的に考える」などが、重点的を使った一般的な言い回しです。
重点的の使い方
重点的を使った分かりやすい例としては、「介護保険制度の見直しを重点的に議論する」「物件のセキュリティを重点的に見る」「重点的フォローアップ対象団体に指定されました」「患者は重点的に健康観察を行う対象者に該当する」などがあります。
その他にも、「速度取締りを重点的に実施する」「重点的に取り組むべき課題は何ですか」「はじめに地図帳の使い方を重点的に学習します」「英語教育を重点的に行うカリキュラムになっています」などがあります。
重点的の「重点」は物事のいちばん大切なところ、最も力を注ぐ部分を表します。そのような性質をもったものを表す「的」と結び付き、重点的とは、力やリソースを分散させず大切だと認める所に集中するさまを意味する言葉です。
重点的という言葉は、ビジネスシーンや教育の現場でよく用いられている言葉です。例えば「重点的に学習する」とは、学習の範囲が広い場合に、ある重要な事柄を特に取り上げて学ぶことを表します。
「重点的に置く」は誤り
重点的を用いた誤った表現には「重点的に置く」があります。正しくは「重点を置く」であり、ある点や事柄を最も大切にして注意すべきものと見なすことを意味します。
重点的の対義語
重点的の対義語・反対語としては、物事がばらばらに分かれ散ることを意味する「分散」、あちこちに散って離ればなれになるさまを意味する「散り散りばらばら」などがあります。
重点的の類語
重点的の類語・類義語としては、わき目もふらず心を一つのことだけに注ぐことを意味する「一意専心」、1か所に目標を定めそこだけを攻撃することを意味する「集中攻撃」、人や物事のなかで中心を占めるさまを意味する「中心的」などがあります。
総花的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、すべての関係者に得や恩恵を与えるような方法を表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「総花的経営」とは、従業員や顧客あるいは株主のみんなに良い顔をしようとして、目的が定まらなくなり決断力を失っているような経営を表しています。
重点的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、特に重要な点だけに力を集中するさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「重点的に取り組む」とは、全体の中から特定の部分を重要視して、それに集中して事に当たることを意味します。
総花的と重点的という言葉は、どちらも「物事に対する取り組み方」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、まんべんなく取り組むことを表現したい時は「総花的」を、大事なことに集中して取り組むことを表現したい時は「重点的」を使うようにしましょう。