似た意味を持つ「約款」(読み方:やっかん)と「定款」(読み方:ていかん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「約款」と「定款」という言葉は、どちらも「定められた規則」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
約款と定款の違い
約款と定款の意味の違い
約款と定款の違いを分かりやすく言うと、約款とは会社と利用者の間で定めた契約条項、定款とは会社のあり方を定めた根本規則という違いです。
約款と定款の使い方の違い
一つ目の約款を使った分かりやすい例としては、「感染症に関する保険約款の適用について問い合わせる」「Web上でデジタル約款をご確認いただけます」「IP通信網サービス契約約款を改訂しました」などがあります。
二つ目の定款を使った分かりやすい例としては、「定款変更のために株主総会を開く」「定款の一部変更に関するお知らせです」「会社設立時に定款を作成します」「定款謄本の申請には会社の実印が必要になります」などがあります。
約款と定款の使い分け方
約款と定款という言葉は、どちらも決まりや規則を表し、主にビジネスシーンで使われている言葉ですが、意味や使い方には違いがあります。
約款とは、契約のなかの個々の条項や条約の条項を意味します。また、運送約款や保険約款など、不特定多数の利用者との契約を処理するために、前もって定型的に定められた契約条項を意味し、一般的にはこの意味で使われている言葉です。
定款とは、会社や社団法人などの組織のあり方を定める根本規則を意味します。また、これを記載した書面のことを指す言葉です。定款には、法人の目的・名称・社員・資産に関する事項など組織に関する基本事項を記載することが必要になります。
つまり、約款とは会社と利用者の間で定める契約条項であることに対し、定款とは会社のあり方を定めた基本規則なのです。
約款と定款の英語表記の違い
約款を英語にすると「conditions」「stipulation」「article」となり、例えば上記の「保険約款」を英語にすると「insurance conditions」となります。
一方、定款を英語にすると「company contract」「articles of incorporation」となり、例えば上記の「定款変更」を英語にすると「amendment of the articles of incorporation」となります。
約款の意味
約款とは
約款とは、条約や契約などに定められている個々の条項を意味しています。
その他にも、「保険や運送など不特定多数の利用者との契約を処理するため、あらかじめ定型的に定められた契約条項」の意味も持っています。
約款の読み方
約款の読み方は「やっかん」です。誤って「やくかん」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「約款に同意」「約款に基づく契約」「約款による外部サービス」
「約款に同意」「約款に基づく契約」「約款による外部サービス」などが、約款を使った一般的な言い回しです。
約款の使い方
「条約の約款に違反する行為だ」「契約書に書かれている約款を確認する」「基本契約書と裏面約款の内容が矛盾している」などの文中で使われている約款は、「契約などに定められている個々の条項」の意味で使われています。
一方、「運送約款は運送契約の内容を定めたものです」「民法改正により定型約款が新設されました」「外国人観光客のために宿泊約款を英語で併記しています」などの文中で使われている約款は、「あらかじめ定型的に定められた契約条項」の意味で使われています。
約款の「約」は取り決めを表し、「款」は一つ一つの項目を表す漢字です。約款とは、契約や条約のなかの個々の条項を原義とする言葉ですが、一般的に、定型的な内容があらかじめ定められている契約の条項の意味で使われている言葉です。運送約款や保険約款などがこれに当たります。
「定型約款」の意味
上記の例文にある「定型約款」とは、大量の契約を画一的定型的に締結し、迅速に処理することを目的として企業があらかじめ定めておく契約条項のことです。「普通取引約款」「普通契約条款」とも呼ばれています。
「免責約款」の意味
約款を用いた日本語には「免責約款」があります。免責約款とは、契約の債務者が負うべき責任を免除または制限することを定めた約款のことです。例えば、保険契約では、保険者が免責される危険や事由について約款で定めています。
約款の類語
約款の類語・類義語としては、 法令の条文として定めることや法令の個々の条文を意味する「規定」、箇条や条項を意味する「条款」、きまりや規則を意味する「ルール」、契約や法律などの箇条を意味する「アーティクル」などがあります。
定款の意味
定款とは
定款とは、公益法人・会社・協同組合などの社団法人の目的・組織・活動などに関する根本規則を意味しています。
定款の読み方
定款の読み方は「ていかん」です。誤って「じょうかん」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「定款がない」「定款を作る」「定款を変更する」
「定款がない」「定款を作る」「定款を変更する」などが、定款を使った一般的な言い回しです。
定款の使い方
定款を使った分かりやすい例としては、「定款には事業目的が記載されています」「定款認証は合同会社では不要です」「定款の雛型をダウンロードする」「株式会社の定款認証費用が安くなりました」などがあります。
その他にも、「定款変更には株主総会の特別決議が必要です」「定款を英語に翻訳してもらえますか」「定款の写しを原本証明とセットにして提出する」「この定款変更であれば法務局への登記申請は不要です」などがあります。
定款とは、会社などの組織のあり方を定めた根本ルールのことです。事業内容や名称などの基本的な事柄は定款に定めるよう法律によって定められており、これを定めない限り法人とは認められません。会社の憲法とも言われています。
「定款変更」の意味
定款を用いた日本語には「定款変更」があります。定款変更とは、定款に記載されている事項に何らかの変更を加えることです。定款変更を行う場合には、株主総会において特別決議をもって承認を得る必要があります。
定款の類語
定款の類語・類義語としては、団体内で協議して決めた規則を意味する「規約」、一定の目的のために定められた一連の条項の称を意味する「規定」、集団や機構の秩序を維持する決まりを意味する「規律」などがあります。
約款の例文
この言葉がよく使われる場面としては、契約のなかの個々の条項、契約の迅速安全を期する目的であらかじめ定型的に定められた契約条項を表現したい時などが挙げられます。
例文4にある約款と契約書の違いは、約款は事業者が多くの人と契約するために作った定型的な契約条項であることに対し、契約書は個別交渉で内容を自由に決めらる点にあります。
定款の例文
この言葉がよく使われる場面としては、会社の組織や活動を定めた根本規則、これを記載した書面や電磁的記録を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある定款閲覧について、定款は本店所在地および支店に備え置くことが義務付けられています。株主及び債権者は定款閲覧の権利を持っています。
約款と定款という言葉は、どちらも「定められている規則」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、会社と利用者の間で定める契約条項を表現したい時は「約款」を、会社の活動を定めた根本規則を表現したい時は「定款」を使うようにしましょう。