似た意味を持つ「転ばぬ先の杖」(読み方:ころばぬさきのつえ)と「備えあれば憂いなし」(読み方:そなえあればうれいなし)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」という言葉は、どちらも事前に準備をしておくことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」の違い
「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」の意味の違い
「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」の違いを分かりやすく言うと、「転ばぬ先の杖」とは有事が起きた時のために先手を打って行動すること、「備えあれば憂いなし」とは有事の際に素早く行動できるよう準備をしておくことという違いです。
「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」の使い方の違い
一つ目の「転ばぬ先の杖」を使った分かりやすい例としては、「降水確率は高くないが転ばぬ先の杖として傘を持っていくことしました」「転ばぬ先の杖として貯金をしておくことにしました」「転ばぬ先の杖というししっかり対策を立てることにしました」などがあります。
二つ目の「備えあれば憂いなし」を使った分かりやすい例としては、「私の座右の銘は備えあれば憂いなしです」「備えあれば憂いなしなので防災グッズを購入しておくことにしました」「備えあれば憂いなしで準備していたものが役に立って良かったです」などがあります。
「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」の使い分け方
「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」はどちらも事前に準備をしておくことを意味する言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
「転ばぬ先の杖」は有事が起きた時のために先手を打って行動するというニュアンスで使うのに対して、「備えあれば憂いなし」は有事の際に素早く行動できるよう準備をしておくというニュアンスで使うというのが違いになります。
地震で分かりやすく例えるならば、地震対策として家具の転倒防止の補強をするのが「転ばぬ先の杖」、地震に備えて食料や水を確保しておこうとするのが「備えあれば憂いなし」になります。
「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」の英語表記の違い
「転ばぬ先の杖」を英語にすると「Look before you leap」「An ounce of prevention is worth a pound of cure」となります。
一方、「備えあれば憂いなし」を英語にすると「Providing is preventing」「Forewarned is forearmed」となります。
「転ばぬ先の杖」の意味
「転ばぬ先の杖」とは
「転ばぬ先の杖」とは、前もって用心していれば失敗することがないことを意味しています。
「転ばぬ先の杖」の使い方
「転ばぬ先の杖」を使った分かりやすい例としては、「転ばぬ先の杖と言うし保険には入っていた方がいいだろう」「私の座右の銘は転ばぬ先の杖です」「転ばぬ先の杖なので不安材料は摘み取っておこう」「転ばぬ先の杖として防犯カメラを設置しておく」などがあります。
「転ばぬ先の杖」は前もって用心していれば失敗することがないことを意味することわざです。ことわざとは、古くから言い伝えられてきた教訓または風刺の意味を含んだ短い言葉のことを意味しています。
「転ばぬ先の杖」は有事が起きた時のために先手を打って行動するというニュアンスで使うのが特徴です。つまり、何かが起きる前に予め手を打っておくことが大切ということを表しています。
また、「転ばぬ先の杖」はビジネスシーンにおいても使うことができます。
「転ばぬ先の杖」の由来
「転ばぬ先の杖」の由来はその名の通り杖です。転んでしまうより先に杖をついておけば転ぶことを防ぐことができます。これが転じて、前もって用心していれば失敗することがないことを「転ばぬ先の杖」と言うようになりました。
「転ばぬ先の杖」の対義語
「転ばぬ先の杖」の対義語・反対語としては、準備を怠り事が起こってからあわてて用意をすることを意味する「泥棒を捕らえて縄を綯う」があります。
「転ばぬ先の杖」の類語
「転ばぬ先の杖」の類語・類義語としては、用心の上にも用心深く物事を行うことを意味する「石橋を叩いて渡る」、事が起こる前に予め注意しておくことを意味する「降らぬ先の傘」、用意が行き届いて手ぬかりがないことを意味する「用意周到」などがあります。
「備えあれば憂いなし」の意味
「備えあれば憂いなし」とは
「備えあれば憂いなし」とは、万一に備えてあらかじめ準備をしておけば事が起こっても少しも心配事がないことを意味しています。
「備えあれば憂いなし」は「備え有れば患いなし」とも表記可能
「備えあれば憂いなし」は「備え有れば患いなし」と表記することもできます。どちらも全く同じ意味を持つ言葉なので、好きな方を使って問題ありません。
「備えあれば憂いなし」の使い方
「備えあれば憂いなし」を使った分かりやすい例としては、「事前に用意しておいてよかったので備えあれば憂いなしだったと思います」「備えあれば憂いなしなので事前に食料を買い込んでおく」「備えあれば憂いなしというし置き薬を常備しています」などがあります。
「備えあれば憂いなし」は万一に備えてあらかじめ準備をしておけば事が起こっても少しも心配事がないことを意味することわざです。
「備えあれば憂いなし」は日常生活とビジネスシーンどちらでも使うことができます。例えば日常生活では、災害や事故などに備えるよう注意喚起としてよく使われています。
また、ビジネスシーンでは部下を戒める場合や、プレゼンなどの事前準備をしておいて良かった場合などに使われることが多いです。
「備えあれば憂いなし」の由来
「備えあれば憂いなし」の由来は中国の書物『書経』です。宰相となった傅説(読み方:ふえつ)という人物が、殷の武丁(読み方:ぶてい)に対して王の心構えとして「有備無憂」と言いました。
「有備無憂」を日本語に訳すと備えがあれば患いはございませんという意味になり、これが転じて、万一に備えてあらかじめ準備をしておけば事が起こっても少しも心配事がないことを「備えあれば憂いなし」というようになりました。
「備えあれば憂いなし」の対義語
「備えあれば憂いなし」の対義語・反対語としては、必要に迫られて慌てて準備しても間に合わないことを意味する「渇に臨みて井を穿つ」(読み方:かつにのぞみていをうがつ)があります。
「備えあれば憂いなし」の類語
「備えあれば憂いなし」の類語・類義語としては、大切なことは過ちが起きないように十分に注意した上でさらに注意した方が良いことを意味する「念には念を入れよ」、何事にも注意深く慎重にした方が良いことを意味する「浅い川も深く渡れ」などがあります。
「転ばぬ先の杖」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、前もって用心していれば失敗することがないことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「転ばぬ先の杖」は注意喚起として使われている言葉です。
「備えあれば憂いなし」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、万一に備えてあらかじめ準備をしておけば事が起こっても少しも心配事がないことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「備えあれば憂いなし」は前もって準備しておく場合に使われる言葉です。
「転ばぬ先の杖」と「備えあれば憂いなし」はどちらも事前に準備をしておくことを表します。
どちらの言葉を使うか迷った場合、有事が起きた時のために先手を打って行動することを表現したい時は「転ばぬ先の杖」を、有事の際に素早く行動できるよう準備をしておくことを表現したい時は「備えあれば憂いなし」を使うと覚えておきましょう。