似たニュアンスを持つ「貧すれば鈍する」(読み方:ひんすればどんする)と「衣食足りて礼節を知る」(読み方:いしょくたりてれいせつをしる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「貧すれば鈍する」と「衣食足りて礼節を知る」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
「貧すれば鈍する」と「衣食足りて礼節を知る」の違い
「貧すれば鈍する」と「衣食足りて礼節を知る」の意味の違い
「貧すれば鈍する」と「衣食足りて礼節を知る」の違いを分かりやすく言うと、「貧すれば鈍する」とは貧乏すると生活の苦しさのために精神の働きまで愚鈍になること、「衣食足りて礼節を知る」とは人は物質的に不自由がなくなって初めて礼儀に心を向ける余裕ができてくることという違いです。
「貧すれば鈍する」と「衣食足りて礼節を知る」の使い方の違い
一つ目の「貧すれば鈍する」を使った分かりやすい例としては、「貧すれば鈍するというように彼は性格が変わってしまいました」「息子がニートになってから怒りやすくなり貧すれば鈍するを痛感しました」などがあります。
二つ目の「衣食足りて礼節を知る」を使った分かりやすい例としては、「衣食足りて礼節を知るとはこのことかと実感する」「衣食足りて礼節を知るようになるにはある程度の余裕も必要だと思っています」などがあります。
「貧すれば鈍する」と「衣食足りて礼節を知る」の使い分け方
「貧すれば鈍する」と「衣食足りて礼節を知る」は意味が異なることわざですが、生活が安定することによって心のゆとりが生まれるという根本的なニュアンスは一緒の言葉です。
「貧すれば鈍する」は貧乏すると生活の苦しさのために精神の働きまで愚鈍になることを意味しており、物質的な貧しさが心の貧しさを生むというニュアンスで使います。
一方、「衣食足りて礼節を知る」は人は物質的に不自由がなくなって初めて礼儀に心を向ける余裕ができてくることを意味しており、物質的に豊かになると他人に礼儀正しくできるというニュアンスになる言葉です。
ただし、この言葉は裏を返せば物質的に不自由であれば、他人に礼儀正しくはできないという意味になります。つまり、根本的な部分は「貧すれば鈍する」と同じと言えるでしょう。
「貧すれば鈍する」と「衣食足りて礼節を知る」の英語表記の違い
「貧すれば鈍する」を英語にすると「poverty dulls the wit」「poverty affects one’s thought process」「poverty affects one’s mindset」となります。
一方、「衣食足りて礼節を知る」を英語にすると「the poor can’t afford manners」「only when basic needs for living are met can people spare the effort to be polite」となります。
「貧すれば鈍する」の意味
「貧すれば鈍する」とは
「貧すれば鈍する」とは、貧乏すると生活の苦しさのために精神の働きまで愚鈍になることを意味しています。
「貧すれば鈍する」の使い方
「貧すれば鈍する」を使った分かりやすい例としては、「貧すれば鈍するという言葉があるので貧乏になると人は変わってしまう」「収入が減ってから酒を飲む量が増えたので貧すれば鈍すると言えるだろう」「会社をクビなってから性格が変わってしまい貧すれば鈍するを痛感した」などがあります。
「貧すれば鈍する」は貧乏すると生活の苦しさのために精神の働きまで愚鈍になることを意味することわざです。ことわざとは、古くから言い伝えられてきた教訓または風刺の意味を含んだ短い言葉のことを意味しています。
つまり、「貧すれば鈍する」は生活が貧しくなると、人の能力に悪影響を与えるというニュアンスで使う言葉です。
ただし、貧しいことが悪であるとか、貧乏を否定する考え方を示すものではないので注意しましょう。あくまでも、物資的に貧しいと心の貧しさを生むということを言語化したものです。
「貧すれば鈍する」はビジネスシーンでも使うことができる言葉になります。会社の業績の悪化が原因となって不正を起こしたり、経済悪化による社会現象によって何か事件を起こしてしまったりなどです。
分かりやすい例を挙げると、「業績悪化に苦しんだ企業は違法取引を行なった。まさに貧すれば鈍するだろう」があります。
「貧すれば鈍する」の対義語
「貧すれば鈍する」の対義語・反対語としては、事態が行き詰まって困りきるとかえって思いがけない活路が開けてくるものであることを意味する「窮すれば通ず」があります。
「貧すれば鈍する」の類語
「貧すれば鈍する」の類語・類義語としては、人間もあまり貧乏をすると頭の回転が悪くなってくるから注意しなければならないことを意味する「馬痩せて毛長し」、貧乏をしていると知恵の働きも鈍くなることを意味する「人貧しければ智短し」などがあります。
「衣食足りて礼節を知る」の意味
「衣食足りて礼節を知る」とは
「衣食足りて礼節を知る」とは、人は物質的に不自由がなくなって初めて礼儀に心を向ける余裕ができてくることを意味しています。
「衣食足りて礼節を知る」の使い方
「衣食足りて礼節を知る」を使った分かりやすい例としては、「生活にゆとりがある人が他人に優しくできるのは衣食足りて礼節を知るからだろう」「衣食足りて礼節を知るというように彼は昇進してから礼儀正しくなりました」などがあります。
「衣食足りて礼節を知る」は人は物質的に不自由がなくなって初めて礼儀に心を向ける余裕ができてくることを意味することわざです。つまり、生活が豊かであれば他人に優しくできるというニュアンスになります。
そのため、「衣食足りて礼節を知る」はプラスのイメージで使う言葉です。
ただし、「衣食足りて礼節を知る」は裏を返すと、物質的に不自由であれば他人に優しくすることはできないということを表現していると言えるでしょう。
「衣食足りて礼節を知る」の由来
「衣食足りて礼節を知る」の由来は、中国の書物『管子』です。その中に、「倉廩実つれば即ち栄辱を知り、衣食足りれば即ち栄辱を知る」という一文があり、日本語に訳すと生活が楽になれば自然に道徳心も生じるので、名誉を重んじて恥を知るようになるとなります。
これが転じて、人は物質的に不自由がなくなって初めて礼儀に心を向ける余裕ができてくることを「衣食足りて礼節を知る」と言うようになりました。
「衣食足りて礼節を知る」の類語
「衣食足りて礼節を知る」の類語・類義語としては、食べることさえままならない状況では悲しい辛いなどの不満は言っていられないことを意味する「憂いも辛いも食うての上」があります。
「貧すれば鈍する」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、貧乏すると生活の苦しさのために精神の働きまで愚鈍になることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「貧すれば鈍する」はビジネスシーンでも使うことができる言葉です。
「衣食足りて礼節を知る」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人は物質的に不自由がなくなって初めて礼儀に心を向ける余裕ができてくることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「衣食足りて礼節を知る」はとても限定的な場面で使う言葉です。
「貧すれば鈍する」と「衣食足りて礼節を知る」は意味が異なる言葉ですが、裏を返せば類語になる表現です。
どちらの言葉を使うか迷った場合、貧乏すると生活の苦しさのために精神の働きまで愚鈍になることを表現したい時は「貧すれば鈍する」を、人は物質的に不自由がなくなって初めて礼儀に心を向ける余裕ができてくることを表現したい時は「衣食足りて礼節を知る」を使うと覚えておきましょう。