似た意味を持つ「ことなかれ主義」(読み方:ことなかれしゅぎ)と「事大主義」(読み方:じだいしゅぎ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「ことなかれ主義」と「事大主義」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
「ことなかれ主義」と「事大主義」の違い
「ことなかれ主義」と「事大主義」の意味の違い
「ことなかれ主義」と「事大主義」の違いを分かりやすく言うと、「ことなかれ主義」とはいざこざがなく平穏無事に済みさえすればよいとする消極的な態度や考え方のこと、「事大主義」とは自分の信念を持たずに支配的な勢力や風潮に迎合して自己保身を図ろうとする考え方のことという違いです。
「ことなかれ主義」と「事大主義」の使い方の違い
一つ目の「ことなかれ主義」を使った分かりやすい例としては、「現場が混乱しているのはことなかれ主義の上司のせいだろう」「私たちが離婚した原因は夫のことなかれ主義です」「彼女は常にことなかれ主義です」などがあります。
二つ目の「事大主義」を使った分かりやすい例としては、「事大主義に徹している人は出世しないと思っています」「私の上司は事大主義で社長の顔色ばかりうかがっている」「私は彼のような事大主義者は好きになれません」などがあります。
「ことなかれ主義」と「事大主義」の使い分け方
「ことなかれ主義」と「事大主義」は似た日本語ですが、意味は異なっている言葉なので間違えないように注意しましょう。
「ことなかれ主義」とは、いざこざがなく平穏無事に済みさえすればよいとする消極的な態度や考え方のことを意味しており、「事大主義」とは自分の信念を持たずに支配的な勢力や風潮に迎合して自己保身を図ろうとする態度や考え方のことを意味しています。
「ことなかれ主義」と「事大主義」の英語表記の違い
「ことなかれ主義」を英語にすると「avoid trouble」となり、例えば上記の「彼女は常にことなかれ主義です」を英語にすると「She always avoids trouble at any cost」となります。
一方、「事大主義」を英語にすると「submission to power」「toadyism」「flunkey」となり、例えば上記の「私は彼のような事大主義者は好きになれません」を英語にすると「I just don’t like a flunkey like him」となります。
「ことなかれ主義」の意味
「ことなかれ主義」とは
「ことなかれ主義」とは、いざこざがなく平穏無事に済みさえすればよいとする消極的な態度や考え方のことを意味しています。
「ことなかれ主義」の漢字表記
「ことなかれ主義」を漢字にすると、「事勿れ主義」と表記することができますが、あまり一般的ではありません。もし漢字表記したいのであれば、「事なかれ主義」の方を使うようにしましょう。
「ことなかれ主義」の使い方
「ことなかれ主義」を使った分かりやすい例としては、「ことなかれ主義の上司は頼りになりません」「彼女はことなかれ主義なので面倒事には首を突っ込まないようにしている」「事なかれ主義は反感を買いやすい一面もあります」などがあります。
「ことなかれ主義」は何事もなく無事に済むようにのことを意味する「ことなかれ」に、 持ちつづけている考えや方針のことを意味する「主義」が合わさり、いざこざがなく平穏無事に済みさえすればよいとする消極的な態度や考え方のことを意味する言葉です。
問題を平和的に解決するという意味の言葉ではなく、面倒なことには関わらず穏便でいたいというニュアンスで使います。そのため、向上心や責任感に欠けるというニュアンスを含んでおり、必ずしも悪いわけではないのですが、マイナスなイメージを伴っていること多いです。
「ことなかれ主義」は日常生活とビジネスシーンどちらでも使うことができる言葉ですが、上記にも書いたように基本的にマイナスなイメージを伴っているため、他人に使用する際は十分に注意するようにしましょう。
「ことなかれ主義」の類語
「ことなかれ主義」の類語・類義語としては、考え方や行動などに保守の傾向があることを意味する「保守的」があります。
「事大主義」の意味
「事大主義」とは
「事大主義」とは、自分の信念を持たずに支配的な勢力や風潮に迎合して自己保身を図ろうとする態度や考え方のことを意味しています。
「事大主義」を「時代主義」と表記するのは誤用
「事大主義」を「時代主義」と表記するのは誤用なので、間違えないように注意しましょう。
「事大主義」の使い方
「事大主義」を使った分かりやすい例としては、「近年は事大主義の人が増えてきたと感じる」「同僚が事大主義ばかりで仕事がやりにくいです」「この会社でやっていくには事大主義に徹する必要があるのかもしれない」などがあります。
「事大主義」は、力の弱い者が力の強い者に上手く仕えることを意味する「事大」に、持ちつづけている考えや方針のことを意味する「主義」が合わさり、自分の信念を持たずに支配的な勢力や風潮に迎合して自己保身を図ろうとする態度や考え方のことの意味で使われている言葉です。
元々は、大国に隣接する小国の運営方針などに用いられ、小国の外交政策など比較的プラスのイメージで使われている言葉でした。しかし、時代が経つにつれてだんたんと意味が変化していき、弱い者は強い者にすりよって保身をするというマイナスなイメージで使われるようになったのです。
「事大主義」の語源
「事大主義」の語源は孟子の言った言葉である「以小事大」です。「以小事大」とは、大を以て小に事うる者は天下を保んじ、小を以て大に事うる者は其の国を保んずのことを意味しています。つまり簡単に言うならば、小国が礼をもって大国に事仕えることです。
「事大主義」の類語
「事大主義」の類語・類義語としては、周囲の情勢をうかがって自分の利益になる方をとることを意味する「日和見主義」、その場の都合や成り行きでどのようにでも態度を変えることを意味する「ご都合主義」などがあります。
「ことなかれ主義」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、いざこざがなく平穏無事に済みさえすればよいとする消極的な態度や考え方のことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「ことなかれ主義」はマイナスなイメージで使われることが多い言葉です。
「事大主義」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分の信念を持たずに支配的な勢力や風潮に迎合して自己保身を図ろうとする態度や考え方のことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「事大主義」はマイナスなイメージで使われることが多い言葉です。
「ことなかれ主義」と「事大主義」は似た日本語ですが意味は異なっています。
どちらの言葉を使うか迷った場合、いざこざがなく平穏無事に済みさえすればよいとする消極的な考え方のことを表現したい時は「ことなかれ主義」を、自分の信念を持たずに支配的な勢力や風潮に迎合して自己保身を図ろうとする考え方のことを表現したい時は「事大主義」を使うと覚えておきましょう。