似た意味を持つ「卑屈」(読み方:ひくつ)と「卑下」(読み方:ひげ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「卑屈」と「卑下」という言葉は、「自分を劣っていると軽んじること」という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
卑屈と卑下の違い
卑屈と卑下の意味の違い
卑屈と卑下の違いを分かりやすく言うと、卑下よりも卑屈の方が自分自身を劣っているとより軽んじている表現であるという違いです。
卑屈と卑下の使い方の違い
一つ目の卑屈を使った分かりやすい例としては、「久しぶりに出会った彼女は随分と卑屈な口調になった」「変に卑屈になることで他者に攻撃的になることもある」「彼の卑屈さには驚きを隠せない」などがあります。
二つ目の卑下を使った分かりやすい例としては、「常に自分自身を卑下するのは周囲の人を不快にさせることもある」「卑下することなく堂々としている姿は好感が持てた」「どうか自分を卑下なさらないでください」などがあります。
卑屈と卑下の使い分け方
卑屈と卑下はどちらも自分自身を見下すような表現として使われ、他者に対して使われることはない言葉ですが、度合いが若干異なります。
卑屈は、いじけて必要以上に自分自身を下に見ることを意味する言葉で、自分が劣っていることを拗ねている様子などに使われています。
一方の卑下も、自分を劣ったものとして下に見ることを意味する言葉ですが、自分を下げる言い方はするものの内心は他者を下げて自分が優秀であることを示す様子に対してなど否定的に使われることもあります。
つまり、卑屈は自分が劣っていると拗ねている場合に使われますが、卑下は自分が劣っていると主張しながらも自慢の意味が込められている様子に使われるため、卑下よりも卑屈の方が自分を下に見ている表現となります。
また、卑屈は形容動詞として名詞と共に使われ、卑下は「卑下する」などの形で動詞として使われるという文法的な違いもあります。
卑屈と卑下の英語表記の違い
卑屈を英語にすると「servile」「obsequious」などとなり、例えば上記の「卑屈な口調」を英語にすると「servile tone」となります。
一方、卑下を英語にすると「put oneself down」「humbly」などとなり、例えば上記の「常に自分自身を卑下する」を英語にすると「constantly put oneself down」となります。
卑屈の意味
卑屈とは
卑屈とは、必要以上に自分で自分を見下すことを意味しています。
卑屈の読み方
卑屈は「ひくつ」という読み方をしますが、「ひかが」や「いやくつ」などの別の読み方をすることはできません。
表現方法は「卑屈になる」「卑屈にならない」「卑屈な人」
「卑屈になる」「卑屈にならない」「卑屈な人」などが、卑屈を使った一般的な言い回しです。
卑屈の使い方
卑屈を使った分かりやすい例としては、「卑屈な考え方がなかなか治らないと友人が悩んでいる」「あそこまで卑屈な人には初めて会ったかもしれない」「卑屈な面もあるがこちらの言葉を聞いてくれないわけではない」などがあります。
一方、「幼馴染が卑屈すぎて呆れてしまった」「卑屈になる自分に嫌気がさす」「金銭でいくらでも人間は卑屈になれる」などの文中で使われている卑屈は、「自分を下に見て妥協や服従をするような意気地のない態度」の意味で使われています。
卑屈の卑という漢字は自分の地位を低いものとする意味を持ちますが、屈という漢字は腰を曲げた姿勢にしたまま伸びない様子を意味します。そのため、卑屈という言葉は品性のない行為をするような意気地のない様子を表します。
今日では上記例文の「卑屈な考え方」「卑屈な人」「卑屈すぎる」などのように、拗ねて自分を見下すような言動をする様子などに対して使われることがほとんどです。
卑屈の対義語
卑屈の対義語・反対語としては、得意になって示すことを意味する「誇示」、自分の才などに自信や誇りを持つことを意味する「自負」があります。
卑屈の類語
卑屈の類語・類義語としては、自分を低めることで相手を高めることを意味する「謙譲」、へりくだって相手の意見などを受け入れる様子を意味する「謙虚」、相手の力を恐れて言いなりになることを意味する「屈従」などがあります。
卑下の意味
卑下とは
卑下とは、自分を劣ったものとして下に見ることを意味しています。
その他にも、他者を見下すことや見下す様子という意味もありますが、実際に他者に対して使われることはないため、誤った使い方とも言われています。
卑下の読み方
卑下は「ひげ」という読み方をしますが、「ひか」「ひした」など他の読み方をすることはできません。
表現方法は「自分を卑下する」「卑下しないで」
「自分を卑下する」「卑下しないで」などが、卑下を使った一般的な言い回しです。
卑下の使い方
卑下を使った分かりやすい例としては、「卑下も自慢のうちとはよく言ったものだ」「自己卑下も程々にしなければ害となる」「何の取り柄もない両親だとしても卑下するのは間違っている」「そこまで自分を卑下する必要もないだろう」などがあります。
その他にも、「むやみやたらに卑下しても相手に好い印象は与えない」「謙遜も行き過ぎれば卑下となる」「卑下する暇があるのであればどのように改善していくべきかを考えるべきだ」「今では自分を卑下することはあまりなくなった」などがあります。
ことわざ「卑下も自慢のうち」の意味
上記例文の「卑下も自慢のうち」とは、卑下することを美徳として表面上では謙遜していながら人に羨ましいと思ってほしいと思って話す様子を表すことわざです。この表現によって、他者を下に見て自分を上に見ていると捉えられる可能性もあります。
卑下の対義語
卑下の対義語・反対語としては、自分が優れていると思い込んで得意になることを意味する「自惚れ」、他者を見下げるような態度を取ることを意味する「尊大」があります。
卑下の類語
卑下の類語・類義語としては、控えめな態度を取ることを意味する「謙遜」、相手を敬い、自分がへりくだることを意味する「敬譲」、慎み深くへりくだる様子を意味する「恭謙」などがあります。
卑屈の例文
この言葉がよく使われる場面としては、必要以上に自分で自分を見下すことなどが挙げられます。
例文2の「卑屈さ」や例文4の卑屈は、自分を下に見ていて意気地のない態度を表す言葉として使われています。
卑下の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分を劣ったものとして下に見ることなどが挙げられます。
例文2の「卑下自慢」とは、自分を卑下しながらも自慢することや自慢と捉えられることを意味する言葉で、「卑下も自慢のうち」ということわざと同じような意味を持ちます。
卑屈と卑下は、どちらも「自分を劣っていると軽んじること」を表します。どちらを使うか迷った場合は、「卑下」よりも「卑屈」の方が自分自身が劣っていて、より軽んじている表現であると覚えておけば間違いありません。